第103話
「よく来てくれた、グレイス嬢。
麗しいあなたに会えてうれしい」
「恐れ入ります、ヘンリー様」
やれやれ。
ウィリアム王太子の次はヘンリー様ですか。
いったい何を考えて私を呼び出したのでしょうか?
政略結婚はごめんなのですが。
「早速で悪いのだけれど、今後の事について忌憚なく話し合いたいのだ」
「今後の事でございますか?」
「そうなのだ。
私が病気の兄上に成り代わって、立太子されることは聞いているな?」
上位者になる事を意識して、言葉遣いを変えられましたね。
今までは臣籍に降りる自分と、王妃になる私と、関係を意識して二人とも微妙な言葉遣いでしたが、完全に王太子となる事を意識していますね。
「はい、お聞きしています」
「それで急にすり寄ってくる人間が多いのだけけれど、中にはグレイス嬢を正妃に迎えた方がいいという恥知らずがいるのだ」
「それは酷い話でございますね。
ヘンリー様には既に婚約者がおられますのに。
そのような恥知らずの言葉に耳を貸す必要などないと思われます。
陛下とウィリアム様の事件を考えれば、幼い頃から忠誠を示してくれていた側近以外は、御側に近づけない方がいいと思われます」
「よく言ってくれた、グレイス嬢。
貴女ならそう言ってくれると信じていた。
そうなのだ。
私にも毒を盛って、操ろうとする者がいるかもしれない。
私を毒殺して、後遺症で苦しむ兄上を擁立し続けようとするかもしれない。
幼い頃からの側近以外信じられないのだよ」
そういう事ですか。
兄上達のようなウィリアムの側近だったものは信用できないという事ですね。
当然ですね。
私でさえ、ウィリアムを傀儡にして好きな政治をしたらどうですかと兄上に進言したのです。
ヘンリー様やヘンリー様の側近が警戒するのは当然です。
それに、兄上達を無能と断じるわけではありませんが、ウィリアムが毒を盛られるような失敗をしたのはいただけません。
側近に加えて、今度はヘンリー様に毒を盛られる失敗を繰り返すかもしれません。
いえ、兄上達が毒を盛ったという可能性も考えておくべきです。
それくらいの警戒ができない者では、ヘンリー様の側近失格です。
「そうですね、今までの流れを考えますと、国王陛下とウィリアム様の側に仕えていた者は、全員領地に引きこもらせるべきですね。
陛下とウィリアム様に毒を盛られた責任を取らせて隠居させるか、領地での謹慎十年でしょうか。
ただあまり厳しいと、叛意を育て今まで以上の陰湿な方法で動く者が出てくるかもしれません。
ヘンリー様に二人の男子が誕生されたら、恩赦を出すと知らせておけばいいのではありませんか?
後絶対にやらなければいけないのは、陛下とウィリアム様に近づこうとしていた、マナーズ男爵とスカーレット嬢は絶対に王宮に近づけないことです。」
ヘンリー様と側近達が目を白黒させていますね。
私、何かおかしいことを言いましたか?
私の献策を受け入れるでしょうか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます