第85話
魔虎が、あれほど凶暴で怒り狂っていた魔虎が、子猫のように甘えて来ます。
正直我が目を疑いましたが、間違いありませんでした。
絆を結ぼうとして、強烈な拒絶にあったのはついさっきのような気がします。
これが、精霊と絆を結んだ効果なのでしょうか?
下級精霊一柱?
と絆を結ぶだけのつもりでしたが、結果として四柱?
の中級精霊と絆を結ぶ事ができました。
それが私の力を引き上げてくれたとしかありません。
「ありがとう、魔虎。
貴女の名前はタマにします。
どうかな?」
「フミャァァァァ!」
とても可愛いです!
体はとても巨大なのですが、仕草が猫と同じなのです。
ゴロゴロと甘えた声をだし、頭をすりつけてきます。
甘噛みをしてきた時には少し恐怖を感じましたが、その直後に止めてくれました。
私の恐怖感が伝わったのだと思います。
ひとしきり甘えるタマと私の姿を見て、さすがのリリアンも顔を引きつらせていましたが、それは凄い度胸だと思います。
ついさっきまで命懸けで戦ってくれていた戦闘侍女達は、いまだに武器を持って警戒しています。
絆の事を誰より理解しているはずのオーロラとコックスでさえ、武器を持つ手に力が入っています。
それが普通だと思います。
「もう心配しなくていいですよ。
タマは私の従魔となりました。
先程の精霊達の事は絶対に口にしてはいけません。
秘中の秘、切り札です。
ですがタマの事は隠しようがありませんから、タマに目を引き付けます。
タマを恐れて無駄な攻撃を控えてくれればいいのですが……」
「御嬢様。
タマを使った報復は目立ちますが、タマを連れて人前に出ている時に魔犬で報復すれば、いいアリバイになります」
リリアンが恐ろしい事を口にします。
報復、特に暗殺に関する事は、私の耳に入れないようにしていました。
今までそんな事を口にする事はなかったのです。
私がタマや精霊達と絆を結んだ事で方針を変えたのでしょうか?
その方針が私にどう影響するのか、予測もできません。
「私が直接報復をするのですか?」
「はい。
御嬢様が汚れ仕事をする家臣達を気にしておられたのは知っておりました。
ですが御嬢様の御心や御身体に御負担をかけないために、今までは黙ってやらせておりました。
ですが、四人の精霊と絆を結ばれ、タマとまで絆を結ばれました。
御嬢様の心身は格段に強くなられたと判断し、今ならば家臣にやらせるよりも、御嬢様自身が手を汚される方が、御嬢様がお楽なのではないかと考えました」
「さすがリリアンですね。
そうですね、リリアンの考えた通りです。
家臣に汚れ仕事をやらせるくらいなら、この手を汚す方が楽です。
誰を殺せばいいのですか?」
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