第84話

(まずは火精霊の力でこれ以上火事が広がらないようにするのだ)


 精霊の力を合わせて使うという話に、最初は驚き不安もありました。

 ですが親切丁寧教えてくれるようです。

 指示通りにフェルドに御願いすると、たちまち火勢が衰え、あれほど勢いよく広がっていた火事が、一定の場所から動かなくなりました。

 これだけでもいつか鎮火すると思われますが、それではとても長く時間がかかるようです。


(水精霊に池の水を細かく吹きあげてもらって、それを風精霊に運んでもらうのだ)


 フィーネとレティアに御願いすると、信じられないほど大量の水が火事の現場にまであっという間に運ばれました。

 しかも多すぎる水が一カ所にドバっとかけられ、多くの水が役に立たずに地面に落ちるのではなく、消火するために必要な適量の水が、燃えている木々にまとわりついて鎮火させるのです。

 何と便利な事でしょう!


 広大な範囲に及んでいた魔境の森林火災でしたが、焼けた木々の芯に種火が残らないくらいしっかりと消火できました。

 これなら鎮火したはずの火災が再発火することもないでしょう。

 もっとも私にこんな知識が最初からあった訳ではありません。

 火精霊のフェルドが長年蓄積した火の知識を教えてくれたのです。


(では次に身を守る術を覚えてもらおう。

 四精霊の個々の力による守りの力はある。

 それぞれの力だけで壁を作れば、その精霊の力に応じた強さの壁ができる。

 だが例えば、火精霊と水精霊の力を合わせれば、氷の壁を創り出せる)


 私は教え貰った通り試してみました。

 驚いた事に、中級に進化したフェルドは、火だけではなく氷や雪まで創り出せるようになっていました。

 その力とフィーネの力を合わせると、水や火による単独の壁よりも強力な、氷の壁が創り出せたのです。


(この氷は、攻撃にも使える。

 中級の火精霊と水精霊ならば、氷の剣や槍と炎の剣や槍を同時に多数敵に叩き付ける事ができる。

 いや、自分や大切なモノを護りながら、敵を攻撃する事もできる)


 素直に教えを聞き、真摯に練習する事で、次々と色んな技を身につける事ができました。

 中には戦いの技だけではなく、民を豊かにする技までありました。

 王都での厄介事は早く終わらせて、領民を助ける仕事がしたいと、心から思いました。


「フミャァァァァ!

 フミャァァァァ!

 フミャァァァァ!」


 いけません!

 魔虎の事をすっかり忘れてしまっていました。

 早く拘束を解いてあげないと、身体が弱ってしまいます。

 しかしなんでしょうか?

 ぜんぜん声が違っています。

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