第48話

  叔父上が約束してくださった事は、第二騎士団全員に徹底されていました。

 その御陰で安心して魔境に狩りに行くことができました。

 初日は外周部を第二騎士団が護ってくれ、弱い魔獣を一頭ずつ戦闘侍女やムク達に送り込んでくれました。

 叔父上と騎士団幹部は、結構厳しい表情と眼つきで、私達の能力を測っていました。


 当然といえば当然でしょう。

 少しでも能力を超える魔獣を中に入れてしまったら、戦闘侍女達が死傷するだけではすみません。

 私が命を失う可能性すらあるのですから。

 ですから文句は言いませんでした。

 叔父上と騎士団幹部の方々が納得してくれるまで、時間をかけて能力を披露しました。


 結局私達の能力相応の魔獣を内側に入れてくれるまで、一週間必要でした。

 でも大量の魔獣肉が手に入ったので、何の不足も文句もありません。

 ムク達魔犬の能力を引き上げ、銀狼達を魔獣化するという意味では十分でした。

 一週間経って、叔父上は第二騎士団の編成を大きく変えられました。

 リリアンも戦闘侍女隊の編成を変化させました。

 リリアンは戦闘侍女達を交代で里帰りをさせ、叔父上は第二騎士団を少数の護衛部隊と通常業務部隊に分けられました。


 叔父上が戦闘侍女達とムク達を認めてくれた事は、大きな喜びでした。

 少数精鋭の第二騎士団員が、リリアンが残した戦闘侍女達に助言を与えて護衛編成を行い、ムク達が大魔境内を縦横無尽に駆け回り、魔獣を狩る体制を創り上げてくれました。

 一週間ずっと私の側を護ってくださっていた叔父上が、ムク達の活躍を見て、わずかに表情を変えられました。


「魔獣がこれほど人の指図に従うとは思いませんでした。

 これならば安心して護衛を任せられます。

 私も騎士団を維持するための収入を確保しなければなりません。

 明日から御側を離れさせていただきます」


「謝らないでくださいませ、叔父上。

 全ては私の我儘から始まっております。

 第二騎士団は領地を護る大切な剣であり盾です。

 その維持を優先するのは当然の事です。

 どうぞ気になさらず軍務と政務に励んでくださいませ」


 叔父上が、幼い頃抱き上げてくださった時のような、満面の笑みを浮かべてくださいました。

 叔父上に喜んでいただける答えが返せたようです。

 第二騎士団を領地を護る剣と盾だと申しましたが、叔父上はシーモア公爵家を護る剣であり盾なのです。

 私は叔父上に忠誠を誓ってもらえる人間でなければならないのです。


「では、遠慮せずに軍務と政務に励ましてもらおう。

 だが少しでも不安や疑問があれば、食事の時に話してくれ。

 いや、不安や疑問がなくても、その日起こった事を話してくれればうれしい」


 叔父上が漸く、家臣ではなく叔父として話をしてくださいました!

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