第33話

 使者が戻るまで丸一日必要でしたが、無事に狩猟許可を得る事ができました。

 狩った獣の肉も毛皮も、半分を領主に納めると言う条件は、普通の条件です。

 私達は急いで森に入り、銀狼達が喰い散らかした獣の毛皮を回収しました。

 所々傷んでいて、商品価値が少し低下していますが、大小十数頭分の毛皮が有るか無いかは、領主に渡す分を考えれば大きいです。


 銀狼達が食べ残した正肉部分を、薄く切って天日干しにします。

 人間が食べるには汚れてしまっていますが、銀狼が食べる分には問題なしです。

 骨髄がたっぷり詰まった骨も、天日干しして銀狼用保存食としました。

 そんな保存食を用意しつつ、同時進行で私達用の獣を狩るのです。

 毛皮は十数頭分あるのですから、半分は領主に上納するので、少なくとも同量の肉が必要です。


 先に銀狼達が狩った獣を無かったことにして、毛皮を地に返すのなら不要です。

 ですが命の糧を頂いたのです。

 領主の貴重な財産を頂いたのです。

 私も公爵家の者です。

 他家貴族の財産を横領するなど誇りが許しません。


 人間が加わってからの狩りは、銀狼達だけの時より順調でした。

 猪や鹿は高い商品価値を保つように狩る事ができました。

 狐・狸・穴熊・貂・兎なども、毛皮や肉としての価値を損なわずに狩れました。

 銀狼達が追い人間が止めを刺したので、生薬として利用できるほどの品質です。

 特に熊胆や各種睾丸はとても価値がありました。


 しかし私達が狩り集めたのは獣だけではありませんでした。

 薬草として利用できる、草花も集めたのです。

 特に魔法薬の材料に使える貴重な草花を集めました。

 普通では人間が単独で探し出すのが難しい、地中に生える茸や、大半が地中奥深くにある根菜薬草を集める事ができました。


 薬草の特徴はリリアン、コックス、オーロラが教えてくれて、ムクとコックスの魔獣と銀狼達に臭いを覚えさせ、銀狼達と魔犬達が探し出してくれたのです。

 それを商品価値を損なわないように、人間が慎重に掘り出しました。

 一番近くの村に拠点を築き、五日間真剣に森の恵みを集め、それを半分に分けて領主の城に運びました。


 領主の男爵は大喜びでした。

 最初は銀狼達を警戒していましたが、想像していた以上の獲物の量、特に金銭的価値の高い熊胆などの生薬材料に喜びました。

 特に喜んだのは、高価な魔法薬材料の草花でした。

 魔法薬に加工する技術がなくても、原材料としても高価に販売できるのです。


 特産物の無い弱小領主には、降って湧いた儲け話です。

 上手く冒険者を集める事ができれば、引き続き利益を上げる事も可能だと考え、私達から情報を引き出そうとしました。

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