第29話
戦闘侍女達がすごく緊張しています。
当然私も緊張しています。
リリアンがいつでも私を安全に逃がせるように身構えています。
でも私は何の心配もいらないのを知っています。
ムクが自信満々のなのが分かります。
私に褒めてもらいたいのでしょう。
「ムク。
よく頑張りましたね。
でも私以外の人には分かりませんから。
ちゃんと証明してください」
「ワン」
ムクが鳴くと、四十頭ほどの銀狼が「おすわり」をします。
銀の毛並みが美しい狼達が一斉に「おすわり」する姿が愛らしいです。
戦闘侍女達も警戒しつつ目が釘付けになっています。
私の前で警戒しているリリアンだけが冷静です。
「ワン」
更にムクが鳴きます。
銀狼達が「ふせ」をします。
舌を出して「ハァハァ」する姿に「キュン」となります。
戦闘侍女達も警戒心を解き始めました。
リリアンも軽く力を抜いています。
「ワン」
銀狼達が一斉に御腹を見せて降伏姿勢をとりました。
とても愛らしくて、警戒など無用なのが一目で分かります。
戦闘侍女達も一斉に警戒を解きました。
リリアンも油断はしていませんが、安心したようです。
それでもコックスに現状報告をさせます。
「コックス。
ムクは銀狼達のボスに成ったのですか?」
「恐らくそうだと思いますが、御嬢様に確認なさった方がいいと思います。
ムクが単に力で銀狼達を従えたのか、それとも眷属として絆を結んだのか。
それによって、今後の安心感が変わります」
「御嬢様にそのような事がお分かりになるのか?
ムクと絆を結ばれたとはいえ、魔獣使いの事は御存知ないのだぞ?」
確かにリリアンの言う通りです。
私は魔魔獣使いの事に関して何も分かりません。
ですが、ムクから伝わるモノがあります。
ムクと絆を結んで初めて感じた特別な感覚です。
ムクと繋がり、命の鼓動と輝きを感じる事ができるようになりました。
今迄も多くの動物を飼ってきました。
観賞魚・小鳥・色兎・猫・番犬・狩猟犬。
彼らとは、心を通わせる事ができていたと思っていました。
主従として絆ができていたと思い込んでいました。
でも、今では全く違っていた事が分かります。
いえ、普通の感覚からいえば、十分に主従の信頼は築けていました。
ですがそれとはまったく別次元の絆がある事を、今の私は知っています。
ムクが銀狼達と、魔獣使いが魔獣と結ぶのと同じような絆を結んだことを、私はムクを通じて確かに感じたのです。
「いえ。
私には分かります。
私とムクが結んだ絆と同じモノが、ムクと銀狼達の間にも結ばれています。
もう銀狼達はムクに絶対服従です」
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