第27話
「御嬢様。
トイレだとは思いますが、もしかしたら危険を感じたのかもしれません。
馬車を止めて放してみましょう」
確かにリリアンの言う通りです。
トイレの可能性が一番高いとは思います。
しかし、万が一危険を感じ取ってくれたのでしたら、ここは通過するべきではないでしょうか?
「大丈夫ですか?
急いで通過した方がいいのではありませんか?」
「確かにその方が安全かもしれません。
ですが今ならまだ王都に引き返せます。
信頼できる貴族の領地も近いです。
ここで小休止して、護衛の者達にも交代で休息をとらせましょう」
確かにリリアンの言う通りでした。
ここからなら、三日三晩不眠不休で走れば、王都に辿り着けます。
馬を潰す覚悟なら、半日かければ遠縁の貴族領があります。
護衛の者達にもトイレ休憩させる頃合でしょう。
それにここで軽食を摂れば、予定していた休息場所を通過で済ませる事も可能になります。
「分かりました。
ここで小休止しましょう」
リリアンが小窓を開けて、馬車側を護っていた戦闘侍女に指示をだしました。
全体に号令がかけられ、護衛隊が徐々に速度を緩め、停止します。
十騎毎に役割分担して動いています。
街道の周囲を警戒する班。
私がトイレ休憩できるように、安全地帯を設ける班。
もちろん戦闘侍女達もトイレ休憩するのですが、一番は私の事です。
「ワン!
クゥ~ン、クゥ~ン、クゥ~ン」
私とリリアンの会話中は大人しくしていたムクが、また何か訴えています。
リリアンが馬車側にいる戦闘侍女にコックスを呼ぶように命じます。
急いでやってきたコックスにリリアンが命令しました。
「コックス。
ムクが何か騒いでいます。
トイレならいいのですが、何か危険を感じたのなら問題です。
ムクが何を訴えているのか確かめなさい」
「はい」
「ドリス。
コックスと一緒に非常事態に備えなさい」
「はい」
リリアンがてきぱきと指示しています。
コックスとドリス班が新たな命令を受けた事で、役割分担が変わりました。
私の休息所を設営していた班の一つが、ムクの追跡班になりました。
トイレ休憩できると思って一旦油断したせいか、時間がかかるとなって急に尿意が強くなってしまいました。
いえ、もしかしたら、ムクの尿意と同調しているのかもしれません。
それなら仕方ないですね。
でも、淑女たるもの、用意ができるまでは我慢しなければいけません。
「ウォォォォン!」
「狼だ!
狼の遠吠えだぞ!」
「設営班。
設営を中止して馬車を護れ!」
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