第25話王太子ウィリアム視点
「シーモア公爵家は、オーウェンの妹サマンサを推薦します」
思いがけない相手を推薦してきたな。
「サマンサだと?
魔力は十分だろう。
学園での成績もトップクラスだ。
しかしキャヴェンディッシュ家は、現在宮廷魔導士長の役目に就いているから宮中伯だが、本来の家格は男爵家だ。
家柄的に正妃は難しいのではないか?」
「はい。
ですからシーモア公爵家の養女とします。
殿下と婚約する時には、公爵令嬢となっています」
養女にするのか。
だが、それは色々問題があるんじゃないのか?
「だがシーモア公爵家がその手段を使ってしまうと、伯爵以上の家が全てその手段を真似るのではないか?」
「確かにその心配はございますが、事前に最低基準を設けておきます」
なるほど。
制限を設けるのか。
「どういう基準にするのだ?」
「今迄通り、実家の爵位が伯爵以上であるという事です。
宮中伯も役職中だけとは言え伯爵と同格です。
ただそれだけにした場合、後の世で恋に狂った王族が、実家を無理矢理に宮中伯の地位に就けて、恋する相手を正妃に迎えようとする恐れがございます」
色々考えてくれているのだな。
だが多くの貴族が、余の身勝手な基準だと思うのではないか?
「確かにその通りだな。
だがそれでは、サマンサありきの基準になるのではないか?」
「ですから、学園時代の魔量の潜在能力と、魔法の習熟度の最低ラインを決めておきます。
その基準に達した者は、全て殿下の婚約者候補といたします」
確かにサマンサ以外にもチャンスを与えるのなら、他の貴族の反論は防ぎやすいが、サマンサしか最低ラインに達しないのではないか?
「なるほど。
魔力の潜在能力と習熟度を、A級以上に定めておくのだな」
「はい。
更に公爵家以上が養女に迎えるくらい信頼しているという条件です」
侯爵家に資格を与えないのか。
だがそれでは他の貴族が納得しないのではないか?
「公爵家が支援して、派閥の領袖がコントロールする訳か。
実家の言いなりにならず、爵位も与えないというなら、問題はないか?
だが他の貴族がそれを認めるとは思えん。
だがそれとは別に、オーウェンはいいのか?
妹の事が心配ではないのか?
キャヴェンディッシュ宮中伯は納得しているのか?」
「父はとても光栄な事だと申しております。
魔導士団の大半も喜んでおります」
なるほど。
シーモア公爵はサマンサを候補にする事で、魔術師派閥の大半を味方につけたのか。
「だが他の貴族はこの条件を飲まないのではないか?」
「それは今後の交渉次第でございます。
問題は殿下がこの案を受けてくださるかどうかです」
ディランは本気だな。
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