◆コラム#4 音楽プレイヤーはiPod派


 5話ごとに挟む音楽コラムが書けずにずるずるした結果、まさかのエッセイがエタリかけるという次第になって非常に驚きました。かつて続けていた5日に1回という更新頻度は「あら、そんな昔のこと覚えていなくてよ」という一周回って可愛い高慢ちきった言葉と共に見栄っ張りの彼方に消える可能性はありますが、まだまだ書く気はまんまんなので安心下さい。書こうとすると気持ちが逸れるだけなのです。


 そうしてキーボードに向かってぼーっとしていたら、目の前に5年前にヤフオクで買ったiPod Classicがちょこんと寝ておりました。その愛らしい姿を見ていたらコラムが浮かんできたのですね。可愛いは正義。


 彼女は第6世代と言われ、iPod Classicの最後の世代(2008年)にあたります。これ以降、iPod TouchまたiPhoneに役割を取られ、華やかなりんごの舞台から去ることになるんですね。時間のながれは残酷です。

 とはいえ、僕が彼女を求めたのは5年前。この頃はもうiPhoneも発売して久しいですし、多機能なものも多くありました。では、どうして僕はわざわざClassicを求めたのでしょうか。


 それは彼女の懐の大きさに感服したからなんですよ。お金がなかったので、1万円も出せなかったんですよね。それでいて懐の大きさは100GBを越えて欲しかった。当時は最新型iPod touchの128GBモデルがあったとはいえ、今でも2万円を超える価格。当然、手は出ません。

 というか、僕は音楽が聴ければそれでいいのだ。お触りできなくても、耳元でささやいてくれなくても別にいいのです。そんな沢山のテクニックはいらない。ホイールをくるくると回したら「あれぇー」と言いながら僕の情欲を掻き立てるようなものを提示してくれるだけで良かった。それだけで僕は満たされたのです。(文学的表現で修飾しているだけです。誤解なきように)


 ということで、5~6千円程度で手に入れた120GBの彼女とはいつも一緒でした。彼女は僕がお願いすれば何でも受け入れてくれました。一度に十枚まとめてお願いすることもありましたが、すんなりとその身で包んでくれました。くるくると指でなぞると少しくすぐったそうにカタカタと震えるところも、気持ちが落ち込んでいるときに大好きな曲で励ましてくれたりするところも、たまにびっくりして固まってしまうところも全てが愛らしかったです。


 そんな姿を見てきて、彼女と会えてよかったと本当に思います。彼女もまだあと30%くらいは大丈夫と言ってくれているので安心ですね。今でもAUXケーブルで車に繋いで活躍してくれていますので、これからも元気に頑張ってくれることを祈っています。


 ○


 ちなみに、中学時代はウォークマンスティックという愛称の系統が異なる子が彼女でした。香水瓶のようなスタイリッシュな形がお気に入りでしたが、いつぞやの時から彼女が僕の多大なる要求に耐えられなくなり別れを迎えました。最初はあんなに仲が良かったのに、月日と共に要求は増えていくばかりで整理も出来ないとは、人間は罪深いものですね。あれが原因で懐の深さを重視していったと考えると、反省の色が感じられません。罪深いですね。


 さらに現在はクラシっ子がいながら、スポティなんて欧米チックな女の子に浮気がちなのは口が裂けてもいえません。いや、だって、懐はともかく彼女いろんな最新のトレンドに敏感で飽きないんだもの。クラシっ子は僕のことをよく理解してくれて安心感と安定感はばつぐんなのですが、刺激が欲しくなる時もあるんです。そう、一時的な刺激を求めているだけだからね。安心してね。クラシっ子。

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