1章 始まりの決意
「う、う~ん…。」
「おはようございます、テラさん。」
「あれ?私寝ちゃってた?」
「そう…ですね。」
「ん?なにかあったの?」
「い、いや!なにも!」
「へぇ。」
「そ、それより村長が来ましたよ。僕の事話したでしょ。」
「あ、ああ。そうだね。」
「まあ、それより村長からこの付近にはびこるスライムの親玉を倒してほしいと来ました。」
「スライムって昨日の…。」
「は、はい。スライムは主に幼い女性をさらいます。昨日はテラさんがさらわれそうになっていましたけどね。」
「はは…。」
「なので護衛として僕がテラさんを護ります。スライムは男性には異常なまでの嫌悪感を示します。うまく僕がテラさんからスライムを追い払えば…。」
「え?私、戦う力なんて…。」
「その点は大丈夫です。一度この付近の王国へ行きましょう。そこで王様と謁見します。その手配は村長がしてくれたらしいです。」
「うん、そうだね。頼りにしてるよ、イル君。」
「…!はい!頑張ります!」
村を出て王国へと向かった。
「この森はすごいね。」
「森を抜けて草原を進めば王国につきます。…!離れてください!」
その時、一本道の両脇から大量のスライムが出てきた。
「あっちに行け!…なんで?!」
昨日のようにイルマが木の棒を振り回しても一向にスライムは退かなかった。
「えっ!うわぁ!助けて、イル君!」
「テラさん!」
イルマが振り返った時にはエクステラはスライムに覆われ、そのまま森の奥へ連れ去られてしまった。
~イルマサイド~
俺はいたずらが大好きだった。誰かが俺に注目してくれることを願っていたから。多少、村のみんなからは嫌われもしたが成功した。ある日、仕掛けの途中で妙な噂を聞いた。村の周囲でスライムとやらが幼い娘をさらうらしい。ふっふっふっ、これは女の子にもてる最大のチャンス!俺が助け出してかっこいいって言わせてやる。でも、違った。俺の方が彼女に惚れてしまった。彼女の笑顔を見ると不思議と幸せになる。そう、彼女の笑顔はまるで魔法のようだった。俺…いや僕には彼女の笑顔を見ていたい、そんな望みが芽生えた。
彼女がスライムに連れ去られてしまった。でも、昨日彼女が寝ている間に場所を追跡するためのアイテムをつけておいた。それを辿ると洞窟へ着いた。洞窟の中を進むと大量のスライムと中央にはピンクの大きめなスライムがいた。その大きなスライムの前には手足をスライムで固定されたテラさんがいた、そして壁中には…たくさんの誘拐された少女が縛られていた。
~エクステラサイド~
「こ、ここは?」
「ふふっ、気がついたようだな。」
目の前では巨大なピンクのスライムが話していた。
「すごい!どうやって話しているの?」
「いや、君状況分かってる?」
「???」
「まぁいい。村で潜伏している仲間から勇者が現れたと聞き、待ち伏せした。私は魔王軍のスライマという特殊なスライムだ。」
「へぇ、スライムとどう違うの?」
「ふふふ、見ておれ。」
スライマは壁に固定されていた少女を一人取り込むと少女は見る見るうちに変形しスライムとなってしまった。
「どうだ?少しは恐くなったか?」
「…!」
「ふっふっふっ、恐くて声も出ないか。」
「っ…!スライムになるって…とっても気持ちよさそう!」
「はっ?」
スライマは固まってしまった。
その状況をイルマは見ていた。そしてスライマの隙を見逃さなかった。
「今のうちに!逃げてください、テラさん!」
いつの間にかエクステラの拘束も解かれていた。
「えっ?でも…。」
「いいから!」
イルマはエクステラの手を引っ張り洞窟の外へと連れだした。
「ここまで来れば…」
しかし、スライマは大量のスライムを連れて追いかけてきた。
「もう逃がしはしない。お前もスライムにしてやる。」
二人を大量のスライムが拘束する。
「イル君。大丈夫、安心して。」
「テラさん…」
「スライマ、あなたの望み叶えてあげる。」
エクステラはスライマに取り込まれてしまった。しかし、次の瞬間エクステラが光りだした。そして光が収まるとそこには青年が倒れていた。
「あれ…私は確か…王宮にいたはず…」
よく見ると全てのスライムは元の少女に戻っていた。
「だ、大丈夫ですか?」
イルマは青年に声をかける。
「あ、ああ大丈夫だ。私はスレイマ。王子だ。私を助けてくれたのは君かい?」
「いや…あれ?そういえばテラさんは?!」
どこからか声が聞こえた。
(お~い、イル君~。)
「テラさん?どこにいますか?」
(下だよ~。)
「下?」
足元を見てみると白いスライムがいた。
「少し遅かったみたいで私もスライムになっちゃった。みんなを元に戻した後に変わったからしばらく元に戻れなくなっちゃった。」
「テラさんはそれで大丈夫なんですか?」
「うん、スライムになってみると意外と気持ちいいよ。」
「………。」
「私のことはいいから早くお城へ行こうよ。」
「でも、その姿だと勇者だなんて信じてもらえない上に街にすら入れるか怪しい…」
「その辺は大丈夫だ。」
スレイマが突然話した。
「私は王子だ。この者には救われた。そのお礼だ。その姿に関してはお父様に説明しておこう。」
「ああ、頼む。」
「よろしくね、スレイマ君♪」
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