虚~ホロウ~Project1 虚無の始まり
虚無~うつな~
第1幕
プロローグ
気が付くと、何もない白い空間にいた。見ているだけで気が遠くなっていく。ふと足元を見ていると自分の体が見えない。まるで自分がこの白に溶けていくような感覚だ。そんな虚ろな気持ちの中、自分の心が無くなっていくような不思議な虚無感を感じ、意識が消えていった。
虚無編
第一章 はじまり
ある日、俺は妹と買い物に出かけていた。妹とはいえ血のつながりは無いが、かけがえのない家族だ。
「ねぇねぇ!私に何が似合うと思う?」
「うーん、何でも似合うと思うよ。」
「えぇ、ちゃんと決めてよ~。」
はいはい、と言いながら無難な白色のシャツを選んだ。
その帰り道。妹と歩いていると、突然目の前に白い空間のようなものが現れた。その瞬間、なぜか俺は自分の体から力が抜けていくのを感じた。妹が心配になり見ると、妹は無心な様子でただただその空間を見つめそこへ向かっていく。止めたかった。しかし、止められなかった。俺はその空間へ妹が消えていくのを黙って見ているしかなかった…
第二章
第一話 力
俺は無力だった。力が欲しかった。それはただ夢中になれる何かが欲しかっただけかもしれない。それは人間の弱点だ。ただ自らが優越感に浸れるように動いてしまう。最後には他人を見下してしまうのだ。そのためには力が必要だ。見下さないようにするには心が必要だ。無心に夢中になれる心が… しかし、その心は見つけなければいけない。だから、誰もが力を求めるのだ。俺は見つけたんだ。あの日、雨の中… そう、あれは奇跡のようだった…
心は薄れていく。離れて、奪われて、初めて気づくものかもしれない。それが自分の全てだと。
第二話 別れと出会い
妹は消えていった。それは、自分が自分であるための大切なものだ。取り戻さなければと衝動的になるが、あの空間が何かわからなければ手が出せない。そう考えながら裏路地を歩いていた。すると裏路地の交差している場所で妹が前を通って行った気がしたのだ。俺は反射的にそのあとを追いかける。すると裏路地にはありもしないような場所に着いた。そこには地下へ続く階段がある。俺は足音を立てないよう静かに階段を下りていく。永遠に続くかのような階段を延々と降りていく。ふと気が付くと目の前に扉が現れた。不思議に思いながら扉を開けるとそこには妹と似た…いや、妹だ。しかし、2人いる。どういうことだ、と気になり身を潜めながら近づいていく。
第三章
第一話 奇跡の出会い
ここで1つ昔話をしよう。これは俺、虚無有間(うつなあるま)と妹の虚無未離(うつなみり)が唯一の家族になった話だ。
昔、気がついたら俺はいた。親もいないし、ただ1人でひたすら生きていた。ある雨の日、とあるマンションの前を通ると塀に寄りかかって座っているあまりにも長く透き通るような白い髪に光を無くした赤い目、肌は陶磁器のような白い少女がいた。そこで俺は家出をしたのかと尋ねた。少女は首を横に振った。
「どうしたのか?」と俺は尋ねた。少女は「私は誰なのか分からないの。その…私を拾ってくれませんか?」と言ってきた。当然俺も少しは驚いた。俺も同じだ。そこに親近感がある、それだけじゃおかしいかもしれない。しかし、何故だろう。自然と少女に惹かれてしまう。そこで不意に「俺の妹にならないか?」と言ってしまった。何故こんなことが口に出てしまうのか、考えると自分でも不思議に思ってしまう。これが奇跡の出会いってやつなのかもしれない。少女は笑顔で「うん!」と返事をした。俺にはその笑顔がなぜか懐かしく感じたんだ。それから何年も何年も暮らしていった。それがこんなことになるとは…
第二話 謎の二人
俺は2人の未離を見て、少し驚いていた。ただ、1人は黒いコートにフードを被っていて、もう1人はツインテールに髪を縛っている。コートの方が「作戦は順調か?」と聞く。もう1人は「はい、なんとか。」と言い返す。コートの方が「どこかで休んでていいぞ。」と言い、もう1人が「いいんですか?」と言い、どこかへ行った。コートの方がこちらを見たような気がし身を隠すように逃げようとすると、「そこにいるのは分かってんだ。まぁ、何もしないから出てこいよ。」と言うので、素直に出た。「ほうほう、ここまで嗅ぎつけるとはそんなに大事か。」と言う。俺は「お前は誰なんだ。」と聞く、フードの少女は「あぁ、私は虚無未離の感情の楽の部分であるミリ・エクスバースだ。」と彼女にとっては少しサイズの大きいコートを翻しながら言う。俺は「未離の感情?」と聞く。エクスバースは「まぁ、驚くのは仕方がないか。私はお前が大好きだ。特別に教えてやるよ。実はな、オリジナルは虚無の女神の器として選ばれたんだ。」と言う。俺は何が何だか分からなくなった。
第三話 虚無の女神
エクスバースが言うには、虚無の女神とは人々が創造の概念を持つようにそれは創造とは逆の性質である無を司る神のようだ。しかしそれには奇妙な条件があり、外見や運命力の適性がある程度ないとダメらしい。しかし、エクスバースは「調べたのだが、普通代替わりにおいてこんなことはしないらしい。器を使うとは相当な何かがあるはずだ。」と言う。代替わりなんてものは基本無いらしい。自然と運命的に女神になるのが普通らしいのだ。俺は「なぜエクスバースは俺に協力するのか?」と聞く。エクスバースは「だから、あんたのことが好きなんだ。まぁオリジナルが好きな分もあるだろうが、私はあくまで個人的にあんたが気に入ったんだ。」と言うと、髪を縛っている方が帰ってきた。エクスバースが「あぁ、帰ってきたか。」と言うと、髪を縛っている少女は「えぇ~、有間さんが来てるなら先に呼んでくださいよ~。あ、私は虚無未離の感情の喜の部分のミリ・エクステラで~す!」と笑顔で言い放つ。エクスバースは「お前がいると無駄に話が進まないんだ。もう少し静かにしてくれるのだったらいいのだがな!」と怒鳴り、「とにかく!その今の虚無の女神は何か隠している。オリジナルを取り返すための手筈はある程度整えておいた。さぁ、早いほうが何かと得だ。行くぞ!」と言い、機械を起動させた。
最終章
第一話 作戦実行
機械には、見覚えのある空間があった。エクスバースは「そこに飛び込め。その中にオリジナルはいる。だが、長居は絶対にするな!あんたが虚無に呑まれては元も子もないからな。」と念を押して、俺はその空間へ飛び込んだ。
第二話 また…
そこにはただただ白い空間が広がっていた。見ているだけで気が狂いそうだ。歩いていくとそこに未離が座っていた。しかし、外見は人形のようになってしまっていた。それでも俺にはその人形が未離だとすぐに分かった。あぁ、あの時と同じだ。そこで「俺の妹にならないか。」と言った。その時、未離が笑顔になった気がした。そして、俺は未離を抱えながら来た道を戻って行った。
第三話 構わない
連れ帰った未離をエクスバースは機械の中に保護した。エクスバースは「虚無の進行がかなり進んでいる。これでは意識を取り戻しても後遺症が残ってしまう。」と聞いた。俺は「構わない。それが未離であるなら後遺症が残っても俺の大切な妹なんだ。」と答えた。エクスバースは「あぁ、そう答えると思ったよ。意識には事前に干渉しておいた。ただ後遺症として左目が白くなって左手足が人形のままだが構わないな。」と言った。俺は「あぁ。構わない。」と言った。
第四話 後悔と逃げること
俺は自分が怖かった。妹に向き合えず、愛情表現さえもできなかった自分が。それは当たり前なのかもしれない。だがそれは失ってから気づいてしまうのだ。あんな対応をしてしまった自分がただ憎い。あぁ、後悔ってこんな気持ちなのかと思いに思ってしまう…あぁ、それは自分の宝物に対して何もしてあげられずにただそのまま忘れてしまうのが怖いだけの臆病な人間かもしれないだろう。しかし、一度失い、訪れるのは忘却ではなく、ただひたすらにそれを求め続けてしまうことだ。それが自分が自分であるための道しるべなら尚更だ。
第五話 私って…
私は気づいた。気づいてしまった。この自分が自分ではない感じ。それは自分から何かが抜け落ちてしまったのだから。虚ろな意識の中、目の前の私が聞いてきた。「なぁ、心って…感情って何だろうな。自分はあんたの感情の一部だ。しかし、こうも独立できてしまう。それを失ったあんたはもう意識は戻らないはずだ。なぜ意識が戻る?それは、あんたの心が感情ではない別の何かにあるはずなんだ…」と聞かれ、はっと目を覚ました。目の前の私は「あぁ起きてたのか、今解くよ。」と言い、少し顔を赤らめながら私を出してくれた。「まだ後遺症があるんだ。慣れるまで手を貸してやるよ。」と言われ、ふと私は自分の体を見た。最初は驚いた。左手と左足が人形のようになってしまっていたから。でも、人形のように関節のつながりが見え、硬くなっていても自由に動かせてしまう。「大丈夫。」と言い一人で立つと、やはり左右のバランスが取れずに転んでしまった。「大丈夫じゃないだろ。さぁ、私の肩につかまるんだ。」とその子は言い肩を貸してくれた。「あなたは?」と聞くと、「私はミリ・エクスバース。あんたの楽の感情だよ。」と答えた。
第六話 エクスバースとして在ること
「あぁ、分かっていたとも。大切だからこそ離れてしまった寂しい二人だ。」少女を連れ、扉を開けた。そこには少女を待つ男がいた。あれは私たちにとって命だ。心なんだ。いつかは離れるかもしれない。しかし、追っているだけで生きていられるんだ。
少女は「お兄ちゃん!あの…その…」と言い、男は「気にするな。俺はただお前を…未離を手放したくないんだ!もう逃げはしない。なんでも聞いてくれ!俺はもう未離がいないとダメなんだ!」と泣き叫び、少女は「私も…よ。」と言い、二人は抱き合った。
私は自分の考えを改めた。あぁ、生きていると感じることは大事だとも。ただ、追いかけるのではなく近づかなければダメなんだ。男が「エクスバース、ありがとうな。」と言ったので、私は「あぁ、気にすることはない。私も色々学ばせてもらった。あぁ、とても楽しいとも。」と言った。楽しむこと…これは私が私でいられるため。そして、オリジナルがオリジナルでいてくれるために必要なんだ。オリジナルには私たちがいなくてはいけないわけではないが、サポートしていかなければならない。それが虚無未離として在るためなのだから。
最終話 エクステラとして在ること
私は私。ただただ嬉しいという感情が溢れてくる。たまには悲しくもなる。これって何なんだろうなぁ、と考えながら今日もあの研究オタクさんと共にオリジナルと一緒に生きていく。感情は感情が全てではない。私が悲しむようになったのは、有間と出会ったからだ。それに違いない。それは虚無未離として当然のこと。彼を愛する、それは私が虚無未離として在ること。彼を喜ばせること、それがミリ・エクステラとして在ることなんだから。
創造編
第一章
第一話 追想
オレには分かっていた。まったく馬鹿だよなぁ、オレって。自らの力のために大事なものを無くしちまうなんて。失ってから気づくものなんだ、宝物って。あの時のオレはどうかしてた。結局、すべては死んで終わりなんだ。力なんて死の前ではなんの意味も無い。分かっていたつもりで分かっていなかった。死しても必要なのは愛だってね。まぁ、死んじまうオレには、もう関係ないか。オレは生まれ変わってもあの子に会いたいなぁ。オレのたった一人の大事な妹。この世に未練があるとしたらそれくらいだ。後世のオレはうまくやってほしい。なにか大事なものを失う前に…
第二話 平凡
あれから少し経った。あの日からは未離のリハビリも兼ねて、あの地下研究室に四人で暮らしている。とはいえ、未離はもう人前には出られないだろうと思ったが、慣れれば多少の魔力で手足くらいは偽装できるとエクスバースは言った。少し状況が悪くなっただけで、いつも通りのような平凡な毎日が送れそうだ。だが、安心はできない。いつ虚無の女神が襲ってきてもおかしくはない。その時の対策や対応を考えねば、しかし、俺は相手に匹敵する力を持っていない。だが、次に未離が連れ去られてしまえば、取り返せるか分からない。俺にもあんな力があれば…
第二章
第一話 前世
未離には定期的にメンテナンスが必要らしい。その間、研究室に備えられている資料室に向かった。そこにはエクスバース達が集めた虚無の女神の伝説の資料があるらしい。全てではないらしいが、俺にはそれが未離を知るきっかけにもなると思い、調べることにした。
俺はとある文献に目が離せなくなった。これはエクスバースの考察らしい。
『虚無の女神を受け継ぐということには容姿すらも含まれているらしい。長い白髪に赤い目…そう、この容姿はまるで私たちのようだ。力を受け継ぐ上で容姿など関係あるのだろうか。過去には元の容姿から変わった者もいるらしい。虚無の女神にはこの容姿に何かしらの因縁や執着でもあるのだろうか…そして気になるのは、初代と二代目の情報が全くと言っていいほど無いのだ。初代と二代目に虚無の女神の全てがあると私は踏んでいる…。』
「容姿…」俺には少し分かるような気がする。俺は容姿も含め変化が苦手だ。しかし、覚えがある。俺は初めて妹ができたあの日、あの姿を見ただけで運命的に惹かれたのだ。それについて考えていると、意識が遠のくような気がした。
気が付くと目の前に俺が立っていたのだ。目の前の俺はこう言った。
「やぁ、オレはあんたの前世であるアルマ・E(エネミー)・ホロウだ。一応、創造神の力を持っている。」
それを聞いた俺は少し混乱した。
第二話 後悔の果て
急に俺の前に現れた俺の前世と名乗るヤツを見て、最初は混乱した。しかし、俺の前世であるヤツがこのタイミングで現れるのは、とても都合がよい。そこで俺は聞いてみた。
「虚無の女神にはどんな秘密がある?お前は知っているはずだ。」
オレには分かりそうで分からないものを前世のこいつは知っているはずなんだ。ヤツは答えた。
「まぁ、そうせかすな。教えてやる、そこに座れよ。」
と言った後、ヤツが手をかざすとその先に椅子が二つ現れた。
俺はその一つに座り、ヤツがもう片方に腰を掛けると、ヤツは続ける。
「オレの家庭は妹と両親がいた。まぁ、そう裕福ではないがオレは幸せだった。ある日、禁断魔法に関わったとして両親が捕まり処刑された。それから残されたオレと妹は周囲の人間から虐げられてきた。妹が悲しい顔になるのがとても悔しかった。あぁ、力が欲しい。そんな悩みを持って、両親が使っていた部屋にいると見つけてしまったんだ。両親が捕まった原因とも思える本が。早速、その儀式を執り行うように準備した。かなり虐げられていたからな、人は寄り付かなくなっていたから秘密裏に準備はできた。しかし、一つ足りない…大切な者を力の反発を抑えるモノにするということだ。いわば生贄だ。そこで妹を生贄にすることとした。ほんとバカだよなぁ。妹を守るために力が欲しかったはずなのに、いつの間にか妹を犠牲にしていたんだからな。その儀式の後、オレは創造神の力を得ていた。しかし、妹がいない。それに嘆き、オレは異空間に自らを封印した。そして、ある時オレは目覚めた。」
第三話 釣り合い
ヤツは続けて話す。
「何かと思い、封印から目覚めた後考えた。儀式の時に反発の力の存在、つまり対極だな。その釣り合いを保てなくなったからだと思った。あぁ、妹がいるのか…と思い、オレは自分の分身を創り現世に送った。万が一、力を行使しないように力と記憶は抜いておいたけどな。オレもしばらく封印されてたもんだから動けなかったからな。そこで創ったのがお前だ。本当に昔のオレにそっくりだな。いや、昔のオレ以上に妹を愛している。あぁ、そういや妹も生まれ変わりのような存在か。」
そう言い終わると、一瞬空間が歪んだ。ヤツは言う。
「おっと、時間があまり無いようだ。とにかく、オレの力と記憶、力の制御に使うマントをやる。妹を守れ。それだけだ、オレのたった一つの罪は…」
そう言うとヤツは俺にマントを渡し、徐々に消えていった。俺はこう答えた。
「あぁ、決して繰り返しはしない。お前とは違うからな。」
消える寸前ヤツは少し笑いながら答えた。
「最後まで馬鹿にされるのか。そうだ、お前はオレと違う。必ず守れよ。…最後にもう一度逢いたかった…オレの大切な妹、ミリ…」
そう言い、涙を流しながらヤツは消えた。そして気がつくと俺は元の資料室にいた。力と記憶、それにマントがあることを確認すると、すぐに研究室へ向かった。予測通り三人はいなかった。
女神編
第1章
第1話 対立
少し時は遡る。有間が異空間にいる時、エクスバースとエクステラは治療中の未離を見ていた。エクスバースは言った。
「オリジナルがこうなってしまったからには力の供給が必要だ。だが、あちらへ行けば女神に見つかりかねない。」
そういった直後、エクステラが戦闘態勢に入る。
「エクスバースちゃん!」
それを聞いたエクスバースはため息をつき言った。
「早いな、やはりここを見つけ出すか…。」
そのまま空間が歪んでいく。
気がつくと3人は虚無空間にいた。目の前に私たちと同じ容姿だが、少し仕草が女性らしくなく腕を組んでいる奴が現れた。奴は言う。
「こんな所にいたか。さぁ、早く器をよこせ。」
私は答える。
「早いじゃないか。よく気づいたな、ミナ。」
第2話 神様
ミナは驚きながら言う。
「もう私の名前まで調べたのか。」
エクスバースは答えた。
「ああ、楽の感情の存在だからか好奇心だけは取り柄なんだよ。」
ミナは言う。
「そんなことはどうでもいい。さっさと器を渡せ。私は女神なんだ、力の差は歴然じゃないか。」
エクスバースは笑みを浮かべながら答える。
「元より戦うことなんて目にはない。私はそういうことが嫌いだからな。」
ミナはそれを聞くと、ため息をついて言った。
「ならなぜ抗う。」
エクスバースは答えた。
「気になったからだ。私は争いが嫌いだが、気になってしまうと観察したくなるのだ。私は2人の行く末を見たい、ただそれだけだ。」
ミナはそれを聞いて言った。
「ならこちらは一方的に攻めるだけだ。」
そう言った後、大きな力の塊がエクスバース達に迫る。その瞬間、それを打ち消すような力が現れた。そこに立っていたのは、黒いマントを翻した有間だった。
その時、薬の効果が切れ、目を覚ました未離には光の前に立っていた有間が神様に見えた。
第2章
第1話 真理
ミナの攻撃を打ち消した有間は言った。
「何とか間に合ったな。」
ミナは動揺している。
「お前、私達の力を打ち消すとは…何者だ?」
有間は答える。
「俺は未離の兄である有間だ。お前はなぜ未離を狙う。この子はお前たちが求めている真理だぞ。」
それを聞き、ミナとエクスバースは驚いた。エクスバースは聞く。
「真理ってことは、オリジナルがまさか…!」
有間は答える。
「ああ、未離は初代虚無の女神の転生後だ。」
ミナとエクスバースはさらに驚く。有間は続ける。
「恐らくその頃の記憶はないだろう。虚無の女神について知りたかったら俺に聞け。」
有間は一息おき、続ける。
「虚無の女神は…、力を求め続けた男が大切な人を犠牲にした結果、力の対極として生まれた存在だ。だからこそ、その時の存在を保とうとする。再会する時の為に…な。しかし、その後初代は自らを封印したはずだ。だから、代替わりなんてものは存在しないはずだ。俺もこれについては分からないが…。」
ミナは言う。
「お前は一体どこでそんな情報を…。」
有間は答える。
「あぁその事か、俺はその伝承の男の生まれ変わりみたいなやつだ。先ほど、記憶や力を受け継いだ。」
第2話 協力
有間の返答を聞き、ミナはため息をついた後雰囲気が変わった。
「エクスバース、お前が気になることは私も気になってしまう。そもそも私は虚無の女神が気に入らなかった。お前たちに協力してやるよ。」
有間は答えた。
「あぁ、よろしく頼む。元は俺の前世の罪だ。迷惑をかけたことは代わって謝る。ところで、虚無の女神の代を未離に渡してほしいができるか?」
エクスバースが答える。
「それは私が答える。オリジナルは今、左目と左手足が器となっていて、ここに力が集まると暴走してしまう可能性がある。虚無の力が安定しているこの空間で固定してしまえば暴走の可能性は低いだろう。」
そう言った後、エクスバースはミナの方を向き、続ける。
「ミナ、この空間を私たちが使ってもいいか?」
ミナは答える。
「いいよ。もともと私たちには広すぎたからな。自由に使ってくれ。」
第3話 共同生活
3人が話していると、どうやら目を完全に覚ました未離と転ばないように未離の体を支えるエクステラが来た。未離は言った。
「じゃあ、ここでみんな暮らそうよ。エクステラちゃんから聞いたけど、私はもう普通じゃないでしょ。」
エクスバースはため息をついて言った。
「エクステラ…。お前は本当に口が軽いな。」
エクステラは照れながら笑う。未離の言葉を聞いて少し考えた後、有間は笑って言った。
「未離が望むならやろうじゃないか。家とかは俺が創ってやる。少し大変だが未離のためだ。」
そして5人の共同生活が始まった。
儀式編
第1章
第1話 虚無の継承
共同生活が始まり、少し経ったある日。ついに未離への虚無の女神継承儀式が始まった。とはいえ、儀式的なものではなく、ただ力を渡すだけだ。しかし、未離は特別なのでエクスバースが作った機械を経由して力を渡す。エクスバースは未離に言った。
「オリジナル、暴走するかどうかはお前の精神力に左右される。力に飲まれてはいけないぞ。」
その後、未離は頷き、機械の中へ入った。
「さぁ、始めるぞ。」
そして継承が始まった。
第2話 暴走
儀式編 第1章 第2話 暴走
儀式が行われた。その時未離の意識は、いつもの空間とは違う。囚われていた時の空間に近いようで違う、どこか懐かしい空間にいた。その空間にいると、感じるのは虚無感。私から感覚が消えていく。虚無感…誰よりも知っている感覚。そんな気持ちでいると、どこか懐かしい声が聞こえてきた。
(私は悪くは無いのに…なんでそんなに悲しむの…ねぇ、気づいてよ!お兄ちゃん!え…もしかして見えてないの…)
未離はそれを聞くと無心になり思う。
【あぁ、またか…】
一方、エクスバースは困っていた。それはそうだ。未離に流した力ではなく、未離自身が暴走しているのだ。
「なぜこんな事に…」
エクスバースは慌てながら言った。
隅で見ていた有間は心配そうな顔で呟く。
「元はといえ俺の責任だ。でも、なぜ目を背けるんだ。」
第2章
第1話 因果の廻り
私は恵まれていた。それで良かった。そのままで…。だけどある日、私の両親が処刑された。泣いていた私をお兄ちゃんが励ましてくれた。ある日、私は外へ出かけた。その時、私はいじめられた。私はそれでもお兄ちゃんが励ましてくれるなら良かった。でも、お兄ちゃんは私を守ろうとしてくれた。それからだ、お兄ちゃんがおかしくなったのは。数ヶ月経った後、お兄ちゃんが私を初めて怒鳴った。そして、私は生贄になった。とは言っても、死んだ訳では無い。無の概念となった。概念でも、普通に生きている。でも、お兄ちゃんは本当に狂ってしまった。いつの間にかお兄ちゃんは私のことを悔やみ、泣いていた。私は声を上げる。「私は悪くは無いのに…なんでそんなに悲しむの…ねぇ、気づいてよ!お兄ちゃん!え…もしかして見えてないの…」
その時の私は、存在自体を実体化させる術を知らなかった。そして、その術を得た時、お兄ちゃんは自らの力ごと封印した。私はもう一度だけでもお兄ちゃんに愛されたかった。そうだ、お兄ちゃんが封印を解いた時、私も封印が解けるように自分を封印しよう。とはいえ、この記憶を持っているせいで愛されても愛されている気がしないだろう。それならこの記憶も消そうか。お兄ちゃんに会えるといいね、後世の私…。そう思っていると目の前に誰かがいた。ソレは言った。「自らを破壊するなんて…正気なのか?」
あの出会いから孤独は癒えた、だがそれも束の間だった。
第2話 存在の共有
未離が暴走してから数時間後、有間は悩んだ後覚悟を決め提案する。
「エクスバース、未離と俺の存在を繋げてくれないか。」
エクスバースは驚いた。それも当然だ。存在を繋げるということは、力だけでなく感覚や心までも共有することになるのだ。確かに虚無の力は有間の持つ創造の力で安定させることは出来る。しかし、有間が虚無の力に耐えられるかは分からない。だが、心が共有できれば未離自身の暴走を止められる上、力を安定させ力の方の暴走も防ぐことが出来る。エクスバースはこれに賭けようと思い、言った。
「分かった、でも虚無の力に飲まれるな。お前は条件を満たしていない。虚無の力の抵抗はかなりのものだろう。」
有間は答える。
「あぁ。」
そして、エクスバースは2人の存在を繋げた。
最終章 いつまでも一緒に…
未離は感じていた、孤独を。この真っ白な空間で1人…私なんてこの白に溶けて消えてしまえばいい。そんなことを思う。そこに一筋の光が射す。そこから懐かしくてどこか温かいような声が聞こえる。
「未離、1人で心を塞ぐんじゃない。孤独は何よりも怖いものだ。いつでも俺が付き添ってやる。たとえ離れていても。だから、1人で塞ぎ込むんじゃない!」
それを聞き、未離はやっと気がつけたのだ、自分には何も無いのに今存在している意味が。「お兄ちゃん!」と叫び、光の射す方へ駆け出す。左足はまだ慣れていなくて何度も転びそうになる。しかし、私は必要とされている。そう思うだけで、何度も立て直す。そしてたどり着けたのだ。
「未離、もう孤独にはしない!いつまでも一緒だ。」
有間は未離を抱いて言った。そう、もう未離は1人ではないのだ、いつも兄がいる。心も体も繋がっている。私は1人ではないのだ。
そして儀式が終わった。あれからお兄ちゃんに後遺症の白い痣が出てしまって少し申し訳ないけど、お兄ちゃんはそれでも受け入れてくれた。私とお兄ちゃんはこの空間で暮らしながら虚無の女神として存在している。困っている時は、いつもお兄ちゃんが心配してくれる。そう、もう抱え込む必要は無いのだ…私は1人で
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます