夢の話
月白藤祕
変なお祭りの夢
目を開けるとそこは山の上だった。
目の前には、私がいる山と同じくらいの山が円形に並んでいる。私がいる山もその円上であるようだ。その円の真ん中には小さな山があって、その頂上には小さな池のようなものがある。私は不思議な景色だなぁとそんな風に思って、そこから見える景色を楽しもうとした。
しかしそんな時間はありはせず、
「おぉぉい!準備はええかぁぁ!!」
と男の声がすぐ近くから聞こえた。
私は慌ててすぐ横を見た。
人が横にいるなんて思いもしないくらい、私がいる場所は断崖絶壁で、しかし、そんな場所にも関わらず、100人以上の男たちが密集していた。少し顔を上げると、男たちの頭上に太くて長い縄があり、それは頂上から谷の方にある小さな山の頂上に繋がっている。それにその縄には、それよりも細い縄が木の枝のように分かれて、結びつけてあった。男たちはそれを持って、目下に見える山の頂きを見つめていた。
私は未だに状況が飲み込めていなかったし、その男たちが持っている縄のうち、1本が何故か私の前にもあって、それを握りしめていたことも不思議だ。
私が不思議そうにそれを眺めていると、横にいたおじさんが、
「大丈夫か?今年初めて参加するんだろ?ちゃんと握っとかにゃいかんぞ!振り落とされちゃ、死んじまうからな!」
そう声をかけてくれた。しかし、振り落とされたら死ぬとは、物騒なことを聞いてしまったなと縄を強く握りしめた。
私はとりあえず、そのおじさんに今から何が起きるのか?という質問を投げかけた。おじさんはびっくりしながらも、
「お?知ってて参加するわけじゃないのか!?今からここにいる全員でターザンして、下の小さい山の上に行くんや!これじゃないとあの山の上には行けんからな!」
そう親切に教えてくれた。
私は途端に怖くなってきて、体が震えだした。そんな時に大きな声で、
「ほんなら行くで!!!せぇぇえの!!」
男たちが一斉に飛び出した。
私が持つ縄が、崖の下に向かって引っ張られていく。私は怖くて咄嗟に離し、男たちを見送った。それは巨大なミノムシのようで、あの中の1人になるところだったのかと思うとゾッとした。
しかし、降りなくてよかったとは思わなかった。何故ってそこが断崖絶壁であることは変わらないからだ。怖すぎて、その場から動けなくなったのだ。
私は誰か居ないものかと、もう少し上の方に目をやった。そこには見物客が何人かいたが、誰も知り合いではなさそうだし、皆谷の方を見ているから私を認知してる人はいなさそうだなぁと半ば諦めて、地面にしがみついて、上に上がろうとする。しかし、雑草は抜けるし、足元は滑るしで、少しずつ下がっていった。怖すぎて記憶があまりないけど、本当に体がゾワッとした。
私が身動きがとれない状態に陥って、どうしようかと考えていると、頭上から声が聞こえた。
「そのまま下がっていけば、足場があるからそこに降りたらいい」
聞き覚えのある声にやっとのことで、顔を上げると小学校を卒業して以来会っていなかった同級生がそこに立っていた。彼は私の横に滑り降り、そのまま足場まで降りると私に下から指示を出してくれた。
どうにかそこまで降りていくと、彼は座って、谷の山の上を指さした。私も彼に倣って座り、その指の先を見た。
「さっき降りていった男たちが何をするか知ってるか?あれはな、池の上に浮かべた小舟を渦巻く池の中心に追いやって、沈めるんだ。小舟には誰も触れられない。神様が乗ってるからね。だから皆木の棒を持って、それで小舟を押して、池の真ん中にもっていくんだ。でも、渦のせいで倒れそうになるから、真っ直ぐ沈めるために倒れないようにしなければいけないんだよ。結構大変でね、毎年何人か池の中に落ちて、死んじゃうんだ。」
彼は淡々とこの祭りでしなければいけないことを教えてくれて、祭りの歴史もついでに教えてくれた。私は男たちを見ながら、ふーんと彼の話を聞いた。
そのうち私は夢から目覚め、朝が来た。
夢の話 月白藤祕 @himaisan
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。夢の話の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます