第6話 猫をおいて会社へ行く

昨日は寝室に入れず、リビングのソファーで寝た。

猫が気になり何度か物置部屋に行ってみたり、昨日の妻の様子が気になり、あまり眠れなかった。

朝早くにシャワーを浴びて、猫を見に行くと、エサ入れの前で猫がニャーと鳴いていた。

かわいいものだ。カリカリのエサを皿に移してあげると早速カリポリと音を立てて食べはじめた。

きれいなグレーの後ろ姿にするりと長いしっぽのシルエット。

ほんとにイイ猫を手に入れたな。

口角が緩む。


さて、ドアを開かないようにして眠ってしまった我が妻は、まだ起きる気配が無いが、会社に行く準備をしなくてはならない。

今日の金曜日が終われば、3連休だ。

その間に、妻の体調も良くなるだろう。

今日のところは、ここに猫を置いて、会社に行くとしよう。新しい水をくんで、カリカリエサをもう少し足しておく。


スーツに着換えてかばんを持って、一応、寝室に向かって「行って来るよ」と声をかけてみたが、返事が無い。

まあ、いいや。何かあったらメールが来るだろう。


玄関で靴をはく前に、もう一回猫の顔を見て「行ってくるよ、いいコにしててね」と声をかけると、こっちに近寄ってきた。

足もとに来てオレを見上げて、ニャァと鳴く。

あー、会社、行きたくないなー。

でも、大人として休むわけにもいかないし、がんばれオレ。


スーツに猫の毛がつかないように両手を伸ばしたまま猫を持ち上げて、棚の上においたフリースの上に優しく置いた。


不思議な表情をした猫を置いて、ドアを閉めて。

あ、やべ。早めに出掛けてエクセルシオールカフェでコーヒーを飲んでから出社しようかと思ってたけど、そんな時間あるかな。

急ごう。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る