第4話 猫と一緒に暮らす

「夕飯できたけど」

と妻が言う。

リビングテーブルには鍋が用意されていた。

何故か気まずい。

「なんか飲むかい?」と声をかけると、

「わたしはいい」と返事。

「誕生日だからさ、乾杯でもしようかと思って、、」と言っても、「わたしはいらない」と言う。

席に座ると、何故か取り皿や箸が3つ用意してあった。

食べ始めると「あのコは?」と言うので、

「オレの部屋にいるよ」と答えると、

「食事は?」と。

「とりあえず、えさはある。自分で食べるだろうよ、もう子供じゃないんだから」

顔をしかめたままで妻も鍋を食べ始めた。

誕生日だっていうのに、なんでこんなに不機嫌なんだろう…。

猫、嫌いじゃなかったよな…。

前に猫飼いたいって言ってたの、あいつじゃん。

いつもの偏頭痛だろうか。

それとも、、また精神的に病んだ時のあの状態になっているのか…。


食事が終わり、猫が気になるオレが猫のいる部屋に行こうとすると妻が「ねえ、あのコなんなの?いつまでいるの?」と聞いて来た。

「いつまでって、、、今日から一緒に暮らすんだよ」と言うと

「は??」「意味わかんない!」ときゅうに怒り狂って、寝室に入っていった。


ぁー、、、。

やっぱりおかしい。

再発したんだ。

妻は幻覚が見えるあの病気をまたぶり返したんだ。

こんな時はもう何を言っても被害妄想の引き金になってしまう。

もう、そっとしておくしかないな。

ため息をつきながら、オレが猫の様子を見に行くと、猫はしっかり、エサを食べ、水ものんでいた。

パソコンでYou Tubeを見なから過ごしていたら、何やら臭ってきた。

ペットショップで教えてもらったとおり、猫のトイレをセットしておいたら、すぐにトイレもできたようだ。

もう大丈夫だろう。

あとは自由に猫のタイミングで家を動き回るようになるだろう。


妻の誕生日は思ったような良い日にはならなかったが、この猫がオレを癒してくれる。

これから猫との暮らしがきっと妻にも穏やかさを与えてくれるだろう。

明日にはきっと妻も、この可愛らしい猫に夢中になって、変な幻覚から開放されるさ。


「よろしくな。ネコ。」

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