第4章 第2話 運命の修正力
影は たま へ殺到した後、サンアトスへと固まって行った。
死神は
影が大陸中の生物へ無作為に
分体が己に統合され器である英雄精霊の能力、死神としての神力は膨大となった。
「た、たま ……死ん。 うわああああ! あああ゛あ゛あ゛!」
ベリアが激昂し戦斧を両手でサンアトスに叩きつける。
片手で扱う戦斧を両手で、[狂戦士]つきだ。
魔力こそ付与されていないが紋様歌も刻まれている。
サンアトスへぶち当て切り裂き抜けるはずが……受け止められた。
蜘蛛の足を思わせる影の触手が伸び、守るように覆っていたのだ。
「何なんだありゃあ、ベリアを止められるなんて有り得るのか?」
「先程までは普通に避けたり受け流したりをしてましたよね?
そう言えば狐の時も……勢いは影には無効という事でしょう」
「ふぅ……不死の英雄か、確かにこの身体はよく動く強者ではあったが。
判断が遅かったらやばかったな」
黒く染まったその身体にはアーリーンの面影は無い。
異形の神、
長命でも、筋肉を鍛えても、どんな能力を持っていても、輪廻を操り命を管理する神を越える事はない。
「茶番の責任とって、って言われてたんだったか。
待たせたな! これからが本番だ」
[ キュキュキュキュッ ]
無数に伸ばされた触手がベリア、ロッタン、そしてシェギを貫いた。
「いやぁああっ! くそっくそっボクが連れてきさえしなければ」
空を走る触手は大地に寝そべっているとはいえ勇者だけは避けていた。
既にこの場で立ち上がっている者はおらずアーリーンが連れてきたエルフたちでさえも一人残らず触手の餌食となった。
「ははははっ! デス・ロンドだ! 魂よ踊れ!
……ちっ、神の使徒には効かんか。
まあいい、貴様だけは手ずから命を絶ってやる」
タフな神の使徒、それもまだ幼く美しい少女。
命尽きるまで
サンアトスが近づこうとする――が、動けない事に気付いた。
正確には動けないのではなく空気が止まり音もない。
時が止まっているのだ。
にもかかわらず近づいてくる者がある。
ゆっくりと大地を突き破る柱のような物がこの場を囲む。
イワオの集団だった。
次に何かが近づいてくる気配がした。
風に舞う枯れ葉さえ停止しているこの空間で動いている者がいる。
[ ガシリ ]
頭を捕まれ、そのまま吊り上げられる。
頭がぐるりと廻されると正体が判明する。
山羊の角に毛むくじゃらの顔、獰猛ないかつい顔をした男。
「吾輩の縄張りでえらいことしてくれたのう?」
魔王であった。
その一言を合図に時が動き出す。
「離せっ、動いた? 触手共何をしているこいつを
触手達は命令に反応するが、目標がみつからずウロウロしている。
魔王がしっぽをぐるりを回し触手を根本から巻き取った。
「一網打尽じゃのう、コイツラのせいで苦労させられたわい。
ですろんどじゃったか? 魔族には命なぞないからなあ。
がっはっはっは!」
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僕は結構うまくやっていたと思う。
ハッタリ勝負も戦闘だって幻獣の力を使ったけどうまくやった。
なのに……なのになんで、あんなのあり?
おなじみ、かみさまの世界に来ていた。
4回目で3回目とおなじかみさま。
死んじゃったかー。
『輪廻の
『ご主人様あれはさすがに幻獣でも避けようがないにゃ』
『そんな事はありません。
追い詰めすぎず負けを装って油断したところをこう、こう!』
『すまんにゃあ、うちのご主人
神茶とお茶請けに丸鼠どうぞにゃ』
『これはどうもごていねいに。
じゃなくて! 食べるけども。
……幻獣でもあっさり負けちゃってごめんなさい。』
『ああ……いえ、先程ああは言いましたが相手は神なのです。
対抗できる幻獣であっても敗北は予測できていました。
え? どういうこと?
力を貰って挑んで、あっさり負けただけなのに。
『輪廻の
『そうか、奴が元の身体に戻ったから殺され……ん?
なんか変じゃない?
僕を殺せるなら輪廻の
『そこです』『どこにゃ?』『どこ?』
『
世界を違えても再び運命が出会い、殺しても運命の
だから輪廻の
『わからないよ』『ご主人運命の出会いとかに弱いにゃ』
『……サンアトスの個人的な都合でそうせざるを得なかったのです』
『なるほど』『わかりやすくなったにゃ』
『さて、ではこの後
準備は良いですか?』
『まって、この世界のベリアやユウシャたちはどうなっちゃうの?』
『それはこの世界のこれからの出来事です。
殺されてしまった
『……』『……』
『そのつぶらな瞳で小首を傾げるのをやめなさい!
ミソロジーを侵食していた死神の
良くはなっていきますが、
『そっかぁ、わかったよ』
『では心しなさい、元の世界では与えられた能力はありません。
守護すべき魂を失ったカスミの魂を救って下さい』
僕はこの世界での猫生を終え、元の世界へと戻ることになった。
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