第3章 第5話 ドワーフの大金床
精霊窟は山の
洞窟ではあっても地上よりは高いところにドワーフたちの住居がある。
だが採鉱坑道は大地のあらゆる方向へ掘り巡らされていた。
地下深く坑道を掘り進めた場合、水脈や空洞、溶岩に行き当たる。
目的を
「ある時ドワーフは地下水脈を掘り当ててしまい流された。
暗闇の中を地の底まで落ちて下った後、溶岩湖にたどり着いたのじゃ」
「よ、溶岩湖?」
「溶岩まで流されて生き延びたんですか? にわかには信じられませんね」
「信じるも何もわしじゃからな」
マグマに水が流れ込むとどうなるだろうか。
正解は膨大な水蒸気と、熱いマグマと、冷えた溶岩で天然のダム湖ができる。
深く考えなくとも致死的なエネルギーのぶつかり合いである。
「よく死にませんでしたね」
「ドワーフは自慢の髭があるからの。
とにかくその生み出すエネルギーでこの蒸気エレベーターは動いておるのじゃ」
シェギは軽い気持ちで動力について訪ねたのを後悔した。
髭がなんだというのだ。
バザームのとにかくの一言にどれだけの技術が圧縮されているかが何となく理解できてしまった、非常識さについていけなくなる。
そしてそれを裏付けるように蒸し暑さが増していく。
エレベーターが到着し、薄暗いがかなり広い鍛冶場に出る。
溶岩の塊が炉へゆっくりと流れている。
奥の施設では定期的に高温で蒸発する水の叫びが響く。
これが蒸気発電とマグマ永続炉を利用したドワーフの
「
「キサマはドワーフを何だと思っとるんじゃ。
人間の鍛冶師が鍛えたものなど壊しようがないわ。
何なら鍛え直して、より硬くして切れ味良くすることもできるが」
「切れ味は良すぎるくらいかなあ? もっと押し切り感が欲しいかも」
「切れ味よりも弾力か、分かった……おい、ちょっとおっぱいもませろ」
「何よ急に、はいどうぞ」
[ もみもみ もみもみ ]
「やっぱりのう……この胸甲、きつくなかったか?
サイズがあっとらんし腰をカバーしとらんから疲れやすいじゃろ。
山ほどある溶岩珪素を混ぜ込めば剛性も高く、軽く、量を増やせるから作り直してやる」
素材のコストよりも、合金加工がはるかにコスト高いのでは?
などと考えてはいけない、それがドワーフなのだ。
恥じらいがどうとか、性的にどうとかも考えてはいけない。
それがベリアなのだ。
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たま 一行が岩蜘蛛の生息地を抜け、頂上を越えることができた。
まだやってるイワオ同士のガチケンカも見えなくなった。
こころなしか下り斜面も登りに比べ緑が多い。
『下りは緩やかで順調だね』
『油断しないの! 森が近いんだから敵は多くなるのよ!』
言ってるそばから何かの気配に囲まれていた。
発見されてはいないが確実に気配を絞り込まれている。
同じ[隠密]もちか、猫族だろう。
< シャアアアアッ グギャオオオッ! >
疾走する先頭のにいやさんが奇襲され鼻先を引っ掻かれる。
タイミングは絶妙に最悪だったけれど、回避が最高に良かった。
僕たちの行く手を
魔獣のようだが、サリョウたち山猫のようにも見える。
違うところと言えば毛が薄く顔つきがいかにも悪そう。
しょっちゅう威嚇ばっかりしてるから
『あれはイワヒョウよ、サリョウ一族とは仲が悪いわね』
『ナワバリを奪うつもりは無い、通るだけだよ』
『関係ねえ、ナワバリを侵す者は皆殺しだ。
それに……ボスのいいつけでな。
そこの たま。
おまえを生かして逃す訳にはいかん』
ああ、そういう……そういや不愉快な感じがかすかにする。
早く目的地について一眠りしたかったけどそれなら話は別だ。
黒いやつがいるだけで安心して眠れない。
不愉快なやつは滅さなきゃ。
『たま さん? なんか
『おお~、さすが
『ヤダ、かっこいい』
コイツラの狙いは僕らしい。
身体の大きさも爪の大きさも本来なら
でも僕には身体強化がある。
どれだけ戦えるか試してみるのも面白い。
回り込み、飛び越える。 避けて、引っ掻く。
上から襲いかかり首根っこに思いっきり
目を
あれ? 意外と弱くない?
吠え声は恐ろしいし、コイツの爪や牙は当たったらやばい。
けど攻撃は素直だから簡単に避けられて攻撃はみんな当たる。
『仲間を呼んでたんだわ! 追加が来たわよ!』
『サリョウ一族の名に掛けて たま さんだけにやらせる訳にはいかない!』
『爪と牙だけはくれぐれも気をつけろよ!』
わらわらと後続が現れる。
増えても戦い方はわかったからなあ。
喰ってもうまそうじゃないけど、襲ってくるならやっちゃうよ?
身体強化がなければ、体力が続かないのかも知れない。
僕は回り込んだりするのが基本だし数は本当なら驚異だろう。
ボスまでの肩慣らしと行くか。
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