第1章 第10話 命の盾
うっすらと空が色づき、
「前方警戒にて進軍再開。
ブラックウルフと偵察兵を順に馬車で休ませながら開拓村へ進む」
野営地から開拓村への街道は整備されていない。
道なき道を進むことになるが、緩やかな
「隊長! 前方開拓村方面より5名ほど近づいて来ます」
「戦闘警戒! オークか人間かは判断つくか?」
「まだわかりません、ですが避難民以外は全滅でしたよね?」
「うむ、おそらくは……だが生き残りの逃走という事も有り得る」
長身で浅黒い肌、口から突き出す牙、赤い瞳。
オークが2匹。
そして喉の付け根に赤い紋章のある1匹、ハイオークである。
残り二人は縄で首を繋げられた男女の人間であった。
オークの一団は弓の射程も構わず討伐隊へ近付いて来る。
「ひゃあははは! 人間共よ、よく来た。
オーク村へようこそ、手厚く歓迎するぞ。
肉も別の喰いもんも村にあるが、娯楽ばっかりは人間がいないと始まらねえ」
そう叫んだかと思うと、オークの1匹が連れていた人間の女の両手を引っ張り力任せに
女の絶叫が響き、オークたちが腹を抱えて笑った。
「隊長さん? 攻撃命令ださないの?」
「
「はあぁぁ~シェギの懸念通りかぁ……。
おーいシェギ、頼むよー」
後方にいたシェギを手招きし、シェギが進言するため近寄る。
「隊長さん、正規兵の皆様方、貴方達の目的は救出ですか。
それともハイオーク討伐ですか」
「それは勿論ハイオーク討伐だが村人の―」
「あれらは命を拾った可哀想な村人ではありません。
討伐隊の覚悟を
ここで救えたとして村には道具がまだまだあるでしょう。
剣を振れないなら皆様は
討伐するかしないかです、しないのなら我々は帰りますよ。」
事実、奴らは一定の距離を置き討伐隊の出方を探っている。
奪い殺すだけのオークとは違うのだ。
街を命懸けで守る兵士と、死と隣合わせの依頼をこなす冒険者。
その違いがここに出ていた。
「我々の使命は……ハイオーク討伐だ」
詰まった喉から絞るようにひねり出しオークを睨みつける。
その言葉を聞き、シェギがベリアに頷き合図する。
「あいよ! 最初はやり
ロッタン行くよ!」
ベリアが中腰になり
ロッタンが突撃し近いオークへ剣で斬りつける。
斬りつけられたオークは慌てて
_/_/_/_/_/
ユウシャに話しかけられてから僕に起こった変化がある。
複雑なのは無理だけど、人間の話が何となく分かる様になった。
オークは人間を身代わりにして攻撃させまいとしているんだ。
ベリアが
今回はしっかり掴まってベリアの動きとオークの動きを学ぼう。
「せい、やあああっ!!」
ひとっとびで距離を詰めたかと思うと背中に留めてあった
盾男の肩から刃が入りオークの胴体までザックリと行った。
ベリアはメスのくせにエリーより乱暴者だ、コワイ。
まるで知っていたかのように全身を
[ バキリ ]
槍の柄が折れ弾け飛ぶ。
ロッタンもカタがついたようだ、肉壁女も駄目になったけど。
赤胸オークは槍を諦め幅広の剣を構えていた。
全身の筋肉を頼りに叩きつけてくる
右手の手斧はナイフの様な刃さばきで肉を引き裂き
左手の
赤胸オークは
そりゃ一匹になっちゃったもんね。
初戦は順調、討伐隊は再び進軍を開始した。
村まではもう少しある、本来であればホッとする時間だろう。
―― 僕の頭の中はちょう忙しかった ――
エリーの、太腿の
たてがみ猫の、集団をほんろうし引き裂いていく
ベリアの、圧倒的なぱわーと暴力的な武器を使いこなす技
僕は敵に襲われない居心地のいい穴蔵にでもこもって眠りたい。
僕は
僕はタンビや人間の子供達も守りたい。
――
ぼんやりしていられない、
人間どもの
そう、狩る為でもなく、守る為でもない。
『たのしいあそびのじかんだ』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます