第1章 第6話 馬賊ころしあい見学
冒険者ギルドで話し合っていた人間の群れが動き始める。
正規兵の小隊長が指揮をして
「あらま、たま ったらいつの間に白蛇を?
くふふ、おじゃまかなぁ? あたし仕事だから行ってくるねー」
たま と仔猫は数度鳴き合うと、たま はベリアの後に付いていく。
徒歩とは言っても馬のペースに合わせる
正規兵や冒険者はスタミナという点では平民とは比べ物にならない物だが、銅級のメンバーは戦いを覚えたての平民のようなものだ。
「陽が真上になる頃には野営所が見えてくる。
そこで休憩と昼を取ろう。
開拓村への補給物資を狙う賊の襲撃も報告されているから警戒しろ。
……ブラックウルフは交代で馬車に休ませながら進まないときつそうだな。」
「ブラックウルフには魔法職もいますし、それが無難でしょう」
「あっはっは、駆け出しの頃は魔法使いに身体強化覚えさせる金ないからねえ。
魔力があればスタミナいらずってのに気付くと必須なんだけどね。
装備に予算いっちゃうよね」
「ベリアさん、装備と言えばなんで
その格好でアックスヘッドの盾役ってのが意味わからないんですが」
「カスミちゃん言うねえ、あたしの盾はこれ。
ナイフ代わりにもなるし受け流しにもなる。
いざとなったら
腰の革製ホルダーのボタンを一瞬で外し両手に手斧を構える。
’カスミちゃん’ という勇者への呼びかけに、たま が反応する。
「その猫、今……気のせいですかね。
移動しているベリアさんの頭でよく眠れるもんですね」
「猫は爪を立てて不安定な場所でも休めるみたいだからね。
カスミちゃんも猫好きなの?」
「いえ、特別猫が好きということは……! ベリアさん、あれ!」
行軍に先行していた偵察係が大慌てで戻って来る。
「敵襲です! 馬に乗った賊が10騎、まっすぐこっちへ向かってきます!」
「
とはいえ進軍中の正規軍を狙うって、勝算があるのか
「ベリア! 油断しないで下さい。
ばらつきがありますが賊と言っても
「あいよ、仕事始めだね! ロッタン、シェギの護衛たのむよ。
遊撃行ってきまーす」
「
重装隊、盾構え! 弓隊は重装隊の後方から曲射用意!」
7騎もの賊が馬上弓を取り出しベリアを狙う。
ベリアは再び手斧を二振り、両手にそれぞれ構えると前傾姿勢になった。
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馬に乗った
地面に飛び降り防御陣形を取る
『
あのメスはどう戦うんだろう?』
メスが左手を鞭のように振ったかと思うと、手斧がまっすぐ馬上の敵に当たる。
右手が空中に文字を描くように
メスが飛び掛かってくる蛇を倒した時と同じだ、覚えてる。
右手の手斧が矢を5本払い打ち、折れ弾ける。
左手を高く上げ背中に手を回したかと思うと、大斧を持ち上げた。
するとメスの左手・肩が一回り大きくなった。
「っらあああ!」
敵へ突進し左手の戦斧をしなるように敵に叩きつけ、馬の頭を裂き騎乗者の腰から左足まで切り裂いた。
先手集中攻撃を防ぎきり反撃で2人撃破、
『
勝敗は決まったようなもんだけど終わるまで落ち着ける所を探そうっと』
居心地のいい場所をキョロキョロと探す。
痩せた鼠と
堅い土が多い地形だったが、陽当たりのいい乾燥した砂場を見つけた。
ここでゆっくり
(やっぱり、
ころしあいはほぼ決着がついているようだけど、敵が4匹ほど逃げ回っている。
流石に馬と歩きだと分が悪いらしい……。
……すやぁ……
…
… 「たま おいでー」
… 「にくきゅうさわらせてー、あはは! ぷにぷにー」
… 「だって宿題しようとすると たま がじゃまするの、ねー?」
… 「おでこ撫でられるの大好きだよね~」
… 「たま ごめんね。 お嫁さんだめだって……」
…
[ ギィンッ ]
聞いた事のない不快な音に眠りを妨げられる。
音のした方を見ると、最後の敵が光る玉に貫かれるのが見えた。
ころしあいは終わったようだ。
馬ってうまいのかな。
_/_/_/_/_/
「
「正確には相手の逃げる先でスキルを発動させるのです、人間は理性で抵抗できますが馬や魔獣などの動物は逃げられなくなりますね」
「へええ、カスミちゃん器用だねえ。
それ使えば狩りめっちゃ楽じゃん、いいなあ。
あ、たま おかえり!」
てしてしと たま が馬の亡骸へ歩いていき、あぐあぐと喰い始める。
猫は[
戦闘の結果で馬が死ぬのは仕方のない事として、訓練し移動に役立つ馬の亡骸を喰らう事に一部が眉を
「あ、なるほど馬肉ってのもありだね。
そう言ってベリアが手斧で馬を解体し始める、
冒険者にとって動物の肉はご
とはいえ敵対者の乗り物の亡骸というだけで打ち捨てる事が多い。
冒険者達が馬を解体する事はあまりない、やはり無意識の抵抗はあるのだろう。
「ブラックウルフのみんな、賊の装備剥がなくていいの?
「ぅみゃ~う」
たま が満足したのか、ベリルの頭の上まで登り
「複雑だが……装備剥ぎをするなら早くしろ。
とっとと野営所まで行くぞ」
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