詩一編

アキヨシフーエ

「麦秋に」

夕暮れの太陽が野辺を照らす時間

わたしたちはほんとうの黄金がなにか知っている


夕焼けの光に包まれて

ランプの魔人乗せ砂漠を飛ぶペルシャの絨毯のように

穂先を揺らして金色の風を送っている麦畑

その風を胸に吸い込めば

かすかに雨の季節の予感

浮き輪のように実った

夏の野菜たち


麦秋よ

秋は二度やってくる

鞄には

干し柿のような姿した

折り畳みの小傘携えて

市場に行けば

梅、桃、プラム、さくらんぼ

すべて水彩の色した果物たち


この明るく溌剌とした秋を背に

わたしたちはいったい幾年を歩んだだろう

早熟な実りの秋よ

お前を背にして

お前を頼りにして


「麦秋に」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る