ⅩⅣ
考えている当事者が現れた事であまりにビックリして身体が動く。同時にガタッ…と椅子が音を立てた。
「さ、さ…佐竹君…!」
名前を呼んで見上げると、朝から爽やかに笑顔でこちらを見る彼。
「お、おはよ…」
「小野井さん、顔赤いですね。体調悪いんですか?今朝も遅かったですし…」
ぐっと顔が近づいて、俺の顔をまじまじと見る。
「だ、大丈夫だよ。軽い二日酔い…だから…」
今までで顔が一番近くて、佐竹君の吐息が聞こえる。こんなにも距離が近いと俺の心の声まで聞こえてしまうんじゃないかと思うほど。
あ…、眼鏡に前髪が掛かってる。
腕を伸ばすと直ぐに、指先に彼の髪の毛が触れた。
思ったよりふわふわで、今日は何時もみたいにセットをしていないらしい。意外とくせ毛なんだな…。可愛い。
「お、小野井さん…?」
佐竹君の声にハッとする。
「…っご!ごめん!」
手を素早く離して顔を逸らす。
(何してんだよ…!俺…!)
自分のした事を思い出して、やってしまったと顔を伏せる。今日が最後なのに…きっと引いてる。むしろ変な奴か気持ち悪い奴って絶対思われている…。
「朝礼始まるんで、失礼しますね」
佐竹君は、俺の隣にある自分のデスクに戻る。
朝礼中チラッと横目に見ても、視線は全く合わない。
(さいっあく…)
あんな事してそんなの当然だ…。
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