神々のお戯れ

月白藤祕

壱.始まりは準備から

とある星のとある場所でのことです。神様たちは集い、語らっていました。それは長い時の中でありきたりなものになっていて、神々は飽きていました。

時には人間の行動を観察して遊んだり、地形をひっくり返して遊んでみたりと語らう以外のことを試してみたり、集う際は何か面白い遊びや話を考えてから、考えうることを色々と試しました。

しかし、それでも間が持たない時があったり、すぐに飽きてしまったりと長続きせず、またすぐに暇になるのでした。やることがなくなってからもう数百年が経ち、神様達はただ語らうことしかできませんでした。


そんなことを何百回と繰り返したある時、とある神様が言いました。


「面白い遊びを思いついたんだけど…」


他の神々は興味津々で耳を傾けました。


「僕らいつも人間を創る時適当に作るだろう?その中に稀に自分好みの人間が混じっているのを見て思ったんだが、自分好みの人間を各々で創って、見せ合いっこしないか?人間の子供達が、人形でそうしているのを見て、とても面白そうに感じたんだ」


他の神々は顔を見合わせ、ある神が言いました。


「とても面白そうな案だが…見せ合いっこした後、どうせ飽きてそのまま人間を捨てるのであればいつもと同じではないだろうか?」


とある神は言います。


「そうだよ、それだけだとね。ここからが面白いところなんだけど、その創ってきた人間の中に入って、人間たちに紛れて生活してみるんだ。いつもは上から眺めている人間の中に紛れるんだぞ。どうだい?ワクワクしてこないか?」


そう言って周りを囲む神々を見渡します。面白そうだと首を縦に振るものや、困惑するものと色々な反応が見られました。


「それは大層興味深いではないか。我は参加することにしよう」


そんな中、最初に参加を表明したのは、神々の頂点に立つ太陽の神でありました。それに続いて雲、風、海、大地、森、炎の神々が手を挙げ、参加するものが決まりました。


それでは、お暇な神々のお戯れのはじまりはじまり。


                   〇


 真っ先に飛び出した風の神は、とある神が言っていたことを思い出していました。


”この遊びに参加する君たちには、守ってほしいルールがいくつかあるんだ。まず一つ目。人間は最初から創ってもいいし、好みの人間が下界にいればその子を使ってもいいよ。但し、本人の許可は絶対にとらなくてはいけないよ。わかったかい?“


風の神は人間の形を創るために、見本となる人間を探して彷徨い、星の隅々まで楽しそうに吹きまわりました。しかし、なかなかそれらしい子が見つかりません。途中で飽きて、空を漂うだけになっていたこともあり、約束の時が迫っていました。


ギリギリで何かそれらしい者を創ることにしようかと考えていると、目下に見える森の奥深くから歌声が聴こえてくるのです。その歌声はとても美しく、少し悲しいが、それでいて温かく感じるものでした。前に来た時、人間は住んでいなかったはずなのにと思いながらも、興味がわいて歌い手を一目見ようと近づいていきました。


森の中は人の手が入っておらず、日中でもほとんど陽が差し込まず、人間が本当にいるのかを疑いたくなるような場所でありました。

 

風はわくわくとドキドキで、少しゆっくりと近づきました。木々を避け、進んだ先にいたのは、大層美しい娘でした。風は一目見て気に入り、この娘にしようと思い、娘に話しかけてみました。


”娘よ、私の声が聞こえるか“


娘は返事をしました。


「はい、とても優しい声が聞こえます」


風は娘の反応に嬉しくなって、


”娘よ!私のものにならぬか”


そう言って娘の手を包みました。娘は大層驚きながらも”はい”と微笑みました。

風の神は娘をただ自分の玩具とするのではなく、意識を残して、本当の娘のようにしようと考えました。


”では娘、目を瞑り其方の体を我に委ねよ“


そうして、娘は目を瞑り、全てを風の神に委ねました。風の神は満足げに儀式を始めようと準備を終えました。すると、ガサガサと大きな音を鳴らしながら近づいてくるものがおりました。姿を現した時その者は、待て!と叫びました。それは娘によく似た少年でありました。


「姉さんに触るな!この化け物!」


風は大変に驚きました。それはこの少年が自分の姿を視認できていることを表すのですから。驚きが嬉しさに変わったときの風の神の顔と言えば、長い付き合いの神々でも見たことがないほどではないでしょうか。それほどまでに嬉しいことだったのです。その傍らで少年は娘に駆け寄り、抱き寄せて、風に向かって言います。


「姉さんを連れていくのなら、僕も一緒に連れていけ!でないと姉さんは渡さない!」


風はその言葉でさらに嬉しくなって、


”それはいい提案だ。よかろう。お前たちはこれから我が子として生きるがいい“


そう言い放つと、双子の姉弟を風が包み込み、二人を宙へと浮かしました。細胞の一つ一つを分解し、包み込む。それは風と一つになれるように。儀式は双子を苦しめるものでありましたが、それが終われば、人間のしがらみから自由に世界中を吹きわたれる存在へと。そして風の神の子供へと変化するのでした。

 

そうして風の神は双子の姉弟を我が子を愛でるように抱きしめ、神々との約束の地へと向かうのでした。


                 〇


 海の神は他の神々と別れてから、とある神が言っていたことを思い出しながら、どうしようかと考えていました。


”次に二つ目。どんな人間でもいいけど、一応共通点があった方がいいと思うから決めておくよ。えっとね、人間でも女子おなごの姿をしていて、白のワンピースってどうかな?ワンピースは好みに合わせて形を変えてくれかまわないからね“


 女子おなごを創るのであればと、大昔に自ら命を海に投げた女を思い浮かべました。何故身を投げたか理由までは分かりませんでしたが、彼女はとても美しかったのです。それに、身を投げて死ぬというのに涙を流しながらも笑っていたのです。その笑顔は美しい彼女に似合っていて、朽ちてしまった今でも、ずっとずっと消えないであり続けるのです。朽ちる姿を見守ることしかできなかったことが、とても苦しくて、悔しいと感じるのでした。


彼女の笑顔をもう1度。


海は創り始めました。彼女の姿を忘れた日はありません。ただ姿を思い浮かべることがとても辛かっただけで。もう二度と見ることが叶わないと考えるだけで、とても苦しかったのです。初めての気持ちに戸惑って、何もできないことが嫌で、そんなことばかり考える自分に嫌気がさして。負の気持ちがループして、いろんなことが嫌になっていたのです。その気持ちが落ち着いてきた今、またそのことについて考えることとなったのでありました。


 海が創り始めた日から海は荒れ狂いました。彼女の笑顔を頭に思い浮かべるだけで、こんなにも心を乱すのかと自分でも驚いていました。それでも彼女にもう1度会いたかった。ただ見守るだけだった過去の自分とは違うのだと、そう言い聞かせて。ああだこうだと慣れないことを一生懸命に行いました。

 

 海が静まる頃、人々は荒れ狂う海に疲れたのか、静まった海に身を投げるものが続出しました。そんな時、誤って海に落ち、奇跡的に助かったある者の噂が広まりました。

”海の中に美しい娘がいて、海の深くへ導くために手を伸ばしてくるのだ”


それは、海の神の仕業でした。海の神が出発するまで続いたその行為は、海の神が創った娘を自慢するものでした。。

 

海はもう一度見たかったあの娘の姿を生み出すことに成功したのです。あとは約束の日までにあの場所へと赴くだけです。海の神はゆっくりと、娘を愛でながら進んでいきました。


                   〇


 山の神は人間の骨を探すことにしました。最初から創るのは難しいので、骨を元にすれば効率よく、早く創れるのではないかと考えたからです。


そこで、山の神が好き好んで住んでいる山に行くことにしました。その山で適当に骨を拾えばいいと考えたのです。


しかし、実際に人間の骨を見比べてみたところ、なかなか好みの骨は見つかりません。何でもいいと考えていましたが、実物を見ると好みがあることに気づいてしまいました。それに遊びといえど、好みをしっかりと反映させてこそ全力でいいものが創れるはずだと、骨選びに力を入れ始めました。

 

しばらくの間、骨探しが続きました。しかし、なかなかにいい骨は見つかりません。たまに良さげな骨を見つけては、試しに自分の一部をくっつけてみるのですが、相性が悪いのか、すぐに崩れてしまいます。山の神はすぐに次の骨を探しに行きます。それを何回も繰り返し続けました。


そんなある日、少し前に若い花嫁が崖から飛び降りたことを思い出した山の神は、その場所に行くことにしました。その子の遺体はすぐに見つかりましたが、至る所が骨折し、かなり腐敗が進んでおりました。山の神は大層困りましたが、今までに見てきたどの骨よりもとても綺麗で、絶対にこの骨で人形を完成させるのだと決意しました。


そのやる気と骨との相性の良さで、骨の修正はすぐに終わりました。しかし、そこからがとても大変なのでありました。崖から飛び降りる前の娘は大層綺麗な娘であり、山の神でさえも惹かれてしまうほどでありました。その美しさを再現しようとすることが、とてつもなく困難でありました。ああでもない、こうでもないと、山の神は頭を捻りました。


そうして、約束の時が迫るほどに時が過ぎた時、山の神が追い求めていたあの美しい娘が再誕したのです。山の神は花嫁と同じように純白のドレスを着せ、頭には純白のベールを被せました。娘は山の神を見るとにこっと笑い、ただただ静かに座っていました。静かに笑う娘を見て、山の神とても喜び、嬉しさのあまり山に生えるすべての草木に花を咲かせました。その時のことは後々、


”山神様の奇跡“


として語り継がれたそうです。

 

山の神は約束の日間近までの時間を使っていたので、すぐさま出立しないと間に合いませんでした。しかしそんな焦りすら感じさせないほど、山の神は嬉しそうに娘を抱え、約束の地へと足軽に向かいました。


                 〇


 炎の神は参加したことを少し悔やみました。それは、自らが触れたものは全て燃えてしまうので、人間を創ろうとすること自体がとても難しいからです。炎だけを使って創ることもできますが、長時間その形を保つことは難しいのです。その時、とある神様がそのことについて言っていたことを思い出しました。


”ああ、それと自分だけで創ろうとしている神がいるならば、この石を使うといいよ。これは創った形を維持するためのものなんだ。人間を使った神でも使えるから気軽に使ってみてね“


そこで一度自らの体から人間の形を創り出してみました。しかし、それは人間の形をしているだけであまりにも醜いものでした。


炎の神はこの失敗から、人間を使って創りたいと考えました。しかし、近づくことさえ叶わないのであれば、どうすればいいのかが分かりませんでした。


ひとまずは、わからないなりに動いてみることにしました。まずは人間の生活を観察し、喋りかけてみることを繰り返します。あとは美しいと思った娘をよく見ようと近づいてみることにしました。しかし、近づいた途端に骨になり、その後は何も残らなくなるのです。炎は綺麗なものの笑顔を近くで見ることは叶わず、泣き叫び苦しむ娘の顔ばかりを目に焼き付ける結果になってしまいました。


そして、わかったことがあります。人間に言葉が通じないこと。火に触れようとするものはいないこと。触れれば、燃えてなくなってしまうこと。人間と関わらないように生きてきたが、それでも何となく、人間と火は相いれないものであることは、わかっていました。ただそれが明確になってしまい、炎は少し寂しくなりました。それでも時間の許す限り悩み続けました。


そんなある日、炎の神は1人の美しい娘に出会いました。その娘は罪を犯したのか、処刑される直前でした。そんな中でも娘は泣き喚くことはありません。磔にされ、炎が彼女の身を包んでも、娘は綺麗でした。娘は炎に包まれながらも神への祈りと人々の幸せを願っていました。そんな娘の心の美しさに、


”美しさとは身目だけではなく、心の美しさのこともいうのではなかろうか“と


目の前で燃えていく少女に決めました。

少女が炎の中にいるのであれば、あれ以上少女を燃やさずに私の中に取り込めばいいと考えました。


”一緒に生きよう“


炎の神は少女を包みながら言いました。少女は


「貴方様がそう仰って下さるならば」


そう言って笑うのでした。初めて言葉の通じた人間は、とても笑顔の美しい、優しい少女でありました。

もう二度と彼女が燃えることのない炎へと。

祈りのような気持ちで神は少女を炎へと変えました。

 

炎の神は急ぎ約束の地へと向かいました。美しき心を持つその娘を皆に見せたくて。


                  〇


とある神の話では、


”じゃあ最後ね。もし人間を取り込む時に人間の記憶が入ってきて、殺した人間が憎く感じても故意に殺してはいけないよ。神が人間の気持ちに感化されることはないと思うけど、一応ね。今回の遊びは人間を創るというだけだからね。別に殺しても問題はないけど、主旨が変わってしまわないようにしておくよ。あ、でもね、自然災害で死んでしまったのならばそれは性がないことだからね。その判断は僕が見ているから好きにして“


 大地の神は約束を契った後、すぐにむかったところがあります。

それは、少し前に亡くなった親子のもとです。大地に横たえたその身に大地の神は寄り添いました。人間同士の争いから逃れるために砂漠に逃げ、後ろから追ってくる兵士から子を守るように力尽きた者です。そんな人間は腐るほど見てきた大地の神にとってこの親子も変わらないはずなのに、この強き母の美しさを大地は覚えているのです。とても不思議なことで、自分でも自らの気持ちが理解できないのでした。


この子らを我が身に宿し、再び大地を歩けるように…そう願って、大地の神は親子を土の奥深くへと沈めました。そして分解し、土へと還しました。親子一緒の方がいいだろと二人の土を混ぜ合わせて、1人の女を創っていきました。


そして新たに創造し、1人の女を生み出した。


親子の土からできた女は、ゆっくりと、でも確かに大地を踏みしめ歩くのでした。大地の神は女の横に並び、親子が生まれ育った町を見て、大きく地を揺らしました。それは、滅多に地震の起こらない地域では珍しい大地震でした。かなりの被害を出したその地震は、後世に伝えらるものになりました。


大地の神は満足げに、女と共に約束の地へと向かうのでした。


                 〇


 雲の神は尊敬する太陽の神が参加するからと手を挙げてしまっただけで、この遊び自体乗り気ではありません。むしろ参加したくなかったのです。雲の神は人間を軽蔑するほどに嫌いであることは、周知の事実でありました。だから例え真似事であっても、人間の姿をしたものが近くにあることが嫌なのです。しかし参加してしまったからには、しっかりとやらねばならないと責任感だけはあるので、気持ちの葛藤は想像に難くないでしょう。


 雲はまず、太陽の神がどんなものを創造するかを知ろうとしました。尊敬する方が創ったものであれば、それが人間であろうと素晴らしいものであるだろうと思ったのです。しかし問題が一つありました。それはとある神の言葉。


”他の神がどんなものを創っているか気になると思うけど、絶対に見に行っちゃだめだからね!それじゃ面白くないでしょ?わかったね、特に雲の君ね“


雲の行動を事前に抑制していたその言葉のせいで、太陽の神には会いに行けないのでした。そこで、今回の遊びに参加しなかった神に頼んで、言葉だけで想像することにしたのでした。見に行った神の話によると、


”それは言葉では表せないほどの美しさだったわ。でも言葉にしろというのならば、そうね。最初に目につくのは髪。風になびいたその長い髪は、光の中で輝いているの。シルクのように白く光沢があって、毛先は太陽様のように真っ赤。それに振り向いた時目が合ったのだけど、燃えるような目に胸を貫かれたわ。そして、最後にニコッと笑って去って行かれたの!死ぬかと思ったわ“


と話を聞き、体が震えるほどの嫉妬と約束の日まで会えないことが悔やまれました。

 

雲は他の神の話を聞きましたが、イメージがあまり出来ませんでした。しかし、太陽様の近くにいてもいいように、美しいものを創り出せばいいのかと気合が入りました。

 

まず雲がしたことといえば、嫌いな人間を観察することでした。太陽の神のことを考えれば、嫌いな人間のことを見るのも苦ではありませんでした。だいたいどんな姿をしているか、中でも美しいと感じるものを中心に見ていました。人間の中にも美しいものがいることが分かった雲は、それらを参考に、自らの分身を生み出すように人間の形を形成していくのでした。

 

それは簡単なように思えて、なかなかに難しいことでありました。そこで雲の神は世界中に散らばっている分身たちを呼び寄せ、渦となり、その中心で人間を形成し始めました。そうすることにより、集中して作業に取り組むことができるからです。


雲が一定の場所に留まり続けたことにより、人間たちの世ではこう言い伝えられました。


”天からの試練“


それはあまりにも長い間続き、ある所では曇りが続きすぎて日照不足で作物が育たず、ある所では日照りが続きすぎて干ばつが起こったことから、人々は神様からの試練なのではないだろうかと考えるようになりました。死者の数は数知れず、星から生物が消えるのではないかと思われたくらいでした。

 

雲の神が納得のいく人間を創りだしたのはかなりの時が経過したときでありました。それは一言でいうと、人間とは思えないほどの美しさを持ちあわせていました。そう、ただ美しいだけといいましょうか、それ以外に何も持ちあわせてはいないのです。究極の美を追求したのであろうことがよくわかります。


それと、時間がかかったのにはもう一つ理由があります。折角だからと、我が子同然の雨、雷、雪の神のために姿を作ってあげていたのでした。三神の姿は、15歳くらいの愛らしい少女の姿でした。

 

雲の神は満足し、約束の地へとわくわくしながら、急ぎ向かうのでした。


                 〇


 太陽の神が今回の遊びに参加したのは、とある神様が提案したからでありました。他の神達が提案したときは、基本的に傍観の立場をとっているので、今回は久しぶりに遊びをなさるのでありました。


 さて、太陽の神はとある神に言われたことを思い出しておりました。

 

”君が行動すると他の神々が必ず注目するだろう。それを頭に入れて行動してね。まぁ、分かっているとは思うけれど。それと君はそろそろ自身の形を決めた方がいいだろうね。良い機会だと思うよ“


これは太陽の神が出発する時に耳打ちされた言葉でした。太陽の神はこの言葉を聞いた時、”いい機会“だって?僕が参加するのが分かって提案したくせに と鼻で笑ったのでした。

 

まず太陽の神がしたことは、自分の姿を創ることでした。とある神が言うのだから、最初にやらねばならないのだろうと思ったからです。自身の姿にあまりこだわりがなかった太陽は、自身を崇める教会にいる修道女達を手本に自分自身を創ることにしました。これが結構あっさりと完成し、その姿は、こだわりがないはずなのに凄く綺麗で、他の神々が噂を聞いて見に来るほどでありました。


次に遊びのための人間創りですが、自身の体のために覗いていた教会の修道女を一目で気に入ったため、その娘にすることにしました。勝手に連れていくことはルール違反であるために、これまた久しぶりにお告げをすることにしたのでありました。


”我は太陽神である。今から発する我の言葉は必ず守らなければいけない。よく聞くがいい人間達。ここ数百年、お前たちの祈りは弱くなってきている。それでは我からの加護は授けられないだろう。そこでお前たちに機会をやる。お前たちの教会にいる黒髪の女子おなごを我に捧げよ。捧げれば、これから数百年は我の加護を約束しよう。捧げなければ、我からの加護はなくなり、この星は消滅するだろう“


 これはある意味脅しです。教会にいるすべての人間の頭に直接語りかけることにで、欲する女の逃げ道をなくしたのでありました。この教会には黒髪の女子おなごは一人しかおりません。神の言葉の後、この女子おなごは有無を言わさずに捧げられました。

 

太陽は祭壇の前で祈りを捧げる少女の前に降り立ち、手を取り言います。


”我と共に来てくれるか“


少女は下を向きながら、涙を堪え、言います。


「太陽神様の御心のままに」


太陽はその少女を抱え、空高く上り、そのまま約束の地へと向かうのでありました。


                  〇


 この遊びを提案したとある神こと、光の神は審判役をしていました。最初は自分が参加しようとしていましたが、神々の頂点に立つ太陽神が参加したことにより、見ている方が面白そうだと審判役を買って出たのでありました。それに光の神ほど審判に向いている神はいないのです。


 ここで光の神の説明を挟みましょう。光の神は本来であれば、太陽神よりも上の神様なので、神々の頂点に立つべき神様なのです。しかし、そういう面倒くさいことは向いてないから太陽やってねとすべて丸投げしたので、太陽神よりも下の神として扱われているのです。


それと、何故審判が向いているかという話ですが、光と闇の神が一つとなって光の神だからです。光と闇のない場所など、どこを探してもないように、星のすべてを見張るのならば適任も適任なのです。


 話を戻しまして、光の神様は、遊びを行っている複数の星の監視をするのが役割でした。審判役だからと生真面目に仕事をするはずもないこの神様は、他の神々が創りだす人間が一番に見られてラッキーと思って、観察を楽しんでいるのでした。


 一番に完成させたのは、大地の神でした。かなり出遅れて出発していたのに、何の迷いまなく完成させたところをみると、何度か創ろうと考えていたのかもしれないなと光の神は、にやにやと大地の神の行動を見ていました。それにその後の地震を起こすところをみると、かなりその女に入れ込んでいることが分かり、光の神はさらに口元を緩めるのでした。


 二番目に終わったのは意外にも太陽の神でした。光の神はもっとかかるだろうと思っていたので、かなり驚いておりました。それに、他の神々は、人間を自分と一体化しているにもかかわらず、人間のまま連れてくるので、若干ルールが変わってないか心配になりました。一応忠告したんだけどなと頭を悩ませながら、集まったときにペナルティをつけることにしました。

 

 三番目に終わったのは海の神でした。あの子も心に決めた子がいたのかと思うほどの速さでありました。しかし、創っている時の被害は尋常ではなく、光の神が思っていたよりもひどかったので、人間の補充を他の神々に急がせたりと大変でありました。

 

 次に風、炎、山と大差なく終わり、この三神は被害が少なくて助かったのでした。かなり悩んでいましたが、それでもしっかりと約束の日までに終えたことを光の神は、感心していたのでした。


 最後に終えたのは雲の神でした。間に合わないのではないかと心配になるくらいに時間を使っていたので、光の神は少しハラハラして待っていました。それに、創っている期間が他の神よりも長かったために、星全土に甚大な被害をもたらし、危うく全ての生き物を消滅するところだったのでした。その背景で、光の神が他の神々を使い、できるだけ被害がでないようにしていました。遊びで壊したものを直すのには、時間がかかるからという理由からでした。


 そんなこんなで神々の制作期間は終わり、審判役というよりは、サポートの役割が大半を占めていましたが、それも終わりました。ただ見ているだけのつもりだったので、どっと疲れた光の神は、約束の地で八つ当たりしてやると意気込んで、向かうのでありました。



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神々のお戯れ 月白藤祕 @himaisan

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