キノコペンション殺人事件

南雲 皋

その1 探偵は無類のキノコ好きである

一木いちき様! 一木様!?」


 二宮にのみやが扉のノブを回すが、どうやらかぎが掛っているらしい。

 管理人の三田さんたがマスターキーを取りにフロントに走る。

 四之山しのやま五味ごみがドンドンと扉を叩くが中から返事はない。


 二人は扉へ体当たりを始めたが、扉はびくともしなかった。


 三田が持ってきたマスターキーでようやく扉が開いたとき、部屋の中には一木の変わり果てた姿があった。一木は何者かによって、刺殺しさつされていたのである。

 私はとっさに窓の鍵を見て、しっかりと閉まっているのを確認した。


 ……密室?


「一木様……!」

「警察を! 現場には誰も立ち入らないように!」


 冷静な五味の言葉に、私たちは全員で食堂へ移動した。

 電話線が切られているということはなく、三田が警察へ通報する。

 しかしここが山奥であるということ、そして悪天候あくてんこうであることなどから到着は遅くなるとのことらしい。


 先ほどまで一緒に食事をしていた男の死体を目の当たりにした私たちは、皆そわそわと落ち着きがない。

 窓ガラスを、大粒の雨と風がガタガタと揺らした。


 私は警察が来るまでの間、心を落ち着けるために今朝からの記憶を辿ることにした。

 とても美味しかったあのキノコの味を、思い出すことに……。

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