　男は一年先まで予定を入れるタイプであった。今日は一月一日。カレンダーをめくっていくと色々と書いてある。

『嫁が行きたがってた植物園(丸一日)』

『何か適当に映画を見たのち、本屋巡り』

『夜桜を見に近所の山へ。(軽く酒も持っていく)』

『嫁が好きな動物園へ。(弁当は俺が作る』

『海水浴場へ。(飯は海の家で)』

『椎茸刈りへ。(採った椎茸焼く)』

『ハロウィンを満喫しに渋谷へ。(仮装道具を一〇月前半で買う)』

『クリスマスイルミネーションを観にどこかへ』

『年越しに合うように早めに家を出て年越しと共の初詣』

　男はカレンダーをちぎり捨てるようにカレンダーを裂いた。そして足元に置いてある新しいカレンダーを貼り付け、一月一日の欄にマジックを走らせる。

『浮気し出ていく。年内に二人とも殺害予定』

　男はタバコをくわえ、疲れたような狂ったような笑みを浮かべながら、火をつける。笑っている男の眼は、ガラス玉のように表情はなかった。

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