愛されたいけど、愛しきれない~将来頭髪がゼロでも愛されたいモテナイくんの恋愛事情~

水木レナ

幼女の予言

「あー、そこの。オーイ、仕事も勉強もできない非モテのアラサー男子」



 えらく目線が上の声が、道端のスミッコからした。


 女性の声なので一応ふりむいた。


 どえらく目線が下の方に、つむじが見えそうなほど、ちびっコな女の子がいた。



 ふわもこの、白いファーのかぶりものをしている。



 親はどこだと首をひねる、ミキオ。二十九歳。モテナイくん。


 先日、コンパで知り合ったイケてる女の子がサクラだったことを知ったばかり。



「オーイ、そこの、近所のおばちゃんが苦手なモテナイくん」



 なおもケンカを売ってくる、そのへんな生きものを見るミキオ。


 じっ。


 言っていることは当たっているけども。



 それはどうみても五歳児の赤ちゃんだったのだ。



「ねぇねぇ。ぜったいにねぇ!」



 ミキオは不良座りして、その赤ん坊の頭に手をやった。


 瞬間、バチィッと電気が走った。



「静電気かよ……」


「よく聞け。実は死ね、と思っている人物が複数いる、モテナイくん」


「……だれだってそうだろ……」


「アンタはこれから良い運気がきて、最良のパートナーを得る。アンタが拒否しようが、問答無用でそのときはくるんだにゃんにゃんだにゃん!」


「最良のパートナー、ね……」



 ……沈思黙考。



「ぜったいにねぇ!」



 否定してほしかったが、もうそこに女の子はいなかった。





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