今は亡き過去を顧みて《柊司秋―過去編―》

メラミ

プロローグ

 『記憶を踏みつけて愛に近づく』


 自分の過去を踏みつけて愛に近づけたらいいと、何度思ったことか。

 ある日、病床に就いていた私は、ぼんやりとカーテンの隙間から入る陽の光を眺めていた。夢から目を覚ますと、昔の懐かしい思い出が沸々と蘇ってきた。


 あの頃は、彼のことが好きだという自分の気持ちが、一度たりとも愛せなかった。

 自分を愛すことが出来なければ他人を好きになれないと、あの頃は塞ぎ込んでいた。


 大人になってから彼と再会し、改めて彼のことが好きだったんだと再認識した出来事もあった。

 その話はいずれまた……。


 私は大人になった時、初めて彼に近づくことが出来た。

 彼の愛に近づくことが出来た。

 大人になった頃の彼の愛についてはいずれまた……。


 彼との最初の出会いは高校時代だった。


 私は高校時代の自分の懐かしい気持ちを踏みつけて、自分の愛に近づく。


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