幸福と敬愛を捧げる

あおみどろ

働き蟻は幸せ者

教室の隅の方の席で本を読んでいる可愛いあの子。


あの子はなんにも出来ない子で、みんなから疎まれている子。


それと同時に、わたしがとっても愛している子。


だってとっても可愛らしいから。


体育の時間はいつもビリよね。わたしが居ない時は。

ソフトボールも、柔道も、サッカーも、バスケも、長距離走も。


勉強だってそう。


証明問題も、読解問題も、実験の時も、自習の時間も。


何も出来ていないけど出来てるふうに取り繕おうとして。


結局出来ていないのにね。


わたしが居ないと全部ビリ。


わたしはあなたに見ていてほしいの。


あなたに愛されたいなんて思ってない。


わたしを見て。


わたしのことだけを見て。


見てほしいからビリになるの。


万年最下位のわたしに助けられてるくせしてわたしを嫌ってるあの子が好きなの。


点数にされたら、どう頑張ったって自分は劣ってるんだって気持ちになるでしょ?


でもね?


わたしが居れば、わたしが下に居れば、あなたは少し救われるのよ。


早まる鼓動を抑えながら、恐る恐るあなたに話しかけたわたしに、あなたは「来ないで」って。


わたしを嫌って、それでいてわたしをしっかりと見ているその瞳の虜になってしまったの。


大してわたしと変わらないのに、逃避して区別してしまう愚かなところも大好きよ。


あなたのためだけに行動していたら、成績がどんどん下がっていった。下げざるを得なかった。


急に成績不振になってしまったから、お父様はがっかりしていたけれど、そんなのどうでもいいわ。


わたしは、成績上位から落ちぶれた可哀想な子。


あなたは、どんなに努力しても報われない可哀想な子。


あなたの不幸は、全部肩代わりしてあげる。


これから、どこに行っても。


何をしていても。


わたしはあなたを愛している。


わたしがあなたを守ってあげる。


全ては、大好きなあなたのために。

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