第39話 販売開始!

商会に殺到する人々。

どうやらメロンパンが目当てらしいが

オレが数日、城にいる間に何が起きたんだ??

とりあえず正面からは無理そうなので裏口から入ることにした。


商会の中はごった返している。

カレン、シオン、ウルみんなで対応していたが人の波が穏やかになる様子はまるでない。

とりあえず話を聞くべくショーニさんを探し、執務室で職員たちと侃々諤々と話をしているのを見つける。


「どうしたんですか?ショーニさん、あの人だかりは??」


「おお、コムギさん!!おまちしてましたよ!!まさに天の助け!!」


「なんで売ってもないメロンパンで騒ぎになってるんですか??」


「それが、あの場にいた貴族の誰かがうちの商会に抜け駆けして買おうとしたのがきっかけらしく、さらに飛び火してあちこちの貴族がメロンパンを手に入れるべく競争が始まったようで。中には手に入れたら褒美を出す、なんて話にまでなっているらしいのです」


そりゃ人が殺到するわけだ。

いやあしかしメロンパン、そんなに貴族たちに人気なのか。

嬉しくなるな!まあその反面、なんだか申し訳ない気持ちになるけど。

、、よし!本格的に仕掛けるなら今がいいだろうな!


「じゃあショーニさん。

オレも王様の依頼が終わったし、そろそろ計画通り、やりますか?」


「はい、お願いいたします。

ついにですね!

年甲斐もなくドキドキしてきましたよ!!」


というわけで明後日からメロンパンの販売開始だ。

市民向けには貴族たちが食べたのより一回り小さく、その代わり買いやすい値段で販売することに決めた。そして売るのは商会の外に作った専用スペース。

いわゆる店頭販売でしっかり呼び込みながら売るのだ!

店頭販売なんてお祭りみたいだから楽しみだな。


「ウル、ちょっといいか?」


「あっ!店長!!

お待ちしてましたよ、ついにやりますか?」


「明後日からの予定だから、しっかり準備手伝ってよ?」


「もちろんです!

任せてください、いくらでもやりますよ!!

楽しみだなあ!!!」


まるで遠足を楽しみにする子供みたいなテンションで期待するウル。

そんな彼を見ると、初対面の時に出していたクールな一匹狼な雰囲気はどこへやら。

まさかこれが素なのか??と思ってしまう。

いぶかしんでウルを見ていたら怪訝そうな顔をされる。

「どうしました?」

「なんでもない、さっ準備に取りかかるぞ」



夜通しの準備をして明後日。

ついに販売開始の日を迎えた。

あわただし店頭販売のためにいろいろセッティングをしていたら「よっ、やってるな??」と気楽そうな声を掛けられる。


白シャツに黒のパンツ、赤いストールを羽織るシンプルでラフな服装だがどれもが上質な物だとわかる、まるでプライベートのスターみたいな若い金髪碧眼のお兄ちゃんだ。

一体誰だ??

こんな知り合いいないぞ。


「ん、、?ああ、もしかしてこの姿だからわからないか?

俺様だ」


「あぁ!?」

(本当に出歩くんですね、大丈夫なんですか?)小声で耳打ちする。


「大丈夫だ。少しの時間だけだし、ショーニからの連絡を受けて気になったからな。

まあ体よく言えば視察だな。」


「わざわざありがとうございます、でも贔屓はしませんよ。

列には並んでくださいね」


とすでに長い行列になっている最後尾らしき方を指差す。しかし苦にするわけでなく「じゃ行ってくる」と素直に応じる王様。

みんなびっくりするだろうな、王様が並んでメロンパン買うんだから。



さて、準備も出来たし。

じゃ始めますか!


「お待たせしました!

ベーカリー・コムギの出張販売、『メロンパン』いまから販売開始でーす!」


オレのその声にダアッとみんながどんどん我先にと列を成していく。すごい人気だな、これは、、。


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