41. カゲアソビ
「なに、消息が途絶えただと‼」
「はい、今も捜索中ですが。多分ですが可能性をよろしいでしょうか?」
「....なんだい?」
「はい、多分ですが敵と間違えられたんじゃないでしょうか?」
「そんな訳....いや、それはある。おおいにある。忌助くんはそういう所がちょっと抜けてるからあり得る」
「はぁ」
「あぁ、ごめんね。また別部隊を向かわせてほしい。その時にこの人も連れていってくれ」
「この方は?」
「忌助くんのお世話係の人。
「かしこまりました。そのように進めさせていただきます」
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
これは鬼の血だよな。
これで人を鬼に変えられるって事でいいんだよな。
「どうする? 朱音。試すか?」
「いやっス。何かわかんないけど失敗しそうっス」
「わかった。この血で鬼の子になったから気配がおかしかったのか」
あの鬼のような人のような気配はこれのせいだったのか。
「なら鬼の鬼能だけを移す呪札って作れるか、ながつき」
「時間をくれればどうにかするけど....?」
「[複製]で手に入れた[
「なるほど、その方法があったか。わかった、作ってみる」
そう言って、呪札の製作にはいったながつき。
後は、ここに来た敵を片っ端から倒すのが自分の仕事だ。
「鈴と朱音は先に休息してていいよ。自分が周りの警戒をしとくから」
「ありがとう」
「ありがとうっス」
二人は木に寄っ掛かるようにして眠りについていく。
さて、呪札がどのくらいで完成させれるかが問題だ。
流石に一週間は待てないから、それよりも早く完成させてほしいところだ。
さて、自分は手に入れた鬼能の練習でもするか。
「[
自分の影から木の影へ、木の影から他の木の影へ移動する。
「次だ。こい、夜叉丸。
無数の刃の影からいくつもの刃が飛び出していき、飛び出しては影に入り飛び出しては影に入りを繰り返している。
「よし、これは使えるな。次、星の力
影を移動させて木の枝を影の上に乗せる。
その影と自分の乗っている影との場所を入れ替える。
それだけで、木の枝は無数の刃に囲まれた状態だ。
こんな感じでいいかな?
考えても中々新しい技は思いつかないし、少しは応用できてるかな?
「[影遊び] 頭の置物」
ふざけて影の中から顔だけをだす。
....暇だ。
いや、やることが無い訳ではない。
例えば周りの警戒だったりとか、ながつきの様子を見に行ったりだとか。
そう、やろうと思えば色々とできる....ん?
夜叉丸、これってまた変な気配だよな。
『そうだね。そしてその中に一人だけ人間がいる』
先制攻撃を仕掛けるべきだよね?
『そのまま行ったら? いい脅しになると思うよ』
夜叉丸の意見に賛成した自分は、顔だけだした状態で林の中をヌルヌルと抜けていく。
そして、数十分して、
「おい、一人が近づいてきてるぞ」
「本当だ。でもどこなんだ? 見当たらないぞ」
「でも大丈夫だろ。この一人がいれば攻撃してこないって話だし」
「そうだよな。少し警戒して進もう」
ふむ、敵は七人でその中の一人が人間って事....か?
なんで
もしかして拐われて人質って事なのか。
今助けるからね、油葉根さん。
「[影遊び] 影奈落」
六人の影と自分の影を繋げて、一瞬で底無しの穴に替える。
「大丈夫、油葉根さん」
「お久しぶりです、忌助さま。今のは忌助さまですか? 凄い技でしたね」
「うん、そうだよ。油葉根さんが捕まって人質に獲られてるように見えたから問答無用で奈落に落としたの」
もし、今の自分を見たら犬が「もっと褒めて」と尻尾を振っているように見えただろう。
「忌助さま。大変申し上げにくいのですが、今の方たちは一応味方? です」
「そうなの? 味方なの? っていうかなんで疑問系?」
「先ずは説明させていただきます。その前にお仲間は....」
「あっ、そうだった。ついてきて」
(仲間って言うか味方って意味だったのですが、まぁいっか)
鈴と朱音を起こしてからながつきの所に行き、
「なんでこんな家? 小屋が建ってるんだ」
「おう、忌助。いや色々な道具をこの中にあるし、ここには結界が簡易だけど張られてるから」
「なるほど、じゃあここを話の場に使うね」
そう言ってから、待っててもらってる油葉根さんたちの所に向かう。
「なんであんなに嬉しそうなんだ? なんか幻覚で物凄い勢いで振られてる尻尾が見えてきた。疲れてるんだな、うん」
そんな、ながつきの独り言は風に消えていった。
「油葉根さん、鈴、朱音、こっちで話そう。ながつきが小屋を建ててたから」
「えっ、小屋」
「私たち外で寝てたっていうのにっスか」
「う、うん。なんでも道具が揃うとか」
鈴と朱音を宥めながら、小屋へと向かっていく。
そして、
「さっきってこんなに広かったっけ?」
「ん? 広い方にしたんだ」
ながつきが広い方って言っている。
呪札ってそんなに有用なの?
てかながつきって毎回思うけど凄い天才なんじゃ....。
「で、話の場って事は大事な....油葉根、さん、でしたっけ?」
「お久しぶりです、
「なんで油葉根さんがこんなところに?」
「それを今から皆さまにお話するところです」
「なるほど」
そう言いながらながつきは、お茶をだして話を聞く体勢になった。
「では、お話させていただきます。まずは今の学校の状況から、学校では鬼がいなくなっていたので生徒たちの安否の確認の上、鬼の子化を開始しました。成功率は十割で未だに失敗はしてませんでした」
「その鬼の子化ってこれの事?」
自分は懐から血の入った注射器を取り出すと、油葉根さんはそれを見てコクリと頷いた。
「その後に忌助さまたちの捜索が始まり、一つの小隊が行方不明になったので、その場所に来た次第です」
「それじゃあ今の学校の指揮をとってるのは誰?」
鈴の質問に少し考えている油葉根さん。
もしかして、いや、もしかしなくても、
「
「お父さんが、そっか。そうだよね」
「それでこれが、皆さまの鬼の子化の物です」
油葉根さんが大事そうに取り出したそれは、一つづつ名前が書かれていた。
けど、
「俺と鈴は間に合ってるんだよな。それに朱音はそれが嫌みたいだし」
「間に合ってるとはどういう事で?」
ながつきは包帯を外しながら呟く。
「
そうすると血がみるみる刀に姿を変えていく。
「これが月さまの。なら鈴さまも」
「うん。来て、時雨」
鈴の手に一振りの細い刀が現れる。
「これが鈴さまのですか。ですがどうやって。いえ、聞かないでおきます」
「それで今、朱音に鬼能を渡すためにながつきが準備をしているんだ」
「なるほど。それでは最後に、玖郎さまは何を考えているのかよくわかりません。なので戻るべきではないかと」
「わかった。でも聞かなきゃいけないことがいくつかあるから行くよ。それに鈴も会いたいだろうしね。だからついてきてね、油葉根さん」
「かしこまりました」
「皆もそれでいい?」
皆すぐに頷き返してくれた。
「ながつき、後どのくらいだ?」
「あぁ、後少しだ。一時間、いや三十分で終わらせる」
それだけ言うとながつきは包帯を外して血で呪札を書き始める。
※
どのくらい時間が過ぎただろうか、いや、二十分経った。
「一時間から三十分に変えといて二十分で完成させるって」
凄すぎて苦笑いが漏れてしまう。
「別にいいだろ? 完成って感じよりも後は依り代が必要だ」
「それはアレか? 鬼能を手に入れる為に鬼の名前が必要って事か」
「あぁ、それであってる」
「よし、じゃあ捕ってくるから」
小屋の外に出て感覚を研ぎ澄ます。
鬼の気配を探り、探り....。
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