33. デスゲーム


 「さて、楓くん、袈瑠羅かるらくん。情報では今日が百鬼夜行ひゃっきやこうの日、らしいんだ。だから君たちには一ノ瀬暮夜の回収に行ってもらいたい」


 「明日が百鬼夜行ですか」


 「そうなんだよ。どこでどうそんなに生け贄を集めたのやら」


 「それと袈瑠羅くん、君にはもう1つお願いしたいことがあるんだ」


 「なんなりとお申し付けください」


 「うん、忌助くんに、いや、夜叉丸くんにあの事を伝えてほしいんだ」


 「あの事、ですか。ですがよろしいんですか?」


 「あぁ、問題ない。2人とも、頼んだよ」


 「「はい」」



 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



 一ノ瀬暮夜の班は問題なく全員殺人兎を討伐した。


 そして 班 対 班 の第三試練が始まる訳だが、組分けを発表された。

 一週間後から始まる初戦は自分たちの班と、なんの因果か一ノ瀬暮夜の班と戦う事になった。


 霊結晶がどんな物かわからないし、会場もどこだかわかないから、恐怖はないが、暮夜が鬼だとかんがえると怖いという気持ちがある。

 この怖いは仲間を殺されかねない怖いであって、あんなヤツに恐怖は一切合切ない。



 ※



 それから一週間、授業を受けて、《決闘》を受けて普通に問題もなく過ごしていた。

 そして迎えた第三試練当日。


 暮夜からの殺気を送られているが、普通に無視をする。

 それに怒ったのか、



「愛六忌助、君は必ず殺してやる」



 うっわ、殺気を抑えることなく物騒な事を口走る。



「暮夜に自分を殺せるとは思わないけど?」


「ふんっ。言っていろ。君だけが特別じゃないんだ」



「第三試練、第一試合を開始する」



 その言葉で、自分たちと暮夜たちは転移する。



「こんなに霧が....」


「いや、この霧は異様だ。多分だけど暮夜の鬼能だよ、ながつき」


「マジか、暮夜が鬼で鬼の子か鬼人かどっちだろう?」


「わからない、けどここで待っていてほしい。多分暮夜も一人で来ると思うから」



 何となくだけどそう思う。

 理由なんて物は特にないがそうだろう。



「わかった、俺たちはここで待っている」


「頼む。鈴と朱音もごめんな」


「うんん。でも本当に一人で大丈夫なの?」


「うん、心配してくれてありがと、鈴」


「いや、忌助くんが死んだら次は絶対に私たちじゃん?」


「あっ、うん」



 そういうことなのね。

 まぁ、負けるわけにはいかないのは変わらないけど。




 ――――――――――――――――――――――――――――――

 ※     ~一ノ瀬いちのせ暮夜くれや視点~



「霧の世界」



 これで相手は無闇矢鱈と動く事はないだろう。



「さて、お前たちはここで待機しててくれ。いいね?」


「なぜか伺っても?」



 なんでこんなに目障りになってしまったんだ。

 やっぱり護衛なんて向いてないんじゃないかな、奈之丞なのすけ



「うん、だまれ? 縛霧」


「なっ。なぜだ、暮夜」


「暮夜さま、だろ? さ、ま。連鎖霧」


「ぐっ。離せ」



 これで奈之丞は玉子状態の霧に閉じ込められて、将人は鎖で動けなくなっている。

 後は、



「君たちだけだね」


「どうしちゃったんだよ、暮夜さま。最近様子が変だよ?」


「お姉ちゃんの言う通りだよ。暮夜さま、元に戻ってよ」



 やっぱりこの二人も目障りなのか。

 残念、残念。



「さて、残念だけど君たちもここでお留守番しててほしいんだ。いいね?」


「「は、はい」」



 うん、素直でいい。



「ぐっ」


「大丈夫ですか、暮夜さま」



 暮夜は膝をつき、南は心配して近づいてくる。



『その女を犯したいだろ。首を斬り落として弟の方の絶望する顔を見るのもいいかもな?』



「あぁ。それがいい」


「暮夜、さま?」


百鬼ひゃっき界霊術‼」



 暮夜と南を囲むように結界が、特殊な結界が出来上がっていく。

 見た目はなんの変哲もない結界だが、



「お姉ちゃん、ぐはッ」



 入ろうとした志北しほくは肌が焼けるような痛みで飛び退いた。



「余興だ、志北。そこで見ていろ‼」



 さて、まずはどうするか?


『その忌まわしき服を破け、そして犯すんだ』



 暮夜は声に従うように南の服を破き剥いでいく。



「く、暮夜さま?」


「黙っていろ」



 首を締め付けるように押さえ込む。

 爪が首にめり込んでいき血が流れでる。


 その血を暮夜は犬のように舐める。



「イヤ、イヤ、イヤ」


「お姉ちゃんを離すんだ‼」



「チッ。やめだ、やめ。お前はそこで寝ていろ。夢霧むむへの道しるべ」



 仲間たち、否、ただの人間たちを眠りにつかせる暮夜。

 そして、



「案外はやいんだなッ」



 そのまま暮夜は霧の中へと消えていく。




 ――――――――――――――――――――――――――――――

※     ~愛六あいろく忌助きすけ視点~


 第三試練会場の森の中。

 さっきまで明るかった空が、黒く染まり、でも明るいという摩訶不思議な状態のこの場所。

 そして、



「来たな、暮夜」


「あぁ、お前も来たようだな。愛六忌助。それと暮夜さまだ。さ、まをつけろ」



 欲望剥き出しで鬼の霊力が漏れだしている。



「暮夜、お前は鬼人なのか? それとも、もう鬼の子なのか?」


「はぁ、さまをそんなにつけたくないのか。まぁいいけど。それと僕は鬼の子でも鬼人でもない。でもそうだね。言うなら鬼の神と書いて鬼神きじん、かな?」



『許さない』


 夜叉丸、なのか?


『殺す』


 どうしたんだよ、夜叉丸。


『鬼神はただ一人の存在だけだ』


 夜叉丸、なにを言って、



「ふんっ、霊力がただ漏れじゃないか? そんなんでよく鬼の子って言えたもんだな」



 なにを言ってるんだ、暮夜は?

 暮夜だって霊力がただ漏れなのに....。



「さぁ、始めようか。死の遊戯を」


「こい、夜叉丸」


霧具羅むぐら



 自分の手には赤と青が入り交じる刀、夜叉丸が。

 暮夜の手には白で統一された一振りの刀が握られている。



「紅蓮流剣術炎の型 昇炎華」



 手始めに様子見として簡単な技を仕掛ける。

 昇炎華は暮夜の手に当たり爆ぜた。

 が、



「甘いね」



 その言葉の通り、暮夜の手は瞬く間に元の姿に戻った。



「次はこっちから、霧隠れ 魔境」



『気をつけろ、相手の気配がそこらじゅうにいるから惑わされるな』


 大丈夫なのか?


『あぁ。なんか昔の記憶を思いだしかけた』



 なんか技を、



『星の力』


「暮夜に無くて自分にあるもの。双子座ジェミニ 双星の奇跡。星の力双子座ジェミニ 蜃気楼しんきろう


「死ね」



 後ろに現れた暮夜に首を斬られて自分は、



「少し遅かったよ、暮夜。星の力双子座ジェミニ ポルックスの赤雪レッドアウト



 霧を利用して雪を、赤い雪を降らせる。


 その赤い雪を吸い込んでしまった暮夜は体内から凍てつかせ、肺や血管を傷つけ、血を吸収した氷は更に冷たく固く頑丈になり体内を傷つける。

 だが、



「そう簡単にはいかせないよ?」


「お前は、袈瑠羅かるら


「そう、正解だよー。凄いね。そして私が楓だよ」


「なぜお前らが」



 流石にまだ自分の力ではどっちの鬼にも勝てない。

 星の力を使ったとしても勝てるか。



「だからって逃げるわけにはいかない」


「そうか、そうさ、そうだよね。戦うよね、もちろん。楓、そいつを茨木童子さまの所に」


「うん、いいけど遊びすぎて殺さないようにね。怒られるじゃすまないから」



 茨木童子が自分の事を殺さない?

 どういうことなんだ。



「こんなのが鬼の王だなんてね」



 楓は暮夜を担ぎ上げて行ってしまう。

 でも今は、袈瑠羅が言った言葉の方が気になってしまう。



「気になって気になってしょうがないようだね? でもね、どうしようかな、ね、夜叉丸」


「なんで夜叉丸なんだ」


「君は黙ってて」



 その言葉が合図かのように自分の体は物凄い速さで地面から離れていく。

 いや、空に浮かされてると言った方が正しいかもしれない。



『忌助、身体鬼化だ』 


 わ、わかった。



「星の力、解除。〔身体鬼化霊術〕、発動」



 体がミシミシ音をたてながら肉が、骨が、爪が、牙が強くなっていき、額から角がはえる。


ハズゴーーーンッ。


 盛大でどこか歪な音をたてて、自分は地面に激突した。



「ふーん、まだ生きているんだ。でもまだ動けないよね。だから黙って聞いててね。夜叉丸、君は赤鬼の神楽かぐらさまの子供なんだよ。記憶がないのもそういう関係なの」



 夜叉丸が神楽の子?

 そもそも神楽って誰なんだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る