ゲームキャラで未来の日本に転生、過去の日本は滅んでいた!?

市民チコリ

第1話

            転移したらそこは未来の日本であった。

 

 車や人の声で一人の人物が物陰から目を覚ます。

「ここは…… 確か俺は部屋で寝ていたよな?」

 何時の間に外で寝てしまったのかと首を傾げながら薄暗い細い道を歩いて人が行き交っている場所に向かって歩く。

 歩道に出た赤崎 堂真は自分が出てきた場所を見るとビルとビルの間の隙間で人一人が通れるほどの隙間であった。

「う~ん。記憶が無くなるまで飲んだかな?」

 腕を組んで首を傾げる。

 まぁ家に戻ろうと周りを見ると、日本であって日本で無い場所がそこにあった。

 車道を走る車は皆タイヤが付いて無いのに走っていて、バス亭に止まるバスには運転手が乗っていない。

 だが、車道の看板を見ると東京と書かれている。

「んん!?」

 頭の中が混乱する。

 歩道を歩く人は黒髪以外の明るい髪の外国人が多く、黒目黒髪の日本特有の人があまり見当たらない。

 しばらくその場で腕を組んで考えていると、女性の声が後ろから聞こえる。

「どうかしましたか? 何かお悩みでも?」

 堂真は振り向くと高校生ぐらいの金髪のツインテールをした女性が話しかけてくる。

 可愛らしい容姿であるが、どこか我が強そうな印象を受ける。

「あぁ、すいません。一つ聞きたいのですが、ここって日本ですよね?」

 不審者と思われるかもしれないが、ここは聞く以外に方法は無いと思い思い切って聞いてみる。

「突然何を? 此処はあなたの言っている日本ですが…… 正確には日本帝国ですよ?」

 堂真から見ると可愛らしい外国人に話しかけられた気持ちである。

「飲み過ぎたのかな? 記憶が少し曖昧になってしまいまして」

「えっ、成人しているのですか? てっきり同い年の方かと思っていました」

「ん?」

 もう30手前でさすがに童顔と言われた堂真であったが、未成年に見える年では無い。不思議に思いながらポケットの中にあるスマホを探し、時間を見ようとスマホを手に取ると、明らかに見慣れた自分であるが、生身の姿じゃない事にむせかえる。

「ゴホ! ゴホ! なんだと」

 そう見慣れた姿はゲームのキャラクターにそっくりと言う事であった。

「だだ、大丈夫ですか!?」

 この時、持っていたスマホを地面に落す。幸い画面割れ等起こしてはいない。金髪の女性が拾ってくれたが、彼女は元からパッチリとしていた目をしているが、更に見開き赤い瞳が軽く揺れている。

「こっ、この携帯は何処で手に入れたのですか!?」

 突如グイグイとくる彼女に戸惑いを隠せない。

「えぇ!? いきなり何!? 何処にでも売っている携帯だろ?」

 堂真は先月に新発売の携帯に機種変したばかりである。違う世界に飛ばされている事に半信半疑なので堂真はぽろりと言葉を漏らす。

「先月? 最近出た携帯はこういった物ですよ? あなたが持っている物は古代の産物ですよ? あぁ言い忘れていました。私の名前は華右京(はなうきょう)京花(きょうか)と言います。 爵位は公爵家です。と言っても普通に話していただいて大丈夫です」

 名前は日本人だと思えるが、家名では無く公爵と言う単語が引っかかる。そもそも日本に外国の様な貴族階級は無い事に。

 そして見た事も無いSFなので出てきそうな近未来の携帯に、堂真の視線は注がれる。

「公爵家? 貴族と言う事か?」

 誠は周囲を見るが騎士と言うか護衛の様な人は見えない。例えこの世界の日本に貴族階級があっても護衛は居るだろう推測したが、そう言った人物が見えない事に、この少女の妄想を言っているのか不思議に思う。

「あぁ! その顔は信用していないですね!」

 プンプンと京花は怒り始める表情は美人だからか、怒っていても可愛いと思える。

「いや、信用をしていない事では無い。俺の名前は赤崎(あかざき)堂真(どうま)だ」

「本当ですか? それは良いとして、何故堂真さんはそのアイテムを持っているの? 今の時代でそれだけ良い状態であればかなりの財産になりますよ?」

 堂真は真実を話すべきか、どうするか悩む。

 これだけの話で確定している事は、堂真が住んでいた時代はすでに古代文明扱いで、かなり進んだ未来に来たと言う事だ。転移したなどと言えば、痛い目で見られ何処かの施設に入れられるか、尋問のような事になる事は間違いない。

 と言う事は記憶欠落など言ってごまかすのが一番良いだろうと思った。

「そうなのか? すまないがこれはあげられない。と言っても俺の記憶がどうもおかしいみたいだな。周りを見ても見た事が無い物が多いが、知っている物もあると言う事は記憶が欠落しているのか……」

「それは大変!」

 京花は口元を抑えて驚いている。これだけで信用してしまう程に単純なのか、純粋なのかわからないが、ひとまず安心する。だが、気がつかれるのも時間の問題だと思う。

 この世界の事を何も知らないと言う点に関しては記憶欠落として何とかなるが、2018年までの記憶が残っているし持ち物が証拠になる可能性がある。なんせ携帯を京花に見られてしまっている。

 まぁ、彼女なら口止めをしなくても憶測で他人に漏らす事は無いだろうと思いたい。京花は今も携帯が欲しいのか色々と触っている。

「それにしても今日は暑いな。何処か自動販売機はないかい?」

 堂真は黒いシャツに黒いズボンとゲームの中のアバターを着ている。

 ゲームの中だとオシャレをする者が多いが堂真は派手な格好はしていない。

「自動販売機ですか? それなら案内しますよ」

「すまない」

 一カ所曲がった路地に自動販売機があり長方形型ではなく上部が円形になっている。

 と言っても見た感じ使い方は同じだったので、普通に財布を取り出して小銭を入れようとするが入れる場所が見当たらない。

「ん? 金を入れる場所は……」

「ちょちょ! ちょっとその硬貨見せてください!」

 食い入るように京花が堂真の硬貨を奪い取る。

 やってしまったと堂真は後悔する。

 100円玉を取り出してしまったのだ。この世界では100円や500円と言う感覚は無く異世界の様な銀貨や金貨と言った硬貨のやり取りがメインであるが、電子機能等は現代日本より発達していて、お金は基本電子マネーが基本のやり取りが多く、自動販売機なども携帯からの引き落としとなるため、硬貨を入れる場所がないのだ。

「平成って…… あなたは……」

 もはや言い逃れは無理だろうと思った堂真は京花だけには話した方が良いのではないかと感じた。

 どのみちこの世界で自分が持っているお金が使えないと言う事は無一文である。

 それに戻る家も無いと判断できる。

「あぁ。わからないが俺は未来にタイムスリップをしたみたいだ。元は2018年の世界で暮らしていた」

 京花はごくりと生唾を飲み込んだのか、喉が動く。

「堂真さん。この話は別の場所でしましょう。ついて来てください」

 京花の後ろを堂真はついて行く。

 近くの高層ビルに入って行くと、ビルの受付をしている女性が慌てて京花の元にやって来る。

「これは京花様、本日はどの様な用事で?」

「突然すいません。何処か空いている会議室を使いたいのですが、空いている場所はありますか?」

「会議室ですか? 少しお待ちください」

 受付カウンターに戻った女性は何処かに連絡を取り合っている。

「京花様、お部屋の方が空いているので、もうしばらくお待ちください。案内人が来ますので」 

 待っているあいだに近くのソファーに座って待っていると、ビルで働いているサラリーマンと思われる人達は黒いスーツをきっちりと着こなして、ロビー内を忙しく歩いているのを眺めている。

 この光景だけを見ると本当は未来に来ていないのではと思うが、ロビーに設置されているテレビでは帝国歴3812とアナウンサーが話しているのが聞こえる。 

「京花様、お待たせしました」

 テレビに夢中で見ていると、堂真は突然の声にビクリと震えあがる。

 できる秘書と言った感じの女性が二人の前に立っている。

「どうもすいません」

 京花が頭を下げる。

「京花様の為ならば時間など幾らでも使いますよ」

 そして秘書の後ろを二人は着いていく。

 そしてエレベーターの中に入ると、行きたい階層をボタンではなくタッチ画面式になっている。

 40階の画面をタッチすると、扉が閉まりドンドン上に上がって行く。

 そして、40階に着くと書類を持った人達が忙しく働いている。

 その中を案内役が歩くと従業員は左右に道を譲る。 

 ビルの中でも権力者と言う事がわかるほどである。

 案内された部屋は黒色のソファーがテーブルを挟んで置いてある。

 京花と堂真は対面に座り、女性がお茶を運んできて部屋を退室する。

 部屋の中は静まりかえり、堂真は何から話せば良いのかと考えていると、京花の方から話を切り出した。

「堂真さんは本当に過去からやって来た事は信じがたい事ですが、何か確認出来る物はありますか?」

 京花は遠まわしに堂真の持ち物を見たいだけである。

「証拠か…… カード類は持っていないからな」

 財布の中身をじゃらじゃら出していく。

 課金するために10万程のお札と小銭が数百円である。

 出てくる小銭に興味津々である。

 一円玉から500円玉、そしてお札とマジマジと見つめながら手で触って、さわり心地を確かめている。

  そんなお金に夢中の中、携帯を開くと写真に年号と日付が記されていた事に気がつき京花に見せる。



  

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