ふたつの宇宙(せかい)

三富士 三二

第1話 プロローグ

 -ある星空の見える丘にて-


 美しい星が夜空を埋め尽くす中、満天の星空の下で彼女は語りかけてきた。

「ねえ...星空かなたはさ、もしもこの先、地球外生命体が攻めてきたらどうする?」

 最初は、急になにを言い出すのかと焦ったが、すぐに冗談だろうと思いこう返した。

「俺は軍学校の人間だ。協商国民が危険にさらされるのなら、俺はその地球外生命体とやらと戦う事になるだろうな」

 答えを聞いた途端彼女は俯き、なにか決心したように顔をあげた。だがその顔は少し悲しそうな顔だった。

「私、星空に伝えたいことがあるの」

「なんだ、相談とかなら聞くぞ」

 と言ったものの星空本人にできることなど限られているのだが。

「あのね...私、ずっと星空のことが、す、好きだったの」

 この告白に星空は動揺を隠しきれないでいた、しかし。

「だからね、国を、軍を、捨てて私と来て。遠いところに行こうよ」

 彼女は目に涙を浮かべながら今にも消えそうな笑顔をこちらに向けていた。おそらく彼女も星空がどう答えるか察しがついてるのだろう。

「すまない。気持ちは嬉しい、俺もお前のことが好きだ。だがな俺にはやらなくちゃならないことがあるんだ、すまない」

 その答えを聞いて彼女は「そう」とだけ答えるとそのまま星空を置いて森の方へと歩んで行った。

 その日を境に彼女の姿を見ることはなくなってしまった。今、思えばあれが最初の恋だった。

 10年たった今でも彼女のことを思い出す。

「元気してるのかなエマのやつ」

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