※番外編 『愛の秘密』を解説しちゃうぞ!

誠「はい! 皆さんこんにちは! いつもご愛読ありがとうございます!」

美奈「ありがとね~!」

 笑顔で手を振る美奈ちゃん。


誠「このコーナーでは『愛の秘密』を解説しちゃうぞ!」

美奈「しちゃうぞ!」

誠「本編ストーリーとは関係ないので飛ばしてOKです!」

美奈「で~す!」

誠「そもそも『愛の秘密』って言い出したのは美奈ちゃんだよね?」

美奈「そうデ~ス!」

誠「なら、美奈ちゃん解説よろしく!」

美奈「……。嫌よ、面倒くさい」


 やる気なさそうに膨れる美奈ちゃん。


誠「え!? ちょ、ちょっと美奈ちゃん……」

美奈「私、解説とかそういうの性に合わないの」

誠「え? じゃ、なんでここにいるの?」

美奈「知らないわよ! 作者の都合じゃないの?」

誠「……」


一旦CMに入ります……


~ 打ち合わせ中 ~

誠「ちょっと、段取り通りお願いしますよ、姫!」

美奈「え~、誠さんがちゃっちゃとやっちゃってよ、私、これから予定があるのよ」

誠「……。いやもう、お客さん来てるんだよ。ちゃんと盛り上げてよ。ショコラ買ってあげるからさぁ」

美奈「ショコラ? 1100円の?」

誠「そうそう、それそれ」


 人差し指をあごに当て、ちょっと考える美奈ちゃん。


美奈「ん~、分かったわ。じゃ、私適当に相槌打つから適当にしゃべって」

誠「……。分かったよ。間違ってたらフォローしてよ」

美奈「合点承知!」

 美奈ちゃんは面倒くさそうに、返事だけ威勢よく言う。


~ 復帰 ~

誠「はい、失礼しました。」

美奈「しました~♡」

誠「え~、では『愛の秘密』を解説します!」

美奈「します!」

誠「愛とは人間のどこにあるでしょうか? はい、美奈ちゃん!」

美奈「ハートよ、ハート!」

誠「うん、まぁそうなんだけど、ハートってどこにあるでしょう?」

美奈「ハートはハートよ! 『どこ?』って馬鹿じゃないの?」

 軽蔑のまなざしで俺を見る。


誠「……。聞き方が悪かった。愛とは意識で作られているわけじゃなくて、心の奥底から湧くもんだよね? つまり意識の奥底の深層心理でできるんですね」

美奈「ハートで合ってるじゃない」

誠「そうです。つまり、日頃僕たちが意識している領域のずっと奥底の精神活動なんだよね」

美奈「要は自分の意志で、愛したり愛さなかったりできないって事よね」

誠「そう、勝手に愛は生まれてくるんです」

美奈「みんな! 分かったかな? また来週~!」

 にこやかに手を振る美奈ちゃん。


誠「ちょ、ちょっと待って! まだ終わんないから! 始まったばかりだから! ショコラ出ないよ!」

美奈「え~……」

 本気で嫌そうな声を出す。


誠「で、つまり、意識のずっと下の領域を理解し、活用することで愛する人を見つけたり愛を深めたりできるって事なんだよね。」

美奈「ふ~ん」

誠「そもそも、深層心理というのはとても大切で、日頃自分が意識して自分自身だと思っている『自由意志』は実は全然自由なんかじゃなくて、行動は深層心理が全て決め、自由意志は単につじつま合わせをしてるだけだ、という研究結果もあるんだよ」

美奈「え~、じゃなに? こうやって話している私はハリボテってこと?」

 肩をすくめ、怪訝な顔をする。


誠「そうかもしれない。美奈ちゃんの本体は、その話している美奈ちゃんの奥にいるのかもしれないね」

美奈「え~」

 すごく嫌そうな美奈ちゃん。


誠「それだけ人間の精神活動は複雑だし、深層心理の果たす役割は大きいって事なんだよね」

美奈「ま、いいわ、で、どうやって愛しあう人を見つけるの?」

誠「そもそも相思相愛になるためには、お互いがお互いを愛して心が共鳴しないとならない。だから、自分の深層心理を強く、クリアにしておいて、その上で相性のいい人と深層心理の交流を深めるって事になる。」

美奈「深層心理って自分の意識じゃどうにもならない領域なのよね? どうやって鍛えるのよ?」

誠「お、核心だね。勉強や筋肉と違って自分の意志で深層心理を直接鍛える訳にはいかない。だから間接的に深層心理が涵養される状況を作るんだね。健康的な生活習慣、瞑想などだね。」

美奈「私、健康的な暮らしとか嫌いなのよね。肉とかケーキとか死ぬほど食べて、酒飲んで夜更かしして昼まで寝てたいの!」

 不機嫌そうな美奈ちゃん。


誠「え? 日頃そんな暮らししてるの!?」

美奈「いいじゃない! 世の大学生なんてみんなそんなもんよ!」

誠「……。そんな暮らしで、なぜその美貌を保ててるの?」

美奈「うふふ、私は何といっても女神ですから! えへん!」

 腰に手を当てて胸を張る美奈ちゃん。


誠「う~ん、でも規則正しく生活して、野菜とかバランスいい食事しないと心壊すよ。愛とか以前にうつ病になるよ」

美奈「え? うつ病!?」

 ビビる美奈ちゃん。


誠「深層心理が弱るって事は、ストレス耐性が落ちるって事だから、何かあったらすぐにうつ病になっちゃう」

美奈「それは……怖いかも」

誠「最近美奈ちゃん荒れてたのは、その辺が原因じゃないの?」

美奈「いや、あれは単に生理」

誠「それだけかな~?」

美奈「……。わ、私のことはいいから! 早く先進めて! 約束の時間に遅れちゃうんだから!」

 必死に話題をそらそうとする美奈ちゃん。


誠「はいはい、だからまずは、健康的な暮らしと瞑想だね」

美奈「で、次は?」

誠「深層心理の交流を深めるんだね」

美奈「何言ってんだかわかんないんだけど? 深層心理は自分の意志でどうにもならないんでしょ? それでどうやって交流すんのよ?」

誠「例えば、同じ部屋にいる人が『あくび』したとするじゃん?」

美奈「あくび、ね……、ふわぁ~…… あぁあ」

 手のひらで口を隠して、本当にあくびをする寝不足の美奈ちゃん。


誠「そうすると…… ふわぁ~。こうやって……ふぅ、伝染るんだよね」

美奈「どういう事?」

誠「あくびって深層心理による行動なんだよ。それが伝染る。全くの他人間でも、犬や猫でも伝染るんだ」

美奈「なにそれ!?」

誠「つまり、近くにいるだけで、人は深層心理でネットワークを構築しているんだね」

美奈「なに? じゃ、好きな人の近くにいるだけでいいの?」

誠「まずはね」

美奈「『まずは』って何よ、ちゃんと教えなさいよ!」

 お客さんそっちのけで食いついてくる。


誠「当然、同じ部屋にいるだけだったら、効果は限定的だよね、だからいろいろな形で交流を持つんだ」

美奈「いろいろなって?」

誠「自分の深層心理で、相手の深層心理を感じるのが基本だね」

美奈「感じる? どういう事?」

 首をかしげて怪訝そうな表情をする。


誠「深層心理は呼吸、しぐさ、表情、声の色、目の動きなどに出てくるので、そういうのを全身で感じるんだ」

美奈「感じてどうするの?」

誠「すると、深層心理がより深くつながり、何をして欲しいか、何に困っているかが感じられるようになってくるんだ」

美奈「えー!?」

誠「ほんの些細な事でも、それに合わせてアクションしてやると、心に響くんだよね」


 美奈ちゃんは自分の経験と照らし合わせ、考えこんだ。

美奈「まぁ……効きそうね……」

誠「そうすると深層心理が、自然と何かお返ししたくなるんだ。」

美奈「返報性の法則ね」

誠「これも深層心理がつながった状態であれば、いいお返しができる」

美奈「なるほど」

誠「これを繰り返していくと、徐々に深層心理の波長が合ってくるんだよね」

美奈「ほほう」

誠「で、どこかで臨界点を超えると、一気に愛の共鳴状態が発生するんだ」

美奈「WOW!」

 ワザとらしく両手をあげる美奈ちゃん。


誠「結局は深層心理とどう付き合っていくか、と言うのが愛を築く基本となるんだね」

美奈「そんな事考えたこともなかったわ」

誠「恋愛巧者は無意識にやってるんだけどね」

美奈「ふぅん」


誠「深層心理を操るのがすごい上手い人たちがいるんだ、どういう人だかわかる?」

美奈「ん――――? 女たらしの連中?」

誠「それもそうだけど、詐欺師とか催眠術師とかだね」

美奈「何? 奴らはこういう事やってたの?」

誠「本能的に深層心理の隙を突いて、相手を希望の方向に動かしちゃうんだ」

美奈「ヤバいじゃない」

誠「だから悪用しちゃだめだよ」

美奈「しないわよ!」

 手のひらではたく振りをする美奈ちゃん。まるで漫才師だ。


誠「じゃぁ今日はここまで! 美奈ちゃん、今日のネタは役に立った?」

美奈「私には関係ないわよ。白馬の王子様を待てばいいだけだし」

誠「まぁ、姫は……そうだよね」

美奈「王子様にお姫様抱っこしてもらって、プロポーズ受けるの!」

 上を向きながら嬉しそうに話す美奈ちゃん。


誠「はいはい」

美奈「何そのあしらい方! まるで私がヤバい人みたいじゃない!」

誠「あれ? そう言えば美奈ちゃん自分で『ヤバい人』って言ってたよね? あれどうなったの?」

美奈「うふふ、なんたって私は女神なんだから、超ヤバいのデース!」

 なんだかすごく嬉しそうな表情を見せる。


誠「女神はわかったから、具体的にどうヤバいの?」

美奈「そうね……クリスが『美奈様! 助けてください!』って土下座してくるくらいヤバいわよ!」

誠「なんだよそれ……。まぁいいや。で、物語の方だけど、シアンも片付きそうだし、もうエンディングだね」

美奈「ダメ! 私の見せ場が来るまで終わらせられないわ!」

誠「十分活躍してたと思うけど?」


 美奈ちゃんは腕で×を作りながら叫ぶ。

美奈「ダメ――――! もっと活躍するの!」


誠「はいはい、え~、現場からは以上です!」

美奈「ちょっと待ちなさいよ! 私から読者へのメッセージがまだじゃない!」

誠「何それ……? じゃ、手短にね」


 美奈ちゃんは軽く咳ばらいをし、思いっきり顔を作ると、

美奈「次回は金原家長女『美奈』の誕生秘話と女神の魅力のすべて、をお伝えしちゃうぞ! うふふっ!」

 と、嬉しそうに笑った。


誠「え~、本編と全然関係ないじゃん……」

美奈「作者はいいって言ってたわよ」

誠「え!? ちょっと、作者さん! 頼みますよ! 女の子に甘いのダメですよ!」

美奈「はい! 現場からは以上です!」

 美奈ちゃんは満面に笑みを浮かべた。


誠「え? ホントにやるの? マジ……で?」

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