After Data.22 弓おじさん、溶岩空間戦

「とうっ!」


 俺はノータイムでマグマによって持ち上げられている足場から飛び降りた!

 だが、地上まではかなりの高さがある……!

 このまま普通に落下したら良くても大ダメージ&部位欠損、悪かったら即死だ!

 でも、そうはならない。当然、対策は考えてある……!


「ストロングフット!」


 発動したのは『Aビッグフットブーツ』の武器スキル【ストロングフット】!

 このスキルは足から落ちた場合の落下ダメージを無効化し、その無効化した分のダメージに比例して威力が上がる衝撃波を足にチャージしておくことが出来る。

 そして、チャージされた衝撃波はプレイヤーの任意のタイミングで解放可能だ。


 俺はまず普通に地面に足から着地してダメージを無効化し、衝撃波を足にチャージする。

 その後、すぐに衝撃波を解放せず、またマグマによって上昇する足場に乗ってしまった時にサラマンダーの前で解放する。

 こうすることでサラマンダーをひるませ、安全に地上に落下できるようになる。

 落下したらまた衝撃波はチャージされるし、この戦法が上手くいけば疑似的なループ攻撃が可能になる……!


 まあ、俺が一番火力が出せるのは遠距離からの射撃戦なので、今回みたいに意図せずサラマンダーの前に送り込まれてしまった時以外は使いたくない戦法だ。

 ただ、マグマによって打ち上がる足場の位置はランダムっぽいし、注意しても巻き込まれてしまうことは全然あり得る……。


 オロロロロロロロローーーーーーッ!!


 な、なんだこの吐くような音は……!

 いや、俺には心当たりがある!

 これはサラマンダーが口に含んでいたマグマを吐き出す音だ!


 獲物が下に逃げるなら、下に向けて吐けばいいだけだもんなぁ……。

 つまり、俺はまだサラマンダーの攻撃から逃れられていない!

 地上まではまだ距離がある……!

 空中で体をひねって上を向いて、奥義でマグマを相殺……してはいけない。

 相殺すること自体は名案だが、空中で体をひねってはいけない……!


 【ストロングフット】は足から落下しなければ落下ダメージを無効化できない。

 これがお尻から落ちたりすれば、お尻に即死級のダメージをもらうことになる……!

 【舞風】のように体の重量を軽くして、落下ダメージそのものを減らしているわけではないから、空中での動きには制限がある!

 ならばここは空中で自由に動ける【灼熱の炎翼ブレイジング・ウイング】を使ってしまうか……?


「ヴルルルルルル…………ッ!」


 エイティの鳴き声。

 同時に細かな氷の粒が体の近くを通り抜け、上から迫るマグマへと向かっていく!

 これは【ダイヤモンドダストショット】……!

 弾幕を張って俺を守ろうとしているんだ……!


 だが、相手もこの灼熱の火山に棲むボスだ。

 まだ第2進化のユニゾンの奥義では攻撃を相殺しきれない。

 しかし、この援護のおかげでマグマを少し押し返すことが出来た。

 おかげで俺が着地してからクロスボウを構えるまでの時間は十分ある!


「トライデント・ショットガンアロー!」


 水属性の散弾がマグマと衝突し、その両方が消滅した。

 『ショットクロスボウR』の武器奥義【ショットガンアロー】はあまり威力が高くないとはいえ、今回は右手と左手で奥義を2発同時に放っている。

 それにエイティの奥義【ダイヤモンドダストショット】を加えてやっと相殺か……!

 やはり、火山のボスは水属性を苦手としていないんだ……!


「ならばパワーで押し切るまでだ! 南十字星サザンクロス……」


 いや、待て!

 【南十字星型弩砲サザンクロスバリスタ】は発射台の構造上、真上は狙えない!

 天井近くに張り付いているサラマンダーには当てられないんだ!

 危うく切り札を無駄撃ちするところだった……!


 しかし、相殺するにも苦労する攻撃を続けられればジリ貧になる。

 速攻で仕留めるという作戦自体は正しいものなんだが……手段がない!


 オロロロロロロロローーーーーーッ!!


 こうしている間にもサラマンダーの攻撃は続く。

 今度は口の中からゴロッとした岩の塊をいくつも吐き出してきた。

 しかも、その岩はごうごうと燃えている……!

 さっきのマグマよりも固形に近い分、頑丈で威力がありそうだ!

 くっ……どう切り抜ける……!?


「スゥゥゥ……ブォォォォォォーーーーーーッ!」


 エイティが口から吹雪を吐くスキル【ブリザードブレス】を発動する!

 もちろんただのスキルでこれだけの攻撃を相殺することは出来ない。

 しかし、冷気を浴びたことで岩石が帯びていた炎が掻き消えた!

 残った物はただの岩石……! 岩石ならば……。


「ガトリング・ドリルアロー改!」


 岩石を砕くドリルの矢で十分対処できる……!

 それに吐き出されたすべての岩を砕く必要もない。

 俺たちの近くに落ちるであろう岩だけを撃ち、他の岩はスルーする。

 これならば対処すべき岩は2つくらいでいい。


 クールだ。クールに戦おう。

 頭を冷やして冷静になれば、奥義を使わずともスキルの組み合わせで強力な攻撃にも対処できる……!

 俺はエイティがそれを教えてくれているように思えた。


「クールに戦う……そうだよなエイティ?」


「ヴルル……ッ!」


 肯定するような短い唸り声!

 やはり、そうなのか……!


「よし、ここのまま連携であいつを……」


 そう思った矢先、エイティはグラグラと揺れる地面に乗り、そのままサラマンダーのところまで上昇してしまった。

 しかも、俺にはわざと乗ったように見えたが……。


「な、なんか、意思疎通ができてるのかわからなくなってきたぞ……!」


 だが、本当にわざとサラマンダーに接近したのならば、エイティの性格的に考えられることは……ただ1つ。

 すでにサラマンダーはエイティにとって恐るべき敵ではないということ!

 ここは新たな相棒の行動を信じてみるか……!

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