Data.214 弓おじさん、本物の……
マンネンがいくら高防御を誇るユニゾンといえど、先ほどのガー坊との衝突でHPと装甲に多少のダメージをくらった状態で【
そして、矢は要塞となっている甲羅のちょうど中心を通るように撃った。
ベラの位置を正確に把握できているわけではないが、マンネンの甲羅の中が戦車のような構造ならば、ベラはそこにいるはず……!
まずはマンネンのHPが完全に削れ、体が消滅する。
そして、その消滅の光の中からベラが現れた。
ベラの体もまた消えかかっている……!
「本職のユニゾンマスターを上回るコンビネーションとはなぁ……。やってくれるやないか! 負けた以上、素直に認めざるを得んわ! でもまあ、私もやることはやらせってもらったからなぁ……! ちゃんと届けたで……!」
一体、何をやったんだ……?
届けたと言っているが、大砲を使って何かを遠くへ飛ばすような動きはなかったと思うが……と、思考を巡らせる俺の頭に響いてきたのは、マココによるサトミのキルを伝えるアナウンスだった。
同時に派手な爆音、建物の倒壊音……近いぞ!
「マココはんは元々おっさんと同じソロの人や。あるゲームで私と出会う前は、NPCと協力して強敵を仕留めたりしてたんやで。だからこそ言える……勝負はこれからや! ホンモンのマココ・ストレンジが飛び出すで……!」
ベラはそう言った後、消滅した。
同時にストリートの建物が破壊され、瓦礫と共に何者かがなだれ込んでくる。
1人は満身創痍のネココ・ストレンジ。
もう1人は……桜色のオーラをまとったマココ・ストレンジだ……!
そして、その手に握られているのは巨大な黒いブーメラン!
名前は確か『
クロッカスJr.が変形した姿だ!
つまり、クロッカスJr.は水中でガー坊の攻撃をしのぎ、地上に舞い戻って真の相棒の元まで飛んで来たということか……!
やはり只者ではないプレイヤーのユニゾンもまた只者ではない……!
そして、ベラが言っていた『届けた』というのは、クロッカスJr.のことだろう。
ガー坊はずっとクロッカスJr.を追っていたが、ベラに出会って足止めを食らい逃がしてしまった。
そこを後から来た俺が助けた……という流れだとすると、俺がクロッカスJr.と出くわし攻撃を行えた可能性もゼロじゃなかったということだ。
数秒の時間差、深い霧の揺らぎ……。
ほんの少しの歯車の噛み合わなさが、マココにクロッカスJr.を届ける展開を生んでしまった!
今の彼女はまさに鬼に金棒……!
その立ち姿に身がすくむが、まずは冷静にオーラの効果を探るんだ!
「ネココ! あの桜色の光の効果がわかるかい!」
「…………」
「ネココ!」
「……はっ!? お、おじさん!? いつからそこにいたの!?」
「さっきからさ! というか、君がこっちになだれ込んで来たんだけどね」
極度の集中状態で声すら聞こえなくなっているとは……。
それだけ相対する敵が強大ということだ。
これはいよいよ俺も年貢の納め時かもしれない。
「あの桜色のオーラはミラクルエフェクトの効果によるものよ。名前は【特式・桜ノ蝶】! 効果はステータスの底上げと飛行能力、そして……エネルギーブーメランの生成!」
「つまり、ブーメランは3つどころじゃないってことか……」
「そういうこと!」
「とんでもないなぁ……君の叔母様は。人間を超えてしまっている気すらする」
あ、思わず本音が漏れてしまった……。
悪意はまったくなく、完全に畏怖の念から出た言葉だが、少し言葉選びを間違ったかも……。
「でしょ? そこがとってもミステリアスで……憧れちゃうの。お年頃の女の子には刺激が強すぎるわ」
特別な存在や特別な出来事を夢見る年頃の子どもの近くに『本物』がいたわけか。
そりゃ憧れもするし、同じようになりたいとも思うだろう。
でも、ネココは完全に同じになりたいと思ってるわけじゃないんだ。
だって武器がまったく方向性の違うものだし、戦闘スタイルも似ていない。
ネココはネココなりのスタイルで憧れの人に追いつこうとしている。
大人としてはその背中を押してあげたいが……大人だからこそ見えてくる現実がある。
「
生成された桜色のブーメランが怪しく揺らめく。
このブーメランの性能自体はあまり強くはない。
しかし、ブーメランが増えることで手数が増え、同時に襲ってくるスキル奥義の種類が増える。
そうして、どんどん対応が遅れて最後には潰されてしまう……!
「
とにかく先手を打つんだ。
後手に回ると常に選択肢を押し付けられ苦しくなるとチャリン戦で学んだはず……!
「
投げられた黒い巨大ブーメランが高速回転!
超ド級の大竜巻を起こし、矢をすべて巻き込んで無力化してしまった。
【
奇襲作戦は失敗に終わった……!
「
今度は蛇行して飛ぶブーメランが投げられる。
空を這い回るような軌道は確かに体の長い東洋の龍を思わせるが、『
このブーメランは通った後に残像を残すのだが、それには攻撃判定もバッチリ残っている。
そして、その残像は連なるように配置され、一定時間その場にとどまり続ける。
長く連なる攻撃判定は俺の射撃を邪魔し、ネココの機動力を削ぐ……!
空を支配する長き体躯……まさに『
大人だからこそ見えてくる現実がある。
俺とネココでは……マココに勝てない。
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