Data.213 弓おじさん、マシンバトル

「くらえっ! 誘導甲羅弾!」


 マンネンの装甲の一部が開き、中からミサイルのように小型の甲羅が発射される。


「ガトリング・サンダーアロー!」


 大量の飛び道具を放つ攻撃の弱点は、1発1発の威力の低さにある。

 こちらも複数の矢で丁寧に狙っていけば、十分相殺できるはず……!


「いや、硬いぞ! この甲羅……!」


 そりゃ亀の甲羅は硬い……というのもあるだろうが、一番大きな要因はやはりミラクルエフェクト【絆の一発入魂ユニゾンソウル】の効果だろう。

 ステータスが大幅に上昇すれば、スキル奥義も強くなる……!


「ガー坊! テンタクルレーザー!」


「ガァー! ガァー!」


 ガー坊の装甲の一部が開き、中から出てきた8本の触手型砲塔がミサイルに向けて赤く細長いレーザーを放つ。

 新装備『オクトパスキャノン』の武器奥義である【テンタクルレーザー】は貫通力に優れ、ガー坊の意志によって発射後もある程度軌道を曲げられるという特殊効果を持つ。

 多数のミサイルを撃ち落とすのにこれほど向いた奥義はない!


 ◆オクトパスキャノン

 種類:水属性 または 機械属性ユニゾン専用

 攻撃:100 防御:25 魔防:25

 武器奥義:【テンタクルレーザー】


 装備としては耐久面を微妙に底上げしてくれるのも魅力だ。

 ちなみにユニゾンの装備は常に見た目に反映されているわけではなく、スキルや奥義を発動した時だけ現れるというのが基本だ。

 ガー坊の武器である『万弓マンボウ』も常には召喚されておらず、任意のタイミングで出したり引っ込めたりしている。


 そのため、ユニゾンの装備は非常に破壊されにくいのだ。

 まあ、勝手に動くこともあるユニゾンの装備まで常に気にするのはしんどいからなぁ……。

 ありがたい配慮だ。


「まだまだぁ! お次はタートルビーム! んで、超電磁タートルスピンの合わせ技や!」


 またまたマンネンⅡ世の装甲が開き、その中に存在するサブ砲塔からビームが発射される。

 サブ砲塔は8門存在し、それぞれ間隔を開けて全方位をカバーできるように配置されている。

 さらにマンネンはバチバチと稲妻をほとばしらせながら回転。それに合わせてビームも回転!

 ビームは一発撃って終わりというよりは、その場に残り続ける鈍足のビームだ。

 なぜか回転に合わせてムチのようにしなるし、重さがあるかのように建物をなぎ倒していく。

 さながら、ビームウィップと言ったところか……!


「私のムチもオマケや!」


 マンネンの甲羅のてっぺんからベラが顔を出す。

 戦車みたいになってるんだな……。


「ワイルドタイガーウィップ!」


 巨大な虎のエフェクトをまとったムチは、空中でデタラメに跳ねまわりながら俺に迫る!

 なるほど、これではどこから噛みついてくるのかわからないな。

 ただ……!


「居合撃ちからの……インフェルノ・インファイトアロー!」


 結局のところ、攻撃する瞬間はまっすぐ突っ込んでくる!

 そこへ素早く矢を撃ちこみ、ムチの軌道をズラす。

 相手の攻撃はおそらく奥義。融合スキルでも相殺は難しい。

 だからこそ、ズラしてやり過ごす……!


「ム、ムチを撃つなんて相変わらず器用な人でんなぁ……」


 ベラが唖然としている今がチャンス!

 ユニゾンがどれだけ強かろうが、ユニゾンマスターが撃破されればユニゾンは消える!


「うわっ、見られた! ほな、さいなら!」


「はやっ!?」


 思わず声が出るほどマンネンの中に逃げ込むスピードが速い……。

 やはり、ベラを倒すにはマンネンⅡ世を撃破するしかないようだな。

 とはいえ、【流星破壊弓アルマゲドンアロー】を撃ち込む隙はまだ見つからない!


「まずは回転を止めないと攻撃に集中できない……! ガー坊、ブルーオーシャンスフィア!」


「ガァー! ガァー!」


 機動力を上げたガー坊をマンネンⅡ世の懐に潜り込ませ、高威力な接近戦用スキルで砲塔を破壊する!

 【黒子ガイル】は温存だ。ビームと稲妻のほとばしる戦場では簡単に一掃されてしまう。


「おっ! ええんかな~、そんなもん使って! 水は電気を通すから、マンネンⅡ世が放つ稲妻への当たり判定が大きくなるで!」


 やはりガー坊の弱点を把握したうえでマンネンⅡ世に稲妻をまとわせていたか……。

 そうしておけば、万が一ガー坊に突撃されても相打ちに持ち込める。

 いや、耐久面の差で攻撃したガー坊の方が致命傷を負う可能性すらある。

 だが、それは今までのガー坊の話だ!


「ガー坊、紅い死喰回転クリムゾンデスロール!」


「なにぃ!? 苦手とわかっててほんまに突っ込ませるんか!? ユニゾン虐待やで!」


「そうでもないさ!」


「ん!? なんやあの角!?」


 そう、今のガー坊の頭にはユニコーンの角が生えている!

 これこそが新装備5つ目にして、最後の1つ『大地の一角獣アースユニコーンの角』だ!


 ◆大地の一角獣アースユニコーンの角

 種類:汎用

 攻撃:15 防御:15 魔攻:15 魔防:15 速度:15

 武器スキル:【幻想の避雷針】


 【幻想の避雷針】

 自身に対する雷属性ダメージを50%減少させる。自動発動。


 ガー坊の弱点である雷属性攻撃への対策であり、それ以外の性能は重視していない。

 武器でもなく、防具でもない、アクセサリーみたいなステータスをしているが、合計すると75も数値が上がるので意外と馬鹿にならない。


 これを装備したことにより、ガー坊は雷を克服……出来てはいない。

 ガー坊は水属性と機械属性を複合しているが、そのどちらの属性も雷を苦手としている。

 ダメージを50%カットしても、普通のモンスターに比べればまだ雷が苦手だ。

 特に魔防の低さから魔法攻撃の雷は絶対に食らってはいけない。


 しかし、マンネンⅡ世は物理攻撃型だ。

 物理の雷属性ならば弱点とはいえど常識的なダメージの範囲に抑えられるはず……!


 今、回転する亀とワニがぶつかった!

 機械属性かつ兵器の要素を多く持つユニゾン同士の激突は、周囲に思わず耳を塞ぎたくなるような金切り音と鈍い音、爆発音、さらには火花を散らし数秒続いた。

 結果は……両者とも致命的なダメージを負わずに健在だった。


 だが、マンネンⅡ世は装甲内の砲塔をいくつか破壊されており、ビームを放てない状態になっていた。

 キャタピラ部分にも多少損傷があり、移動に影響が出るだろう。

 どちらもフォートレスタートルという種族にとっては体の一部なので、回復アイテムによる治療が可能だと思われるが、一時的に動きを止めるには十分な状態だった。


「くぅぅぅ……! 中にかわいい女の子が乗っとるんやから、もう少し気を使って攻撃してほしいもんやで……。まあ、ええわ……。いま回復したるからな、マンネンⅡ世! あらっ? おっさんはどこ行っ……ああっ!?」


流星破壊弓アルマゲドンアロー!」


 仕組みはわからないが、ベラはマンネンⅡ世の中からでも外の様子が見えていた。

 だからこそ、俺の行動に対して逐一ツッコミを入れることが出来たわけだが、ガー坊の突進による激しい振動で一時的に外の様子を確認する余裕がなくなってしまった。

 ゆえに俺の接近にも気づくことも出来ず、脱出のタイミングも逃してしまった。


「絶対に外さない距離からユニゾンごと撃ち抜かせてもらう!」

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