Data.177 弓おじさん、おじいさん対策会議
ゲーム内だというのに何故相手がリアルにおじいさん達だとわかるのか?
それは本人たちが公言しているからだ……!
『
いろんな活動をして多少の収益も得ているらしいので、カテゴリー的には正しくプロゲーマーチームと言える。
古来よりプロゲーマーは若い方が好まれる。
有名チームだと一定の年齢を超えると引退を余儀なくされることもあると聞く。
しかし、『
歳をとっていなければ入れない……!
俺でも『
ある意味、次の戦いは未知との戦いなのだ……!
「勝利の鍵は十分なリサーチ。1回戦のアーカイブを見ましょう」
サトミがウィンドウを開き、試合アーカイブのページを開く。
これは本選出場者にのみ許された機能で、すでに終わった試合の映像を再度視聴することが出来る。
初期街のモニターで試合を見守るプレイヤーや、PCや携帯端末で試合を観戦する人々は現時点で終わった試合を巻き戻して見ることは出来ない。
「
……前衛多くない?
比率4:1じゃないか。
俺たちのパーティもかなり変則的だが、一応は前衛2人、後衛2人、万能型のガー坊1人で表向きのバランスは取れている。
偏っても問題ないくらい1人1人が強いベテランプレイヤーなのか……?
「ちなみに
「そ、そうだね……」
ベテランチーム説は消えたけど、1回戦を突破したことは事実だ……!
俺だってVRMMOに関しては素人だったのに結構上手くやれてるし、おじいさんには無理ということはないはずだ。
「
名前の方向性被っている……!
というか、やっぱり『ジィ』で『爺』を連想するよな。
あの頃の俺の懸念は間違っていなかったのだ……!
「唯一の後衛にして唯一の魔法職ですが、回復役ではなく彼もアタッカーです。白くて長いヒゲと大きな三角帽子が大魔法使いの風格を感じさせますが、どちらかというと派手さより堅実さのプレイヤーです。敵から逃げて距離をとり、ちまちま敵を攻撃するシーンが多かったですね」
戦闘スタイルも俺とちょっと被ってる……!
やっぱり歳取ると前衛職は辛いよなぁ……。
まあ、最近の俺は必要に迫られると接近戦もやっちゃってるけど……。
「次に前衛のユウシヤさんです。『ユウシャ』じゃなくて『ユウシヤ』である理由は不明です」
超レトロゲーの再現なのか、単純にミスなのか……。
「武器は剣と盾の王道勇者スタイルです。動きも
勇者の次に憧れる職業があるとすれば、魔法剣士だよなぁ……!
その気持ちは痛いほどわかる! カッコいいもの!
でも、ゲームの魔法剣士は器用貧乏になってしまうことが多いのも事実……。
くっ……剣と魔法の世界を冒険するのに、剣と魔法のどちらかだけを選ばないといけないなんて不条理じゃないか……!
いや、剣を速攻で捨てて弓を選んだ俺が言えることではないけど!
「3人目はシショウさんです。武器は刀、防具は渋い柄の羽織袴。例えるなら歳を取って隠居している凄腕の侍といった感じですね」
同じ和風装備には親近感がわくなぁ。
顔立ちも経験豊富な老剣士の雰囲気が再現されている。
これは強そうだ……!
「彼に関しては特に活躍もなくキルされてしまったのであまりデータがありません。しいて言うなら……剣の構えも振りもぎこちなかったです」
仕方ない……!
きっとゲームにも刀にも慣れていなかったんだ!
現代人がこの両方に慣れた状態になるのは簡単じゃない……!
俺だって初めて弓を持った時は……なぜか上手くいったけど、それはそれ、これはこれだ。
「最後にコハルさんです。女性っぽい名前ですが、見ての通り無精ひげを生やした浪人スタイルの男性です。武器は身の丈以上の長さの大太刀です」
方向性は違うとはいえ、同じパーティ内で侍要素が被っている……!
でも、この武骨な見た目に巨大な刀はカッコいいなぁ。
「ふらふらと酔っぱらったように歩いているシーンが多かったですが、これはキャラ付けではなく大太刀の重さに負けてふらついているようです。歩くこともままならないのですから、もちろん普段は振ることも出来ません。ですが、スキル奥義には動きに補正をかける効果があるようで、機敏に大太刀を振り回してきます。この切り替わりに要注意です」
ある意味、ダラけきっているけどやる時はやるキャラを上手く再現できているのかも……。
ふらふら歩いていると思ったら、いきなり達人の動きで斬りかかってくるわけだしな。
「最後にユニゾンのコロマロです。見た目は普通の柴犬ですが、パワーが尋常じゃありません。お手で地を割り、じゃれつきでプレイヤーを殺します。1回戦では実に3人ものプレイヤーをキルしています」
そ、そうだった……!
俺もリアルタイムで試合を見ていたはずなのに、なんかプレイヤーたちの印象が薄いなぁと思っていたが、その原因はこれだ!
『
「コロマロは頭が良くありません。それが非常に厄介なんです。ゴチュウやガー坊はプレイヤーがピンチになると身を
おじいさんを愛犬が助けたと聞けば心温まる話だが、実際はB級モンスター映画のような光景だったなぁ。
試合前の緊張感と試合後の安堵感で記憶が濁っていたが、これでスッキリした。
「こうして確認するとコロマロだけが脅威に思えますが、彼の独壇場で試合が終わってしまったことからプレイヤーたちの実力には不明な点が多いです。誰が相手でも油断せず、確実に倒しましょう。総合力で見れば
コアとの戦いを終えたサトミは昔より少年らしさが増した気がする。
そんなサトミの言うように、このおじいさんたちがコアたちよりも強いとは思えない。
だが、そういう時こそ足元をすくわれる……。
おじさんの俺がたくさんの強敵の足元をすくってきたように、おじいさんにも『成長』と『可能性』が存在するんだ。
頭の中でイメージを膨らませ、対策を考える。
油断はしない。若さで勝つんだ。
おじいさん相手なら、おじさんも若さを武器に出来る……!
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