Data.153 弓おじさん、技能進化

 スキルはアイテムを使うことで獲得することが出来る。

 また、特殊な条件を満たすことでも獲得することが出来る。

 そして、獲得したスキルはアイテムを使用することで進化させることが出来る。


 中には【弓術】のように戦いを重ねることで勝手に進化していくものもあるが、基本的にほとんどのスキルはプレイヤー側が積極的に動かなければ進化しない。

 俺は特殊なフィールドを冒険することで、その進化に必要なアイテムをいくつか手に入れた。

 同時に新たなスキルを獲得できるアイテムもゲットすることに成功した。


 まず1つ目の新スキルは【フラッシュアロー】。

 リボリボ原生林で俺を苦しめた『閃光茸』をいくつも集めることで作ることが出来る『超閃光茸』を使うことで獲得したスキルだ。


 【フラッシュアロー】

 着弾と同時に強い光を放つ矢を放つ。


 要するに閃光弾だ。

 対人戦では敵の視界を奪って奇襲を仕掛けたり、あるいは逃走を図ったりと使い道は多いはずだ。

 もちろんダメージは発生しない『閃光だけ』なので過信は禁物だ。


 2つ目の新スキルは【熱線の熱視線】。

 リボリボ原生林で戦った『メカラビームザル』が落とした『集光のレンズ』を使うことで獲得したスキルだ。


 【熱線の熱視線】

 目から高熱の光線を発射する。


 うん、目からビームだ!

 ネタっぽいスキルだが、両手両足を失っても頭さえあれば敵を攻撃することが出来る重要スキルだ。

 弓を構えながらでも視線で牽制できるので、間違いなく重宝するだろう。


 いうなればロボットにおける頭部バルカン砲だな。

 射撃武器を持たぬ格闘戦専用の機体でも頭部バルカン砲だけは付いているのが基本だ。

 ほぼ弓専門の俺でも、目からビームくらい出しても良いだろう。

 威力は大したことないので、勝負の決め手になりにくいところもバルカンっぽいし。


 さあ、ここからは既存のスキルが進化したスキルたちだ。

 その1つ目は……主力スキル【バーニングアロー】が進化した【インフェルノアロー】!

 進化に使用したアイテムはリボリボ原生林で討伐した沸沸フツフツ狒狒ヒヒが落とした『獄炎怒髪ごくえんどはつ』!


 【インフェルノアロー】

 地獄の炎を宿した矢を放つ。着弾と同時に小さな爆発を起こす。


 元のテキストの先頭に『地獄の』という言葉を追加しただけ!

 威力が上昇し、炎の色が少し黒くなっただけで使い勝手はまったく変わっていない。

 これまで通り主力スキルとしての運用が可能だろう。


 二つ目のスキル……【ドリルアロー】が進化した【ドリルアロー改】も似たような感じだ。

 進化に使用したアイテムは機神風穴で討伐した兵器たちのどれかが落とした『破壊ドリル』だ。


 【ドリルアロー改】

 矢じりがドリルのごとく高速回転する矢をさらに改良し、威力を向上させたものを放つ。

 『岩石属性』『機械属性』のモンスターに特効。


 使い勝手はそのまま、威力が向上。

 特効も以前と変わっていない。


 だが、次のスキルはかなり使用感が変わっている。

 それも……かなり良い方向に。


 【真・不動狙撃の構え】

 15秒以上移動しなかった場合、射程を3倍にする。


 ゲームを始めて最初の頃に獲得した【不動狙撃の構え】が進化した【真・不動狙撃の構え】……!

 進化に使用したアイテムはリボリボ原生林で討伐したスライパーが落とした『狙撃核細胞』!


 前のテキストは『30秒以上移動しなかった場合、射程を3倍にする。この状態で攻撃を行った際、30秒間その場から移動することは出来ない』というものだった。

 スキル発動までに30秒ジッとする必要があるうえ、使用後さらに30秒間その場から移動できなくなるという強烈なデメリットが付いていた。


 それでも射程を3倍にするという効果は魅力的で、序盤はかなり重宝していたが、素の射程が伸びて倍にしなくても問題なく敵を狙えるようになってからは使用する機会が減った。

 敵が強くなり、30秒もジッとしていられない状況が増えたというのもある。


 それが『真』の構えと化したこのスキルでは、デメリットが完全に削除されている……!

 撃ったら即逃げで狙撃場所を変えるというスナイパームーブがやりやすくなった。

 さらに発動条件である30秒間の不動も半分の15秒に短縮され、とにかく使いやすくなっている。

 伸びる射程自体は3倍のままだが、前の各種条件のままで5倍とか10倍にされるよりはずっと強化されていると言える。


 まさか、ここに来て序盤のスキルが進化して主力に返り咲くとは想像もしていなかった。

 パーティ戦ならば15秒くらいジッとして狙撃のタイミングを待つ機会もあるだろう。

 存分に活用させてもらう……!


「さて、これで俺のスキル構成は……」


 スキル:

 【超弓術Ⅰ】【会心の一矢】【弓矢融合】【無駄のない動き】

 【インファイトアロー】【バウンドアロー】【クリアアロー】

 【インフェルノアロー】【トライデントアロー】

 【ドリルアロー改】【レターアロー】【ガトリングアロー】

 【サンダーアロー】【フラッシュアロー】

 【マルチショット】【居合撃ち】【熱線の熱視線】

 【真・不動狙撃の構え】【狙撃の眼力】【獣王の眼力】


 奥義:

 【裂空】【ワープアロー】【アイムアロー】【インドラの矢】


 合体奥義:

 【流星弓】


 見ているだけで感動すら覚えるな……。

 このスキル欄は今まで積み重ねてきた冒険そのものだ。

 さらにここに装備の武器スキルや奥義、アイテムのMEメダルによってもたらされるミラクルエフェクトも加わる。

 そう考えると負ける気がしないが、それは慢心だろう。

 まだ強くなれるはずだ……。


 あ、そうそう。

 いつも勝手に進化している【弓術】スキルにも大きな変化があった。

 表記が【弓術】から【超弓術】に変わっていたのだ。


 【超弓術Ⅰ】

 弓装備時、攻撃、射程を+130する。


 テキスト的には【弓術】における第13段階の効果があるが、13以降は数字がリセットされ【超弓術】として1から数え直すようだ。

 1から始まり12で終わり、また新たな1が始まるというのは、まるで年月のようだな。


「……これから何をしようか」


 あと職人さんに依頼しているのは俺の弓とガー坊の新装備だが、そちらはまだ時間がかかる。

 『第1回NSO最強パーティ決定戦』の詳細が発表される生放送も数日後に迫ってきている。

 まあ、だからといってやることは変わらない。

 今日も今日とて冒険だ。


 空上郷を後にし、新たなフィールドを目指す。新たな力を求めて。

 そして、その日はやってくる……。

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