Data.144 弓おじさん、地下機械街
ガシャンっとエレベーターが完全に停止する。
祭壇の地下に広がっていたのは、機械の人間たちが暮らす街だった。
歯車や蒸気、仕組みはわからないが何かガシャガシャ音を立てる装置などスチームパンク感がスゴイ……。
住民もほとんど人間のように見えるタイプもいれば、ほぼほぼ機械のタイプもいる。
生身の人間である俺が入っていったら戦いになるのではないかと一瞬思ったが、スキルを使用することが出来なくなっているので、ここが非戦闘エリアであることは間違いないだろう。
ちょっと住人に話を聞いてみるか……。
あの人間に近い見た目の女の子にしよう。
「あの、すいません。ここは……」
「うおっ!? 血の通った人間さんとは珍しいですね! ここは
驚かれはしたが、友好的な反応だな。
そして、ここがゲーム側にも『街』として扱われている場所だということが確定した。
街ならば安全なログアウトや部位欠損の治療、アイテムの購入などが出来る。
渡りに船とはこのことだ。
これで真夜中のサバンナを駆けまわって村を目指す必要はなくなった。
「うおっ!? あなたさんと一緒のワニさんも機械の体を持っているのですね! しかもかなりの性能だとお見受けします……! これは古代文明の時代に造られたオリジナルのメカアニマルかもしれません!」
「オリジナルのメカアニマル?」
「そうです! メカアニマルも普通の生物と同じように増えるのですが、そのルーツは人工的に造り出されたオリジナルにあるんです! こちらさんのワニさんはきっとオリジナルメカアニマルの1体だと思われます! オリジナルは性能が飛びぬけて高くて、私たちにとっても憧れの存在なんです!」
ガー坊は古代文明の技術で造られた最初のメカアニマルの1体という設定なのか。
ならばサバンナで戦った他のメカアニマルより圧倒的に強いのもうなずける。
機械というのは本来後から造られた物の方が性能が良いものだが、ロボットは最初の1体目や試作機が強いことが多々ある。
リアルじゃない? そう、これはロマンだ。
ロボットアニメ的には正しいのだ!
「他にもいくつか質問してもいいかい?」
「なんでしょう!」
「さっき『血の通った人間』は珍しいって言ってたけど、それは本当?」
サバンナの中にある祭壇とはいえ、結構大きいし目立つ建造物だ。
他のプレイヤーも当然ここを調べるだろうし、地下の街の存在に気づいてもおかしくない。
だが、今の街の中にプレイヤーはいないように思える。
「はい、珍しいですよ! まったく来たことがないとは言いませんが、本当に少ないです! 理由はエレベーターを起動するのに条件があるからだと思いますけどね!」
「条件?」
「あなたさんの場合は2つも満たしてますよ! 風雲装備とメカアニマルで!」
「ちょ、ちょっとまって、メカアニマルはわかるけど風雲装備も条件の1つなのかい? 確かにこの弓で祭壇を突いたらエレベーターが動き出したし、この弓を貰った風雲山にも同じようなエレベーターが存在したけど……」
「それが答えです! 私たちも離れた場所に同じように古代文明の遺産を受け継ぐ街がいくつかあることは知っています! そして、その街の名を冠する装備が古代の遺産を動かすキーになっていることも!」
な、なんだって……!?
風雲装備が古代の遺産を動かすキー……?
ということは、風雲山内部のエレベーターを動かせたのも風雲装備のおかげってことか。
風雲竜は自分が実力を認めた相手を雲に乗せて風雲山へと導く。
だが、もしその導きに気づかずに雲から降りてしまったとしても、風雲竜から授かった風雲装備があればエレベーターで風雲山を登り、風雲の隠れ里にたどり着けるようになっているわけだな。
まったく、どこまでも素晴らしい装備だ。
「教えてくれてありがとう。もう1つ質問があるんだけど……ファストトラベルの解放条件って知ってる?」
「ファストトラベル……あ! 血の通った人間さん達が使うワープ能力のことですね! それなら私が許可の担当をしていますが、あなたさんの場合はもう許可しちゃいます! 解放条件は複数あるのですが、あなたの場合は我々の仲間であるメカアニマルを立派に育ててくださっていますから!」
なるほど、レベルが高かったり進化している機械属性ユニゾンを連れていると、ファストトラベルがあっさり解放されるようになっているんだな。
これが植物の街だったりしたら、植物属性ユニゾンを連れているプレイヤーが得をするのだろう。
これで知りたいことはほとんど知ることが出来た。
何もかも教えてくれた機械少女に礼を言って別れ、左脚を治してからマシヌシュタットの施設を見て回る。
……この街すごいぞ!
NSOメダルを使ってスキルを買える店もあれば、機械系の素材アイテムの品ぞろえが豊富な店もある!
さらには空上郷のウーさんと同じ凄腕職人のいる工房も存在する!
スキルの品揃えは初期街と違うし、これはまた戦法の幅が広がりそうだ。
機械系の素材アイテムは、ガー坊の装備を強化するのに役立つ。
凄腕職人『8本腕のオクトパス』ことオーさんはウーさんと同じくレアアイテムを扱うことが出来るし、2人の職人に仕事を振り分ければ作業効率は大幅アップだ。
ガー坊の仲間がいて、風雲装備とも関わりが深いこの街は、俺にとっても重要な場所になりそうだ!
そして、上記の3つよりも興味を惹かれたのが……。
「
マシヌシュタットの外れにある分厚いゲートで閉ざされた洞窟。
この中には同じ機械でありながら心を持ち合わせていない殺戮兵器たちが閉じ込められているらしい。
危険極まりないが、奥地には独自の進化を遂げた強力な機械生命体がいて、撃破すれば超レアなアイテムが手に入るらしい……。
「この説明は最強を目指すプレイヤーにとって『行け!』という命令に近いな……!」
ゲートを開く許可はすでに貰っている。
さあ、古代文明の闇に迫ろう……明日からな。
マシヌシュタットにたどり着いた時点で夜だったし、流石にここから高難易度ダンジョンは徹夜になる。
最強を目指すプレイヤーは徹夜くらいするのだろうが、おじさんは睡眠時間だけは削らない……!
殺戮兵器の相手は……明日だ!
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