#65 闇魔法

 作者のカムラです。


 久しぶりの投稿になってしまい、申し訳ありません。


 昨今の情勢下で、作者にも以前より時間が出来たのは事実なのですが、不安などからか、あまり執筆作業に取り組むことが出来ず、更新が遅れてしまいました。


 今回の投稿は、作者と同じように不安に思ってる方や、時間を持て余している方達の助けに少しでもなれたらという気持ちで投稿させていただきます。


 また、次話の投稿の準備もしておりますので、数日以内に投稿させていただくつもりです。


最後になりますが、読者の皆様方も体調面には本当にお気をつけください。



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「あ! おはよう! お兄ちゃん、お姉ちゃん!」


「おはよう、ミラルちゃん」


「……おはよ。 ……出掛けるの?」


「うん! これからお母さんと買い物に行くの!」


「そっか、楽しんでね」


「あら、ショーマさん、ノアルさん。 これから朝食ですか?」



 ミラルちゃんと話をしていると、少し着飾った外出用の服を着たララさんがカウンターの奥から出てきた。



「あ、おはようございますララさん。 そうですね、準備してあるなら頂きたいんですけど、大丈夫ですか?」


「大丈夫ですよ。 他に止まっている冒険者の方はまだ寝てる方も多いので、ちゃんと全員分残してありますから」


「わざわざすいません。 頂きますね」


「……お腹空いてたから嬉しい」


「ふふっ、たくさん召し上がって下さい。 冒険者の皆さんにはこの街を救ってもらえて本当に感謝しているんです。 だから、私達も皆さんに恩返しさせてください」


「泊まらせてもらえるだけでも嬉しいですよ。 ありがとうございます」


「……ありがと」


「いえいえ。 それでは私達は色々と買い物に行ってきますね」


「夜に色々と話聞きたいです!」


「分かりました。 夕食前には戻ってきますね」


「……行ってらっしゃい」



 会話を終え、ララさん、ミラルちゃんは手を繋ぎながら宿の玄関口から出て行った。 微笑ましい光景だなー。



「それじゃあ、ご飯食べようか」


「……ん、お腹空いた」



 食堂に入ると、すぐそこにトーイさんがいたので、2人分の食事をお願いすると、「温めて来ますね~」と言ってトーイさんはパタパタと厨房の方へ入っていった。 至れり尽くせりである。


 さて、朝食を食べたら冒険者ギルドに行かないとな。 かなり起きるのが遅くなってしまったから、依頼を受けられるかは微妙だけど、ユレーナさんに呼ばれているし、ちゃんと行こう。 それから何するかは向こうで考えればいいと思う。



「お待たせしました~。 温めて来ましたよ~。 お代わり欲しかったら言ってください~」



 そんな事を考えている間に、トーイさんが朝食を持ってきてくれた。


 とりあえず、今は腹ごしらえだな!


 いただきます!







 ワイワイ…… ガヤガヤ……



「うわぁ…… すごい混んでるね」


「……人がたくさん」



 朝食を食べ終え、僕達は冒険者ギルドに来たのだが、ギルドはかなりの人で溢れかえっていた。 ただ、受付に並んでる人の他に、ギルドの中央でなぜか人だかりが出来ていた。



「ショーマ様、ノアル様ですね?」



 ギルドの入り口辺りでその光景を見ていると、横から執事服を着た男の人に声をかけられた。 おや? 確かこの人は……



「はい、そうです。 あなたは確か、ニコラスさんの邸宅にいた……」


「申し遅れました。 私は領主邸にて執事長を務めておりますタミルという者です。 ニコラス様の命でショーマ様がいらっしゃるのを待っておりました」


「ニコラスさんが?」


「はい。 こちらへどうぞ」



 そう言ってタミルさんは僕達を案内するために歩き始める。 って、あれ? という事はギルドにニコラスさんが来てるのか?


 その疑問はすぐに解決した。


 先程から気になっていた人だかりが、僕達の姿を見るやいなや、僕達が通れるよう道を空けたのである。


 そして明らかになった人だかりの中央には、ニコラスさんとユレーナさんが立って話していた。



「おや、来たようだね」


「こんにちは。 ニコラスさん、ユレーナさん」


「沢山休めたかい?」


「そうですね。 自分が思ったよりも体は疲れてたみたいで、かなり眠ってしまいました。 来るのが遅くなってしまい申し訳ありません」


「あぁ、それはいいんだよ。 昨日遅くまで働かせちまったのはこっちだしね。 本当ありがとね」


「そう言ってもらえるとありがたいです」


「ショーマ君。 僕からも礼を言わせてもらうよ。 この街のために戦ってくれてありがとう。 報告によると、様々な面で活躍してくれたみたいだね」


「僕もこの街で生活している1人ですから協力するのは当然ですよ。 この街が失われるなんて事になったら悲しいですから」


「領主としてそれ以上に嬉しい言葉はないよ」


「それで…… 今日はなんの用事でしょうか? わざわざギルドまで来て僕を呼んだのはなにか理由があるんですよね?」


「察しが良くて助かるよ。 君に頼みたい事があって今日はここまで来たんだ」


「頼みたい事ですか?」



 わざわざギルドに来てまで頼みたい事ってなんだろう?



「頼みたい事というのは、君が捕まえた、恐らく帝国の者と思われる者達についてだ。 今、彼等は街の牢屋に監禁しているんだが、その事情聴取に協力してくれないかい?」


「事情聴取? 僕がですか?」



 なんで僕なんだろうか? もっと相応しい人がいると思うのだが。



「そう、具体的には君の闇魔法を使って、彼等を催眠にかけて欲しいんだ。 それが一番手っ取り早く情報を引き出せる方法でね。 あぁ、質問とかは僕がするからそこに関しては心配しないでいいよ」


「確かに使えますが…… 珍しいとは言え、僕以外にも闇魔法の使い手はいるんじゃないですか?」


「うん、僕の私兵にも使える子は一人いるよ。 でも、その子は昨日までのスタンピードで使った魔力が回復していないみたいで、あまり無茶はさせたくないんだ」



 それ以外にも詳しく話を聞いたところ、領を任せられるに当たって、領主には必ず一人ずつは闇魔法と光魔法が使える者が派遣されるらしい。



「どうだろう、もちろんこれは引き受けなくても大丈夫な事だから無理強いはしないよ」



 確かに、これを引き受けたらまた色々と面倒事に巻き込まれるかもしれない。


 だが、引き受けないとそれだけ情報を引き出すのが遅れてしまうだろう。 もしかしたらその遅れが、取り返しのつかない事態を引き起こす可能性も十分にあると思う。


 なら、答えは一つだろう。



「分かりました。 引き受けさせてもらいます」


「そっか! ありがとう!」


「今からすぐに行きますか?」


「そうだね。 早いに越した事はないだろうし、今からお願い出来るかい?」


「大丈夫です。 ……ノアルはどうする? 気が進まないようならここで待ってていいと思うけど」


「……許されるなら、付いて行きたい。 ……もしかしたら、お父さん達を襲った魔物の襲撃の事に関係しているかもしれないから」


「だ、そうなんですけど…… 大丈夫ですか、ニコラスさん?」


「そうだね、それじゃあ、ノアル君には護衛を頼んでもいいかい? 危険が無いわけではないから、僕の私兵の子達と一緒に警戒していて欲しいな」


「……分かった。 ……任せて」


「ありがとう。 それじゃあ、彼等を捕らえている牢屋まで行こうか。 付いてきてくれるかい」



 ニコラスさんの後を追い、僕達は冒険者ギルドを後にした。







 なんとも言えない重々しい空気が漂う空間。 ニコラスさんに案内されたのはそんな場所だった。


 ここは領主邸のすぐ近くの地下に作られた牢屋で、よほどの事をしたりしない限り、ここに入れられる事はないそうだ。


 薄暗い通路を進むと、目当ての男の1人が、牢の真ん中に置かれた椅子に縄や鎖、口には猿ぐつわのようなものを付けられて縛られていた。 この人は僕達に攻撃してきた2人の内の1人だな。


 下を向いていて、気絶しているのか、はたまたこちらに表情を読み取らせまいとしているのかは分からないが、見た感じ大きな外傷は無いみたいだ。


 その男が入っている牢から、更に牢を一つ飛ばした所にいたもう1人の男の様子も見たが、同じような様子であった。


 そして、一番奥の牢に辿り着くと、そこには例の研究者の男が先の2人と同じように縛り付けられていた。


 研究者の男は僕達が近付いてきたのが分かった途端「ムーッ! ムーッ!」とくぐもった声を上げ始め、更には僕の顔を見るや否や、怒りのこもった目線を向けてきた。


 まぁ、こんな風に牢に入れられ縛り付けられる事になったのは僕のせいだから、怒るのも当然だろう。



「よし、早速だけど頼めるかい?」


「分かりました」



 私兵の人に牢の鍵を開けてもらい、ノアルやニコライさん、あと私兵の人も2人ほどと一緒に牢の中に入った。


 相変わらず、研究者の男は僕に鋭い目線を向けてくるが気にしない。 そのまま研究者の男の頭に手をかざし、魔法を発動させる。



「『ヒュプノシス』」



 僕の言葉と同時に、魔法が発動した。


 紫色のモヤモヤしたものが研究者の男の頭部を包み込んだ。


 すると、それまで反抗的な態度を取っていた研究者の男の目が虚ろになり、反抗的だった態度も全く取らなくなった。



「確認を」



 ニコライさんの言葉に従った私兵の一人が、研究者の男に近付いて、目の前で手を動かしたり体を揺さぶったりしてみたが、全く反応は無かった。



「大丈夫そうだね。 それじゃあ猿ぐつわを外してみよう」



 ニコライさんの指示で、研究者の男の猿ぐつわが外された。 研究者の男は、その間もされるがままで、あれだけ騒いでいたのにも関わらず、猿ぐつわが外されても一言も言葉を発したりはしなかった。


 希少な魔法と言うだけあって、中々に強力な魔法だな、これ。 その分、魔力消費は大きいけど、今の僕には微々たるものだ。



「さて、それじゃあ、色々と聞きたい事を聞いていこうか」



 こんな物騒な状況でも、余裕のあるニコライさんの声が牢の中に響いた。


 これまでの一連の騒動の原因が少しでも明らかになればいいんだけど……

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