#5 街に行く前に⑴

 自分のステータスを確認し、驚いた部分も多かったが、どれも有用だったので、街に行く前に少し試しておくことにする。


「たしか、フォルティが収納魔法に色々入ってるって言ってたな。 どうやって中に入ってるもの出すんだろう?」


 発動の仕方が分からなかったので収納魔法の詳細を見てみる。


 収納魔法 Lv5:使用出来る魔法はアイテムボックスのみ。 レベルが上がることで、アイテムボックスの容量が増える。 自動的に整理整頓され、中に何が入っているかはステータス画面で確認可能。 取り出したいものをイメージすれば取り出すことが出来る。


 アイテムボックスかー、これまた異世界モノの物語でよく見るやつだな。 後で鑑定も試してみよう。

 

 取り敢えず中身の確認だけしようかな? えーっと、ステータス画面に…、お、アイテムボックスの詳細って欄があった。 見てみよう。


 アイテムボックス:財布(布袋)、鉄鉱石×3、魔法付与の槌


 色々入ってるな。 鉄鉱石はスキルの練習用って事だろうけど、この槌はなんだろう?


 ステータス画面で調べてみようと思ったが、ふと思いついたことがある。


 そう、鑑定魔法だ。 鑑定魔法を使えばいちいちステータス画面で調べなくてもいけるんじゃないか?


 そう思い、鑑定魔法の概要を確かめてみる。


 

 鑑定魔法 Lv5:あらゆるものの詳細を見ることが出来る。 ただし、人物や生物を鑑定する際に、自身の鑑定魔法のレベルより高いスキルや隠蔽魔法で隠されたものは見ることができない。

 

 

 うん、いけそうだな。 物は試しっていうし、とにかくやってみよう。 まずはアイテムボックスから槌を出すところからだな。 よし…!


「アイテムボックス」


 そう唱えた僕の目の前に黒い手を入れられるくらいの空間が現れる。 


「……手つっこめばいいのかな?」


 恐る恐る手を入れてみたが、何もない。


「あ、取り出したいものを思い浮かべなきゃいけないのか」


 僕はアイテムボックスに手を入れたまま、魔法付与の槌のことを頭に浮かべる。 見たことはないのでとにかく名前を念じてみることにする。


 すると、何かを握ったような感触がした。


「お? これかな?」


 アイテムボックスから手を抜いてみると、打撃面が大きく、片手で振るえるようなサイズの槌が出てきた。

 

 アイテムボックスは使えるようになったし、次は鑑定を試そう。


 魔法付与の槌をしっかり握り、視線も固定する。


「鑑定」



 魔法付与の槌:武器や防具、アイテムなどに魔法付与するために使う槌。 付与したい魔法をイメージし、魔力を流すことで使用可能になる。 その状態でこの槌を付与したいものに打ちつけることで魔法を付与することができる。


 

「上手くいった!」


 鑑定魔法は特に問題なく使うことが出来た。 魔法付与の槌の詳細も、おそらくステータス画面と同じような感じで、特に違いはないだろう。 

 

 一応試してみたが、鑑定結果とステータス画面の詳細には差がないみたいだ。 あと、鑑定は触れていなくても、鑑定したいものに意識を集中させれば、別に鑑定と唱えなくても使えることが分かった。 消費MPも10くらいだし、MPは少し使わないでおくと回復するみたいで、すぐに回復していた。 これからは実物があるものは鑑定で、スキルなどの目に見えないものはステータス画面で、という感じで使い分けをしよう。


 スキルを使ってみたけど、なんの問題もないみたいだし、次は鍛冶師のスキルを試してみよう。


 まず、アイテムボックスから鉄鉱石を取り出す。 3つあるのは失敗した用にフォルティが用意したのかな? 


 魔法が使えるといっても、やはり、武器の類は一応持っていたい。 まだ相手を攻撃する魔法を練習した訳じゃないしね。 作るのは、オーソドックスに剣でいいかな?


 地面に置いた鉄鉱石に触れ、鉱物操作のスキルを発動する。 イメージするのは、よく見る形状のロングソード。 イメージが固まった瞬間、鉄鉱石が光を放ち形を変えていく。 そこまで強い光じゃないから、シルエットでどんな風に変化してるのかは見ることが出来るな。 


 その光も30秒ほどで収まり、そこにあった鉄鉱石は、



 ロングソード+2:力+100 鉄製のロングソード。 作成者の力量により、魔法を2つ付与することができ、品質もかなり良いため、一般的なロングソードより力のパラメーターの上昇率が高い。 作成者はショーマ=ケンモチ。



 刀身は灰色というか、少し黒っぽい色で、しっかりと真っ直ぐな形をしている。 柄は黒色で持ちやすいような形だ。


「うん、イメージ通りの形で出来てるね。 イメージさえしっかりしてればなんでも作れるのかな?」


 刀身が少し黒っぽいのは、元の鉄鉱石の色が影響してるんだろうか? 真っ白の剣もいいかもしれないが、ちょっと黒ずんだこういう色の剣もわるくないかもしれない。


 それと気になっていたけど、+2ってなんだろう? 鍛治師のスキルで+がついたのか、武器を作ると大体こうなるのか判断出来ないけど、取り敢えず2つ魔法を付与出来るって事かな?


「えーっと、魔法付与のスキルの詳細は……」



 魔法付与 Lv5:魔法を武器や防具、アイテムに付与出来る。 このスキルを持つことで現在、物理攻撃力上昇 防御力上昇 魔法威力上昇 消費魔力減少 耐久値上昇 斬撃強化 etc……



「……多いな」


 取り敢えず色々付与出来るということはわかった。 今は取り敢えず、斬撃強化と耐久値上昇を付与することにしよう。 自己修復という付与もあって、それを付与しようと思ったが、これは今のレベルだと、刃こぼれ程度が治るものであって、ポッキリ折れてしまうと治らないみたいなので、なら、そもそも刃こぼれしないくらいに耐久値を上げようと思い、そっちにすることにした。 他の確認しきれてない付与は追々確認することにしよう。


「この槌に魔力を流せばいいのかな?」


 さっき、鑑定魔法やアイテムボックスを使った時に、なんとなく魔力みたいなのを感じたから、いけると思う。


 斬撃強化と耐久値上昇を思い浮かべて、槌を握った手に魔力を流す。 量が分からないし、まだそこまで器用に魔力を扱える訳ではないので、気持ちゆっくりと魔力を流していく。


 MPが100ほど減ったところで槌に変化が起きた。 打撃面の片面に白い色の魔法陣が、もう片面にはゲージのようなものが浮かび上がった。


「魔法陣側が下でいいのかな?」


 近くに、丁度良い高さの切り株があったので、そこにロングソード傾いたりしないように置く。


 意を決して魔法陣が描かれた槌を振り下ろす。


 キィン………!


 久しぶりに聞いた、槌が奏でる甲高い音。

 父さんが奏でる槌の音は今でも覚えている。 その音には遠く及ばないけど、それでも、聞いていて心地よい気分になる。


 ふと、槌を見てみると、先程見たゲージの値が少し上昇していた。 これがMAXになるまで叩けってことか?


 もう一度、槌を振るってみると、気持ちのいい音と共にゲージがまた少し上昇した。 うん、やっぱりそういうことみたいだ。


 キィン…! キィン…!


 テンポ良く槌を振り下ろす。 何回か繰り返すと心なしか、音が父さんのものに、ほんの少しだが近づいた気がする。


 10回程叩くと、ゲージがMAXになり、魔法陣の色が青とは少し違う、青より少し鮮やかな瑠璃色とでもいうような色に変化する。


 どうやら、もう一度叩けということみたいだ。 なので、最後に一番、気持ちを込めて槌を振り下ろす。


 キィィィン……!


 ここまでで一番大きな音が響き渡る。


 そして、剣全体に幾何学模様が刻まれ、数秒かけてその模様はスゥっと、剣に沈み込んでいった。


「これで完成か?」


 鑑定を使って確かめてみる。



 ロングソード+2(斬撃強化+耐久値上昇):力+100 鉄製のロングソード。 作成者の力量により、魔法を2つ付与され、品質もかなり良いため、一般的なロングソードより力のパラメーターの上昇率が高い。 作成者はショーマ=ケンモチ。


 

「よし、成功!」


 しっかり表示されてるし、付与されてると見ていいだろう。 


 武器がしっかり出来たし、これで自衛はなんとかなるかな?


 いや……、一応この剣も試した方がいいかな? 異世界だし、何が起こるか分からないから、慎重にいくことにしよう。


 剣の試し斬りもそうだし、僕のもう一つのスキル、ウェポンマスターも、一緒に試してみることにしよう。

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