第3話ランドン視点
俺は覚悟を決めた。
なんとしてもキャロライン御嬢様を護る。
そのために死んでも構わない。
いや、最初からコックス辺境伯家のために死ぬ覚悟はできていた。
本来ならワイアット様のために死ぬはずだったが、死を覚悟して王都に行かれるキャロライン御嬢様の守護騎士を命じられた。
元々ワイアット様の守護騎士に任じられていた。
産まれた時から、ワイアット様の守護騎士になる運命だった。
奥方様より少し先に妊娠した家臣の妻は、全員が乳母候補になる。
その中で、男子を産んだ者の中から、忠誠心と武勇に優れた者の妻が乳母に選ばれるのだが、それが俺の母親だった。
ワイアット様は俺の母の乳を飲んで育たれた。
だから俺とワイアット様は乳兄弟という事になる。
わずかだが俺の方が年上となるが、ワイアット様が唯一無二の主君だ。
そのワイアット様の剣となり盾となるべく、幼少よりあらゆる分野の鍛錬を、血のにじむ思いで重ねた。
常にワイアット様の横に侍り、徒手空拳であろうと刺客を排除し、最悪の状況では盾となるべく鍛錬してきたのだ。
だが、士族では限界があった。
貴族限定の場所にまでは入れないのだ。
だから父親がコックス辺境伯家の持つ従属爵位を拝領した。
一代限定ではあるが、男爵位を拝領したのだ。
これによって、俺も男爵公子として、貴族限定の場所に入る事ができる。
王宮や大貴族の開く貴族限定のパーティーであろうと、ワイアット様に付き従い守護騎士の役目を果たす事ができる。
これは妹のグレイスも同じだった。
天の配剤かそれとも偶然か、グレイスもキャロライン御嬢様と同年に産まれ、また母が乳母に選ばれ、乳姉妹となった。
これはとても都合がよかった。
キャロライン御嬢様の守護騎士こそ、貴族位が必要だからだ。
男のワイアット様以上に、女性のキャロライン御嬢様を守護するのは難しい。
爵位による制限に加え、女性という制限が加わり、側に侍る者が限られるのだ。
だからキャロライン御嬢様を守護する者は、女性に限定される。
キャロライン御嬢様と同年から前後数年の家臣の娘は、守護騎士・戦闘侍女に育てるべく、厳しい鍛錬を課せられた。
特に妹のグレイスは、乳姉妹だけあって俺と同等の鍛錬が課せられた。
グレイスは見事その鍛錬に耐え、キャロライン御嬢様の守護騎士となった。
今回のキャロライン御嬢様の王都行きも、本来はグレイスを柱に他の女守護騎士と戦闘侍女だけが付き従うはずだった。
それをワイアット様が父親のコックス辺境伯に嘆願して、俺が加わることになったのだ!
ワイアット様の、我が命同然に妹を護れと言う想いがヒシヒシと伝わり、身の引き締まる思いだ。
いや、主命以前に、畏れ多い事ながら、ワイアット様とキャロライン御嬢様は乳兄妹なのだ!
兄が弟妹を護るのに理由などいらん!
御主君に対する忠義の心と同じくらい、愛する肉親と言う想いがあるのだ!
身命を賭して必ず護る!
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