31 脱出記 エクソダス

 脱出記 エクソダス


 いなくなった王女さま。(あなたは今、どこにいるのですか?)


 コスモスがその手をかざすととても大きな音がして、コンピューター室のロックが自動で解除された。

 ずっと閉ざされていた開かずの扉は開いて、コスモスは振り返ってうしろにいるフユを見た。

「さあ、行きましょう。フユ」

 その顔に優しい笑みをたたえて、コスモスは言った。

「……すごいや、コスモス。コスモスは本当に『この壁をコントロールしているプログラム』を完全に掌握しているんだね」とフユは言った。

「この壁ではありません。『この世界のすべて』をです」と歩きながら、コスモスは言った。

 コスモスとフユがコンピューター室の外に出ると、背後で勝手にドアが閉まった。

 二人は転々と天井に明かりが灯るだけの薄暗い通路を、出口に向かって歩き始めた。

「この世界すべてって、それじゃあ、まるでココロが『この世界の神様』みたいじゃないか?」とフユは言った。

 フユは歩きながら、ハルが残してくれた情報士専用のタブレットをいろいろと操作して、その使いかたを覚えようとしていた。でも、さすが情報士専用のタブレットだ。通信士であるフユには、なかなかそのすべての機能を把握し、使いこなすことは難しかった。

「……」

 フユの言葉にコスモスは無言だった。

 フユもタブレットと格闘していたので、それ以上、その会話は続けなかった。

「フユ。あそこが出口です」とコスモスが言った。

 そこには確かに見覚えのあるドアがあった。

 外にはハルとフユを案内してくれた衛兵と、その仲間であるもう一人の衛兵の、計二人の衛兵がいるはずだった。

 フユは衛兵たちに(突如、現れた)コスモスのことをなんて説明すればいいのか、頭の中で考えていた。

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