26
まずソラは正式にハルに自分の自己紹介をした。
その自己紹介によると、ソラの年齢は十七歳で、ハルの三つ下の年齢だった。
ソラはなりたての機械技師で今回の任務では機械技師の師匠、いわゆる『マスター』と一緒に、作戦行動をとっていた、ということだった。
しかし、その歴戦のベテラン機械技師であるソラの師匠は、つい先ほど、急にソラの近くからなぜか、いつの間にか消えるようにしていなくなってしまったということだった。
ソラは師匠を探したが、どこを探しても見つからない。
なのでソラは機械技師の使命を優先して、とりあえず一人でも作戦を継続することにしたのだそうだ。
「でもね、ここからが問題でね。下っ端の私には作戦の目的地がこの、今日、向こう側の政府から一級情報士がなにかを情報を受け取りにくる予定になっている、この壁の中にあるコンピューター室だってことだけで、実際にこの場所でなにをするのかは全部師匠だけが知っていて、私はなにも知らないの。それでこうして途方にくれているってわけ」ソラは両手を上にあげて、お手上げのポーズをする。
ハルとソラはお互いに少しだけ距離をとって、狭い円形のコンピューター室の床の上に座り込んでいた。
ハルはじっとソラの話を聞いている。
「まあ、すぐには信じられないよね。人が消えちゃったって。まあ、消えたと言っても消えた瞬間を見たわけじゃなくて、いなくなっちゃったってことだけど、師匠が作戦を無視していなくなるわけないし、私にもなにがなにやら、さっぱりなんだ」
ソラは体育座りをしながら自分の降りてきた天井の通気口を見つめる。そこにはぽっかりと空いた、四角い黒い穴があった。
「信じるよ」ハルは言う。
「本当?」ソラは言う。
「ああ。本当だよ。こっちにもそれなりに君の話を信じる根拠がある」
ハルはフユのことを考えていた。
原因はおそらく、世界の終わり、ワールドエンドをハルが作動させたことにあるとハルは確信していた。その瞬間、理由はまだわからないが、フユが消えたように、ソラの師匠であるベテラン機械技師もおそらくこの世界から消えてしまったのだとハルは思った。(なぜか、それは間違いないことのように思えた)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます