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 しかし、この壁の内側にいる以上、少女が普通の少女ではないことは明らかだった。そっとハルに近寄ろうとした少女に、「動くな!」とハルは警告する。

「おっと」少女はそう言って、両手を上げて、数歩後ろに後退する。

「しばらく、そのまま、そこでじっとしていろ」ハルは言う。

「はいはい。わかりましたよっと」少女はそう言って、体の動きをぴたっと止めた。

 少女は全身に黒い服をきていた。

 上着は黒のフード付きのパーカーに、下はミニスカートで、その中には黒色のスパッツを履いている。足元は黒いブーツ。手には(やはり)黒のレザーの手袋をしている。

 全部が黒。

 その髪と同じく、目も黒色だった。

 そんな少女の姿の中で、あらわになっている顔と肌だけが以上に白く輝いて見えた。

 荷物は腰に巻いている小さなバックだけ。

 みたところ、……武器になるものはなにも持っていないようだ。

「大丈夫。安心して。私は別に君(あなた)のことを拘束したり、誘拐したりとか、そういうことをするためにここにきたわけじゃないんだからさ」とにっこりと笑って、白い歯を見せながら少女は言った。

「じゃあなんのためにここにきた?」ハルは言う。

「お前の目的はなんだ? 所属は? どこの部隊に所属しているものだ? それともお前はテロリストか? 僕からなんの情報を盗み出そうとしている? どうして、僕が今日、この場所に来ることをお前は知っているんだ!?」ハルは少女に質問する。

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