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「ええ。その通りです」とコスモスからその顔を少しだけ遠ざけるようにして、フユは言った。
それでもコスモスはフユが後ろに下がるだけ、その顔を前に、前にと動かしてきた。
フユの視界のすぐ目の前には、コスモスのこの世のものとは思えないほど、美しい顔があった。
フユはなんだか、すごく困ってしまった。
コスモスはフユの予想よりも遥かに美しい人だった。
いや、そもそもフユはコスモスがこんな風に『人の形』を取るとは、もちろん予測はしていなかった。でも、タブレットの中にいたときの、あの人の魂の形の、アバターのような姿をした、虹色に輝く炎のような形をしていたころのコスモスには、なんていうか、もっと幼い、十歳とか、それくらいの女の子と話しているような、そんな雰囲気をフユは勝手に思っていたのだ。
今の人の形をしたコスモスは人間の年齢でいうと、おそらく十七歳くらいだろう、とフユは思った。
なぜ人工知能のコスモスが、こうして人の形をしているのか、それはフユにはまったくわからないことだった。
でも、実際にコスモスは人の形をフユの目の前でこうして、作った。
それはまぎれもない事実であり、フユの目の前で起こった奇跡であり、また、この始まったばかりの新しい世界の真実でもあった。
それからしばらくの間、フユとコスモスはじっと、お互いの目を見つめ合ったまま、動きを止めた。
その間、フユはだんだんと冷静さを取り戻し、ある可能性に思い至った。
それは、もしかして、今、僕の目の前にいるコスモスは、本物の人間の体をしているのではなくて、どこからか投影された立体映像ではないのか? と言う可能性だった。
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