14

「フユ?」ハルは言う。

 それからハルは、ようやくその異変に気がついた。

 フユがいない。

 いつの間にか、フユが消えている。

「フユ!! どうした!? どこに行った!? いったい、なにがあった!?」ハルは叫ぶ。

 しかし、やはりフユから返事はない。

 どこからも、フユの気配を感じない。

 フユは消えてしまった。

 そう。フユは『ハルのいるこの世界から消えて、いなくなってしまった』のだ。でも、そんなことはありえない、とハルは思った。

 ハルとフユは生まれたときからずっと一緒だった。二人は双子の兄弟で、兄のハルが情報士として働いて、弟のフユが通信士として、兄の情報士としての仕事をサポートした。

 二人はおそらく世界でもっともベストな仕事のパートナーであり、この残酷な世界の中に残された、たった二人の本当の家族であり、二人の命がある限り、ずっとその生涯を一生、ともに過ごす運命にある二人だった。

 そのフユがハルの元からいなくなってしまった。

 もし、そんなことが起こるのだとしたら、その原因は一つしかなかった。

 それは、世界の終わり。

 ワールドエンド。

 そのプログラムを発動させたことによる、世界の変化しかなかった。

 ……世界の終わりは、新しい世界の始まりである。

 新世界。

 ハルにとって、フユのいない世界のことが、新世界だと言うことなのだろうか?

 ハルはそれを確かめるために、コスモスにその答えを問いただすことにした。

 フユがいなくなって、コスモスと会話はできなくなってしまったけれど、コスモスにはこちらの声は聞こえている。

 なら、問いかければ、なんらかの方法で、コスモスはハルにメッセージを送ってくれるかもしれない。

 なにせ、コスモスは今、自由の身になったのだ。

 ワールドエンドが作動して、箱が開いて、コスモスは狭い箱庭の世界から広い現実の世界に飛び出したはずだった。なら、コンタクトを試みれば、ハルがコスモスを見つけられなくても、コスモスが自分を見つけてくれるはずだとハルは思った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る