ドアには門と同じような四角い装置があり、衛兵はそこに先ほどとは違う八桁の数字を入力した。するとドアが自動で開いた。

「ここから先はなにも通路を遮るものはありません。なので、ここからは私の案内抜きで通路の先に進んでください。ずっとまっすぐに進んでいけば、目的地であるコンピューター室につくはずです」と衛兵は言った。

「ありがとう」とハルは言った。

 衛兵はハルとフユに軽く頭を下げてから、今『三人』で歩いてきた道を今度は一人で歩いて戻って行った。


「今の話本当かな?」衛兵の姿が闇の中に消えたころに、フユが言った。

「機械技師が壁を襲わないって話?」ハルが言う。

「そう。そんなことあるのかな? だって、機械技師たちの目的は壁をこの世界から消滅させることでしょ?」フユが言う。

「それは確かにその通りだけど、機械技師たちは物理的に壁を破壊するのではなくて、壁の両側にある政府に対してテロを起こすことで、壁の撤去を要求しているだろう? あくまで壁は作った本人たちの手で破壊させるつもりなんじゃないのかな?」ハルは言う。

「どうしてそんな回りくどいことをするんだろう?」フユは言う。

「わからない。……でも、ただ壁を破壊するだけじゃだめなんだと、機械技師たちは考えているのかもしれない」

「どういうこと?」フユが聞く。

「ただ壊すだけじゃ、壁はまたすぐに建設されてしまうってことだよ。壁を破壊するっていうことは、この世界にある物質的な壁の破壊だけではなくて、『人の心の中にある精神的な壁を破壊するっていう意味があるんだと思う』。それが機械技師たちの最終的な目的なんだよ。きっとね」そう言ってからハルは歩き出して、ドアの向こう側に移動する。

「なるほどね」フユはハルについていく。

 二人が移動すると、ドアは自動で閉まった。

 ドアの先には先ほどまで二人がいた通路と同じ暗い通路がずっと、永遠と続いていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る