第4話、地球の慟哭

「地球の慟哭」

地球は私達と同じ意志を持った生命体であり

しかも人間が神様と呼ぶ存在が地球なのである

祖母は信心深い明治生まれの人

私は祖母から色々教えて貰った

米一粒には7人の神様が住んでいる

だから一粒でも残したら罰が当たる

実家が農家である私にはそれが本能的に解る

昔、とても素行の悪い男がいて農家の苦労を踏みじる地上げ屋がいた

その男は農家の法律無知に付け込んで借金をさせ

取り立てで払えなくなった者の土地を奪っていく悪行を繰り返していた

奪った土地を更地にする為に田畑を焼き払い自然を壊していく愚行

土地を奪われた人達には自殺する者も多く、神様に願った

それが神様に届いたのか、神様の怒りが頂点に達したのか

それから、その男はある日、溺死体となって発見された

その男が経営する不動産会社が手掛ける仕事はその後

ことごとく不可思議な事故が続き、会社は信用を失い

その不動産会社は男の死から僅か6ヶ月には倒産した

神様の怒りはそれでも治まらず

この土地開拓に今まで加担した土木労働者も次々の不慮の事故に遭い

この世から去っていった

その頃から不思議な噂が立っていた

川沿いにある大きな石

そこから夜になると女性のすすり泣く声が聞こえてくると

それは土地を奪われ一家心中する時に道連れにされた若い娘じゃないかという話し

しかし祖母はその石のすすり泣きは娘の悲しみじゃなく

この土地の神様、米粒に住んでいる7人の神様が土地を壊された痛みにより

慟哭されているのだという話しだった


綾子は翌日学校の帰りにその川を見に行った

(小豆あらいとすすり泣く石)

まだ日が高く明るいので怖くはなかった

太陽の光が反射してキラキラと映る水

秋の空気が優しい

それらしき大きな岩石を見つけた

子供の頃は気にもならなかった大きな石塊

辺り一面は黄色花が生い茂り

強い風で穂先が一斉に揺れていた

近くの海から潮風も心地よく鼻腔を芳香した

膝を抱えて体育座りしながら虫の声を聞いてじっと見つめて時間を過ごした

特になにもない、綾子も時間の無駄を理解し、

自分の妄想がバカみたいに思えてきたので帰ろうと思いたった

その時に、綾子の頭の中にいきなり映像が浮かんできた

(地球の破壊と再生の歴史)

何度も氷河期が訪れその度毎に生命体は絶滅されて

また再生していった地球の苦難の道

生物が出現するまでに繰り返されてきた地球の歴史

今度は人類が地球を破壊している映像

地球が泣いている様子を理解した

綾子も貰い泣きをしていつのまにか一緒に泣いていた。

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