よりどころ

第1話

人にはふるさとがある。

文字通りのふるさとではない。

つまり、心のよりどころ。

「ここに来れば、安らぐ」

そういう場所が、誰にでもある。

いわゆる、心のよりどころ。

もちろん、俺にも、ある。

それがあるから、がんばれる。

今日も会えるか・・・

≪また来たんだね≫

「うん」

温かく迎えてくれる、女の子。

歳の頃なら、俺と同じか少し上。

とっちにしても、精神年齢は俺より上だろう。

甘えたくなると、ここに来る。

≪でも、しばらくは間があいたね≫

「何とか、自力で乗り越えようとしたんだが・・・」

≪うん≫

「さすがに、限界だった・・・よ・・・」

女の子は、優しくハグしてくれた。

≪でも、がんばったよ・・・≫

「でも、いけないな・・・俺は・・・」

≪どうして？≫

「こうして、あなたに甘えてばかりで・・・」

女の子は、ほくそ笑む。

≪それでいいんだよ。人は甘えられる場所があるから、がんばれる≫

「でも・・・」

≪君はもう、前を向いていいんだよ。私はいつも見守っている≫

返す言葉が浮かばなかった。

≪君が振り返った時、そこには私がいるから・・・≫

「えっ？」

≪その時に、ふたりで笑いあえたら、いいのにね・・・信じているからね≫

こうして、この場所を去る。

もっと自分の力でがんばろう。

あの子の支えがある限り、俺には立ち上がれる力がある。

ありがとう。