移色共救

雲と土がひっくり返ったなら

蒼の中で生きていくとしたら

私達は幸福に生きられるはず

私達は孤独を忘れられるはず


だって世界は無為の奔流

救済は架空の月花が隠している

天国と地獄は知らんぷり

死んでからしか笑ってくれない


二分の一の心臓で歩きたい

鼓動を誰かと分かち合いたい

ここは余りに静かすぎて

呼吸音すら煩わしい


四分の一の四肢を託したい

体温を誰かの物で代用したい

これは余りに冷たすぎて

馬鹿馬鹿しい生命だ


だって私達は無二の潮流

祝祭は砂上の富が独占している

善意と悪意は知らんぷり

外界への接続は必須事項だから


脚と翼がひっくり返ったなら

蒼の中で生きていくとしたら

私達は再び生きていくだろう

私達は再び孤独になるだろう


誰もこの手を掴めない

誰もこの声を探せない

空を泳いで泳ぎ続けて

私達はそれでもきっと

独りになりたがらない


二分の一の心臓で歩きたい

鼓動を誰かと分かち合いたい

そこは余りに騒がしいから

いつの間にか生きている


四分の一の四肢を託したい

体温を誰かの物で代用したい

それは余りに暖かくて

馬鹿馬鹿しくて

涙が出ちゃう


五十分の二の言葉を贈りたい

空はまだ少し遠いから

鼓動はまだ鳴り止まないから

乏しくとも熱を帯びているから

貴方が余りに恋しいから

必要なのは「すき」の二音だけ


私達は幸福に生きられるはず。

私達は孤独を忘れられるはず。

私達はまだ生きていたいはず。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る